【パリ五輪】ゲイ・アスリート”トム・デイリー”銀メダルと涙の引退発表
誰からも好かれる好青年で、秀でた才能を持つ飛び込み選手。若くしてカミングアウトした英国五輪アスリートのトム・デイリーは、パリで5度目のオリンピックに挑戦し見事な成績を納めた後に競技人生からの引退を発表した。
★ジオ倶楽部はひとつ前の記事も見逃せない
映画『ファイアー・アイランド』が描く残酷なゲイの”友情”の現実
息子の言葉でパリ五輪出場を目指した
英国の飛込選手トム・デイリー(トーマス・デイリー)は、2021年の東京五輪で2つのメダルを獲得した。一つは、男子10m高飛込シンクロの金メダル。そしてもう一つは、10m高飛込の銅メダル。
1994年生まれのデイリーは、この時27歳になっていた。東京五輪以降、飛込競技から距離をおくようになったデイリーを見て、周囲の誰もが競技者として有終の美を飾り引退するのだろうと思っていた。
しかし、デイリーはパリ五輪を目指すためにプールに戻ってきた。
実のところ引退を考えていたデイリーなのだが、彼の気持ちを五輪に向かわせたのは彼の息子の一言だった。
コロラドスプリングスにある米国オリンピック・パラリンピック博物館を訪れたデイリーと家族たち。歴代のオリンピアンの写真などを見学していると、6歳になる長男のロビーがデイリーにこい言ったという。
「パパがオリンピックで飛び込む姿を見たい」
その言葉に突き動かされて、ふたたび五輪に挑んだデイリー。パリでは、男子10m高飛込シンクロで銀メダルという素晴らしい成績を納めた。
デイリーは、神に選ばれしアスリートであると共に、最高のパパであることを証明した。
『やりたいことリスト』を叶えた喜び
パリから英国に戻ったデイリーはBBCのインタビューに答えた。感極まって涙を必死にこらえながら、「話すのは難しい。話すのは難しい。でも、いつかはそれを捨てなければならない。とても誇りに思う」と語った。
「すべてがうまくいって本当にうれしい」と語るデイリーは、こう続けた。
「自分のスポーツに別れを告げるのは、いつも本当につらい。いろいろなことを処理しなければならない。でも、今がその時だと思う。パリ五輪はボーナスのような感じだよ。家族や子供たちの前で試合をすることができた。そして旗手にもなれたんだ。『やりたいことリスト』が、ことごとくチェックされたよ」
今は故郷に戻り、家族と一緒にこの喜びを共有したいという。
「今は、家族と一緒に過ごしたい。2、3日彼らと一緒にいて、少しだけ普通の気分になれるのが本当に楽しみです」
2028年、彼の故郷であるロサンゼルスで開催される五輪に出場したいと以前語っていたデイリーだが、今回のパリ五輪で競技人生を引退することを決意した。
「本当に圧倒されるよ。…自分の競技者としてキャリアをとても誇りに感じている」
若くしてカミングアウトし、以降も競技者として素晴らしい成績を納めてきたデイリー。彼よりも若いゲイのアスリートにとって、素晴らしいロールモデルとなった。
競技者人生を終えたデイリーがどのような人生を切り開いていくのか、今後も注目していきたい。
※参考記事:QUEERTY
(冨田格)
★あわせて読みたい!
【パリ五輪出場決定】五輪金メダリスト”トム・デーリー”の同性婚ライフ