独身ゲイの深刻問題「親の墓じまい&納骨堂への改葬&自分の終活」体験記

独身ゲイにとって自分の老後や終活のことはとても気になる問題。しかし、自分の老後の前に現実として立ちはだかるのは「親の老後と終活」だ。今回は、筆者が先日体験した親の墓じまい体験をベースに、「親と自分の終活」に焦点をあてる。

独身ゲイに立ちはだかる「親の墓」問題

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若いうちは楽しいゲイライフを満喫できていたとしても、一定の年齢になると「自分の老後」への漠然とした不安が湧いてくるものだ。そして、自分の老後の前に現実問題として直面するのが「親の老後と終活」。

入院や介護にまつわることや、自宅で生活できなくなった場合の施設入所のことなど、親の老後と介護に関しても考えるべきことは山積だが、今回は介護の先にくる終活、お墓のことについて考えていく。

兄弟が実家を継いでくれる人は心配する必要はないが、一人っ子や姉妹しかおらず実家を継ぐ人がいない場合は、「墓をどうするのか」という問題に直面する。

独身ゲイ男性の場合、両親が亡くなった後も自分が「墓」を守っていくことは可能だ。しかし、自分が歳をとり亡くなった場合、その「墓」を守る人がいなくなり「無縁墓」となってしまう。

親の「墓」をどうするのか、具体的に考えたことがあるだろうか?

今回は、今年筆者が体験した「墓じまい」と「墓の引っ越し」のことを記す。状況は人それぞれなので、これが正解だと言えるものはないだろうが、親の「墓問題」を考えるきっかけになってもらえればと思う。

施設にいる母の「看取りケア」がはじまる

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ウチは男3人兄弟で、兄弟全員が関東で暮らしており、両親が九州で生活していた。25年前に父が突然亡くなったことで、独身でかつ結婚の予定もない筆者が東京で母と暮らすようになった。そして父の墓を八王子に作った。

それから25年を経て、90歳となった母は2年前から施設に入所している。今年の7月後半に、施設の看護師と面談をすることになった。加齢もあり、徐々に身体機能も弱まっているなか、「看取りケア」という段階に移行するのか、ということを話し合うためだ。

「看取りケア」というのは、体調が悪くなっていった時点で入院するなど積極的な医療行為はしないで自然に任せていく、という段階のことを指す。

施設に入所後も2回入院しており、老衰していく母の状態を理解していたので、兄弟3人の意思は「看取りケア」に移行することで一致した。

「葬儀」と「墓」の準備をすすめる

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母がいつ急変するのかは分からない状態のまま、もしもの時に備えて準備を進めることになった。準備というのは「母が亡くなった時の葬儀に関すること」と「墓をどうするのか」ということだ。

葬儀に関しては、葬儀のプロの友人がいるので彼に相談して葬儀と火葬、それにかかる費用を見積もってもらい、いざという時に連絡するだけという準備を整えた。

次に考えるのは、墓の問題だ。

三男の自分は独身で、長男と次男の子供は女の子ばかり。兄弟が亡くなった後に姪たちに墓を継がせるわけにもいかず、「お袋が亡くなった時に墓をどうすればいいのか」ということは、少し前から兄弟の間で話し合っていた。

八王子の墓をこのまま維持するのは現実的ではないので「墓じまい」をするという結論には達していた。では、母が亡くなった後に、父の遺骨と母の遺骨をどうするのか、「看取りケア」が始まったことで具体的に話し合うことになった。

合奏墓や樹木葬、海中散骨などさまざまな選択肢があるなかで、「納骨堂」におさめるということで意見が一致した。

「墓じまい」のために必要なこと

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7月末に母の「看取りケア」が始まり、兄弟で方針を話し合ったことで、8月はその準備に時間を費やすことに。

「墓じまい」をするための詳細な流れは、お仏壇のはせがわのサイトで分かりやすく説明してくれているので、こちらを参照してほしい。

「お墓じまいとは?費用や流れと3つのトラブル対策」(お仏壇のはせがわ)

「墓じまい」をするためには、父の遺骨を次におさめる納骨堂を決めて、改葬許可証を市役所で発行してもらう必要がある。そこで、「墓じまい」のための準備と「納骨堂」探しを同時に進めることになった。

八王子の墓は駅から遠く気軽に行ける場所ではなかったので、「納骨堂」は山手線内の駅から近く行きやすい場所を選ぶことにした。長男がセレクトした4ヶ所の「納骨堂」を、8月のある日に見学で回った。

知って驚いた「納骨堂」のシステム

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「納骨堂」のことを全く知らない白紙状態だったので、そのシステムを知って驚いた。

見学に行った4ヶ所とも同じ構造だったのだが、骨壺を厨子と呼ばれる長方形の箱に入れ、タワーパーキングと同じ構造のなかに収める。

納骨堂にはお参りをするブースがいくつもあり、それぞれのブースには墓石が設置されている。ブースにあるセンサーにカードをかざすことで、自分の家の厨子が内部で運ばれてきて墓石にセットされた状態になり墓参ができるというものだ。

生花を持参することもできるが、多くのブースには生花と香炉とお香がすでに用意されており、手ぶらでの墓参が可能。またビルになっているので冷暖房が完備で、暑いお盆の時期に墓の掃除をする苦労からも開放されさそうだ。

「親の墓問題」は「自分の墓問題」だった

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見学にまわった4ヶ所はいずれも寺院が運営しており、宗派に関係なく納められる。また納骨堂には法要できるスペースがあり、どの宗派でも利用することができる。

いずれの納骨堂も、先々、継ぐ人がいなくなった場合は合葬墓に移して永代供養してもらえるようになっていた。また、納骨堂によって違いはあるが、厨子の中には、4~6人分のお骨を納めることが可能だ。

その説明を聞きながら、「筆者が死んだらこの納骨堂に両親とともに納めてもらうようにすればいいのでは」と考えるようになった。

見学した4ヶ所のうち、我が家の宗派と同じ寺院の納骨堂が一番いいという結論になり、契約することにした。

納骨堂を利用する場合は霊苑と同じように毎年の管理費を支払う必要がある。将来、承継者が亡くなって費用の支払いが止まったら、一定の期間を経たのちに合葬墓に移して永代供養してもらえるのだ。

そこで、契約の段階で自分が入るときのことを見越して、毎年の管理費を30年分前払いすることにした。葬儀と墓じまいから納骨堂の契約に関する費用は、母の貯金を使わせてもらったので、両親の墓問題とともに、自分の終活に関する問題をひとつ解決できたことになる。

改葬するためのお骨の準備

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納骨堂と契約したことで父の遺骨の改葬許可書を申請することが可能になり、墓じまいを進めることになった。

20年以上納めていたお骨は水分を含んでいるので、納骨堂に改葬するときは、お骨を洗って乾燥させる必要があるとのこと。契約した納骨堂では、お骨の洗浄と乾燥をした上で納骨まで預かってもらえるので、墓じまいをしたその場で父の骨壷を宅急便で納骨堂に送った。

あとは、厨子につける「銘板の文字をどうするのか決める」とか「ブースのモニターに表示する遺影のデータを送る」などの細かい作業はあったものの、納骨の準備は整った。

8月から「看取りケア」に移行した母だが、体調は安定して夏場は無事にのりきった。秋になってからも食欲はあるようで、毎週看護師から状態を聞く面談では「特に変化なく安定しています」という状況が続いていた。

ところが10月末に急変し、数日間で亡くなった。事前に相談していたおかげで、葬儀は滞りなく進み、少し早めの四十九日法要と、両親の納骨式を先日すませてきた。

親が元気でいるうちに墓問題を話し合う

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親の介護や終活に関することに区切りがつき、今は、肩の荷がおりたという実感がある。そしてこれからは自分の老後と終活について、きちんと向き合っていく必要性もまた感じている。

自分の老後と終活について、考えなければならない問題は山積しているが、とりあえず自分の墓問題を解決できたことでかなり気が楽になっている面はある。

これで、我が家の「墓じまい」体験記は終了。

まだまだ先のことだから、と考えていると親になにかあった時に慌ててしまう可能性は大きい。親が元気でいるうちに、将来の方向性は相談しておいた方がいいと思う。親の希望と、現実にできることのすり合わせをしておくだけで、いざというときの対応が容易になるはずだ。

また、独身ゲイの場合は、自分の墓問題はなるべく若く元気なうちに決めておくことを勧める。歳を重ねて自分で判断することや契約行為が困難なってからでは対応の仕様がない。自分の代わりに対応してくれる子供はいないのだから。

(冨田格)

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