男性ストリップ・事件・起業『チッペンデールズへようこそ!』が面白い

ディズニープラスのドラマシリーズ『チッペンデールズへようこそ!』は、男性ストリップの代名詞であるクラブ「チッペンデールズ」の始まりからを描いた物語。男性ストリッパーによるセクシーなショー場面たっぷり、リアルな事件と企業ドラマとしての魅力もたっぷりなこの作品の面白さを解説する。

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3つの面白さがあるドラマ

11月29日(火)に第3話の配信が始まった『チッペンデールズへようこそ!』は、米国のHuluが制作するオリジナルドラマシリーズで、世界ではディズニープラスで配信されている。全8話のミニシリーズだが、第3話まで見た現時点までのドラマの魅力と面白さを解説しよう。

『チッペンデールズへようこそ!』には、下記の3つの面白さがある。

1)起業・企業ドラマとしての面白さ
2)現実の事件を描く面白さ
3)セクシーな男たちの姿を堪能できる面白さ

1)起業・企業ドラマとしての面白さ

クラブ「チッペンデールズ」の創始者は、インドからの移民であるソメン・バナルジー。同じインド人のオーナーが経営するガソリンスタンドの店長として真面目に働き溜めたお金で独立したソメンは、バックギャモン・クラブ「デスティニー2」をオープンする。

バックギャモン愛好者は300万人いると言われているが、バックギャモンを専門に楽しむ場所がない。そこで高級な雰囲気のなか、バックギャモンと酒を楽しめるクラブを作る、という発想は悪くなさそうだが、これが全然ダメで閑古鳥が泣く状態。

そこから、人との出会いがあり、ひらめきがあり、女性客に男性ストリップを見せる「チッペンデールズ」へと繋がっていく様は、まさに起業の面白さを見せてくれる。そして、「チッペンデールズ」が上手く回り始めると、経営部門と(ショーの)クリエイティブ部門の対立や、社内の人間関係などの問題が生じてきて企業ドラマとしての面が展開していく。

男性ストリップという扇情的な題材でありながらも、芯の部分には普遍的なテーマがあることで物語に深みが出ていると言える。

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2)現実の事件を描く面白さ

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ソメン(スティーブ)・バナルジー

『チッペンデールズへようこそ!』の主軸となる物語は、オーナーとクリエイティブ部門のトップの対立が疑心暗鬼を生じさせ、悲劇的な結末を呼ぶという実際に起きた事件をベースにしている。第3話では、この2人の対立が決定的になり、今後の展開が非常に気になるところだ。

しかし、『チッペンデールズへようこそ!』に関わる実際に起きた事件はこれだけではない。第1話では「チッペンデールズ」にまつわる、もう一つの”事件”であり悲劇が描かれる。

ソメンがオープンさせた「デスティニー2」に閑古鳥が鳴いている時に、店を訪ねてきた一組のカップルがいる。ポール・スナイダーと名乗る男は、自分がハリウッドの大物やスターと知り合いで、有名人を店に呼んで話題を作ることができると言う。

(右)ポール・スナイダー

そしてポールと連れ立って店を訪れた女性が、ドロシー・ストラットンという駆け出しの女優。

当時、一世を風靡していた男性誌「プレイボーイ」のカバーガールであるプレイメイトになったことで、ドロシーは注目を集め始めていた。「プレイボーイ」のオーナーである伝説のカリスマ”ヒュー・ヘフナー”はソメンの憧れの存在であり、ソメンはこの二人を店の経営に取り込んでいく。

ポール・スナイダーという男は、有名人と知り合いだと豪語するが、その実、自分を大物に見せるための虚栄と虚言にすぎず、芸能界周辺によくいる何者であるのか不明な人物だった。

ソメンはポールと共に「デスティニー2」に客を呼ぶために、営業方針を変更していくなど試行錯誤の末、ゲイバーでのGoGoのショーを見たことから女性客をターゲットにした男性ストリップの可能性に目をつけ、店名を「チッペンデールズ」と変更してリニューアル。これが成功へのきっかけとなった。

自分が何者でもないことを自覚しているポールは、ドロシーに注目が集まることで彼女に捨てられるのではないかという不安に苛まれており、それが悲劇に繋がっていくのだ。

(左)ポール・スナイダー (右)ドロシー・ストラットン

ポールとドロシーに関する話は、ハリウッド史に遺る有数の事件として記憶されている。

二人は結婚し、ポールは私設マネージャーという立場になる。しかしドロシーは映画監督のピーター・ボクダノヴィッチの目に留まり、新作映画に起用される。この作品が、オードリー・ヘプバーン最後の主演映画となった『ニューヨークの恋人たち』だ。

監督にも主演のオードリーにも気に入られたドロシーは、新人ながらかなり重要な役に抜擢される。さらに監督とプライベートでも親密な関係となり、ポールとの離婚を決意。

映画撮影後に、ポールと離婚の話し合いに向かったドロシーは、ポールによって散弾銃で撃たれ死亡。ポールも後追い自殺をする。これが大きなスキャンダルとして報じられた結果、『ニューヨークの恋人たち』の興行収入は散々な結果となり、日本では公開されずに終わってしまった。

ポールとドロシーの間に起きた悲劇は、のちに『スター80』という映画になるほどインパクトの大きい事件だった。ドラマの中ではかなり省略して描かれているが、実際に起きた悲劇を理解したうえで見ると、さらに面白さが増すことは確実だ。

なお、作中でドロシーが、蝶ネクタイ・襟・袖口と下着だけを着用する「チッペンデールズ」を象徴する衣装を提案する場面が登場するが、これは事実に即したものだとのこと。

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3)セクシーな男たちの姿を堪能できる面白さ

『チッペンデールズへようこそ!』の最大のお目当てである男性ストリップに関しては、想像以上の満足が期待できるはずだ。

ダンサーのオーディション、ダンス・トレーニング、実際のショーの場面、ショーの後の楽屋で過激な場面、そして「チッペンデールズ」名物のカレンダー撮影場面など、逞しい男たちの裸はたっぷりと満喫できる。

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さらに「チッペンデールズ」のクリエイティブ部門のトップである振付師のニック・デ・ノイアはバイセクシュアルで、男性相手の性的な場面もしっかり描かれている。

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(中央)ニック・デ・ノイア

セクシーな男たちに注目するだけでも十分に楽しむことができそうな『チッペンデールズへようこそ!』は、ディズニープラスで毎週火曜日に新エピソードが公開中。今から追いかけてもいいし、年末年始に一気見するのも楽しそうだ。

ディズニープラス
『チッペンデールズへようこそ!』

(冨田格)

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