ゲイの複雑な下半身事情に迫るNetflix学園ドラマ『エリート』がスゴイ理由
裕福な家庭の子弟が通うエリート高校を舞台に巻き起こる、あまりにもアダルトすぎる性、恋愛、ドラッグ、そして殺人。若くて魅力的な俳優たちが演じるドロドロの物語に、世界中が熱狂するNetflixのスペインの学園ドラマ『エリート』はシーズン６を迎え、さらに新シーズンの制作も決定している。『エリート』の注目ポイントは、シーズンを重ねるごとに”ゲイ”に関するストーリーの比重が上がり続けていることだ。
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目次
■シーズンを追うごとに深まるゲイ濃度
■複雑なボンボンとムスリムの売人
■リッチなバイセクシュアル青年の葛藤
■ゲイの王様”ベルアミ”美青年の崩壊
■ゲイを狂わす無自覚ノンケの残酷ぶり
■イッキ見必至！見始めるなら週末推奨
シーズンを追うごとに深まるゲイ濃度
2018年5月よりNetflixで配信がスタートした『エリート（ELITE）』。1シーズン8話で構成される学園ドラマで、基本、1シーズンで新学年開始から学年末までを描いていく。
舞台となるのは裕福な家庭の子供たちが通う”ラス・エンシナス高校”。ここに、屋根崩落事故によって閉鎖された近くの高校に通っていた庶民の高校生3人が奨学生として転校してくるとことから物語が始まる。
”学園ドラマ”と言っても、日本の学園ドラマとはまったく異なり、描かれるのはセックス、ドラッグ、殺人を含む犯罪など、大人の人間ドラマも顔負けのドロドロぶり。性的な場面もかなり濃密で激しく、そこが人気が集まったポイントの一つ。
学園ドラマに必須なのは卒業であり、シーズンを追うごとにキャストが入れ替わっていく。もっとも『エリート』の場合は卒業ではない理由（殺人など）で主要キャストが退場していく場合も少なくない。
シーズンを追うごとにゲイのキャラクターが物語の中心になっていくので、『エリート』は世界中のゲイからも支持される作品となっている。
今回は、登場するゲイ・キャラクターとエピソードに焦点を絞って『エリート』の魅力を紹介していく。ストーリーに触れる都合上「ネタバレ注意」な内容となるので、まだ未視聴な人はご注意を。
複雑なボンボンとムスリムの売人
シーズン1で登場するのは2人のゲイと1人のバイセクシュアル。
ゲイの1人は”ラス・エンシナス高校”の校長の息子アンデル（アーロン・パイパー）。ゲイであることを隠しているアンデルは、精神的に不安定。
もう1人のゲイは、奨学生のナディアの弟のオマール（オマール・アユソー）。オマールの家はムスリムであり、ゲイであることは許されないためオマールは家族にバレないようひた隠しにしている。
ナディアと同じ高校に通っていたオマールは奨学生には選ばれず、地元の少し遠い高校に通っている。ゲイであることが許されない家庭から逃げ出すための資金稼ぎに、ドラッグの売人をしている。
ドラッグ売買のために初めて会った2人だが、ほどなくしてゲイの出会い系アプリで再会することになる。
そこからオマールとアンデルの関係が始まる。アンデルはかなり複雑な性格の持ち主で、愛情を素直に受け入れられない面や、なにかをきっかけに自分の殻に閉じこもってしまう傾向がある。
逆に、ドラッグの売人で常に不機嫌そうに見えるオマールだが、その内面は素直で真面目な部分も多く、自分勝手にふるまうアンデルを諦め半分で見守っていくような関係が成立していく。
バイセクシュアル青年の葛藤
バイセクシュアルのキャラクターは、ファッション雑誌編集者のレズビアンカップルの子供ポーロ（アルヴァロ・リコ）。女公爵の娘カーラの許嫁であり、将来の予定がすべて決められている勝ち組なのだが、高校生にしてカーラとの関係はすでに倦怠期の夫婦のような雰囲気が漂っている。
そんな雰囲気を打破するために、奨学生の1人で名声を夢見るナルシストのマッチョ青年クリスチャン（ミゲル・エラン）にカーラを接近させ、3人での性的関係を結ぶようになる。しかし、ポーロの本心は、カーラ抜きでクリスチャンと関係したいことだった。
バイセクシュアルのポーロの中では、男に対する性的興味が大きくなっていたのだ。のちにポーロは幼なじみのアンデルとも性的関係を結ぶことになる。
ゲイの王様”ベルアミ”美青年の崩壊
シーズン4から登場する新たなキャラクターによって、ストーリー全体に占める”ゲイ”の割合が格段に大きくなる。それが、新校長の息子であるパトリック（マヌ・リオス）だ。
欧州の美青年AVメーカー”ベルアミ”で10本くらい主演動画が作られていそうな、典型的な白人美青年というルックスのパトリックは、登場するやいなや、「ゲイの王様」的なふるまいを見せる。
主にオマールの我慢と努力でなんとか上手くいっていたアンデルとオマールの間にパトリックが割り込み2人を破局させ、アンデルを自分のものにする。ところが、そこまではパトリックの思惑通りだったが、アンデルの複雑な性格は手に負えるものではなかった。
アンデルに翻弄され、「ゲイの王様」的な尊厳が崩壊していくところを見るのは、視聴者的にはなんとも残酷な楽しさがある。
ゲイを狂わす無自覚ノンケの残酷ぶり
シーズン4でアンデルが去った後に、”ラス・エンシナス高校”にやってくるのが、サッカー界の王者クルス（カルロト・コッタ）の息子イヴァン（アンドレ・ラモグリア）。
ゲイもしくはバイの自覚がないにも関わらずゲイを惹きつけるオーラを無意識で発散するイヴァンに、「ゲイの王様」的な尊厳が崩壊してしまったパトリックはいきなりハマってしまう。あの手この手でパトリックはイヴァンを口説き落とそうとするも、あっさりかわされ続ける。
そんな2人の関係を疑う父クルスに対して、パトリックは「イヴァンはゲイじゃないから、僕の想いは通じない」と断言する。実はクルスはサッカーのスターという立場上、バイセクシュアルであることをひた隠しにして生きてきていたのだ。
イヴァンにすげなくされたパトリックはクルスと結ばれてしまうのだが、その様を見たイヴァンの心に嫉妬の炎が燃え上がり、結果的にパトリックとイヴァンはカップルとなっていく。
親子丼の果てに狙った獲物を手に入れるのだから、「ゲイの王様」的な尊厳が崩壊したとはいえ、”ベルアミ”パトリックの面目躍如といったところ。
とはいえ、元ノンケだかバイだか不明なイヴァンはアンデル以上に扱いが大変な複雑な性格の持ち主でパトリックは手を焼くことになる。
パトリックを失ったことでドラッグと酒に逃げたクルスは迂闊な行動をしたことでカミングアウトする羽目になり、シーズン5ではサッカースタジアムを舞台にクルスの支持者と、ゲイ嫌いのサポーターたちによる衝突と暴動まで勃発する。
さらにシーズン6では、衝撃的な事件により自暴自棄になったイヴァンが乱行パーティーを開き、自宅の豪邸がまるでハッテン場のダークルームのようになる状況も描かれる。
シーズン6でパトリックは去ったが、イヴァンはシーズン7も登場するはず。今後のゲイ・キャラクターとエピソードがどう描かれるのかも気になるところだ。
イッキ見必至！見始めるなら週末推奨
今回はゲイ・キャラクターにフォーカスをあてて『エリート』を紹介したが、毎シーズン衝撃的な事件で幕を開け、時間を遡ってその事件が起きるまでを見せていく展開は、同じくNetflixのドラマ『13の理由』的な興味深さがある。
ノンケ男女の物語もゲイに負けずドロドロな展開で、こちらもまた面白い。視聴者数が伸びないと打ち切られるシビアーなNetflixでシーズン7まで継続が決まっているのは、世界中の視聴者を熱狂させているからに他ならない。
見始めると止められなくなること確実なので、週末など時間に余裕のあるときに見ることをおすすめする。
（冨田格）
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