ディズニープラス『AHS:NYC』第一話最速レビュー”ゲイ文化の歴史に触れる”

2月22日(水)よりディズニープラスで配信がスタートした『アメリカン・ホラー・ストーリー:NYC』は、エイズ禍直前1980年代初頭のニューヨークのゲイ・シーンを舞台にしたミステリー・ドラマ。アンダーグラウンドなゲイ・カルチャーを覗き見ることができる、すべてのゲイ必見のドラマ・シリーズだ。

主要キャストはカミングアウトした俳優たち

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ラッセル・トーヴィー 画像引用元:Instagram

『glee/グリー』のクリエイターで、オープンリーゲイのライアン・マーフィーが手がけるホラー・アンソロジー・シリーズ「アメリカン・ホラー・ストーリー」。2011年にスタートしたこのシリーズは、シーズンごとに全く異なった設定の物語が進行する。

格段ゲイをテーマにしていない場合でも、ライアン・マーフィーならではのゲイネスが炸裂しており、ゲイの視聴者も多い人気シリーズだ。

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そして2月22日(水)よりディズニープラスで配信がスタートしたシーズン11『アメリカン・ホラー・ストーリー:NYC』は、物語のテーマが「ゲイ」であり、カミングアウトしている俳優が大挙登場する、ゲイ必見のドラマとなっている。

ゲイがアンダーグラウンドだった時代

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現在の「ストーンウォール・イン」

1969年に起きた「ストーンウォールの反乱」、そして翌1970年からプライド・パレードが始まったニューヨーク。『アメリカン・ホラー・ストーリー:NYC』は、70年代のゲイリブ運動が一定の成果を見せ始めた1980年代前半のニューヨークが舞台。

一定の成果を見せ始めた、とはいえ、今のようなオープンな時代からは考えられらないくらいゲイシーンはアンダーグラウンドなものだった。そして、そのアンダーグランドな世界で起きるゲイをターゲットにした連続殺人事件と、ゲイの楽園ファイアー・アイランドに生息する鹿に感染が広がる謎のウィルスが物語の主軸となるようだ。

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イメージ写真

第一話「サムシングズ・カミング」では、主要な登場人物たちと、当時のアンダーグラウンドなゲイ・カルチャーをテンポよく見せていく。

第一話でばら撒かれたヒントの数々

ラッセル・トーヴィー演じる刑事パトリックは、ゲイであることを隠して女性と結婚するが、結婚生活が破綻し離婚協定中。パトリックが同棲しているジノ(ジョー・マンテロ)は、実在した隔週刊のゲイ新聞『ニューヨーク・ネイティヴ』の記者をしている。

この2人の関係から、公務員のゲイはクローゼットでいなければならなかったことや、体面のために無理に結婚をして女性を傷つけてしまったこと、そしてオープンなゲイであるパートナーとの感情的対立などが見えてくる。

当時、ゲイ人権運動が盛り上がりを見せたとはいえ、今のようにオープンではないゆえにゲイ文化はアンダーグラウンドなものだった。ドラマは、特にアンダーグラウンドな性的文化もしっかり描いていく。

当時は流行の最先端であったレザーマンたちのハードゲイ文化、廃工場や公園などクチコミで広がるハッテン場とそこに集う人々、ゲイの仲間内でのアピールとして使われたバンダナ、バスハウスなどの有料屋内ハッテン場、サロンのように優雅な雰囲気のゲイバーなど、インターネットもスマホもない時代の”ゲイ文化の最先端”をしっかり描き出すのは非常に興味深い。

さらにフェティッシュな男性ヌードと花という両極にも思える素材にこだわる、メイプルソープもどきの写真家の存在も、当時のゲイ文化の最先端と言えるだろう。

そして、ゲイの楽園と言われるニューヨーク郊外にある島”ファイアー・アイランド”に生息する鹿の間で感染拡大する、致死性の高い新種のウィルスは、HIV/エイズを連想せざるを得ない。

アンダーグラウンドなゲイ文化の中で起きるゲイを狙った連続殺人と、謎の新種のウィルスがどう絡みあっていくのか、気になるヒントを提示したところで第一話は終わる。

『アメリカン・ホラー・ストーリー:NYC』はディズニープラスで配信中。2月22日(水)に第一話と第二話の配信がスタート。以降、毎週水曜日の午後5時に新エピソードが追加となる予定。

当時を知る世代には懐かしく、知らない世代には新鮮な、80年代初頭のニューヨークのゲイ文化を楽しめる必見のドラマ・シリーズだ。

ディズニープラス『アメリカン・ホラー・ストーリー:NYC

(冨田格)

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