民族衣装職人と弟子、死にゆく妻の三角関係。新作ゲイ映画『青いカフタン』

2022年のカンヌ映画祭で話題となった、モロッコの民族衣装職人と死にゆく妻、そして若い男の弟子の三角関係を描いたマリアム・トゥザニ監督の2作目『青いカフタン(Le Bleu du caftan)』。第95回アカデミー賞の国際長編映画賞にも正式出品されたこの新作ゲイ映画を紹介。

映画『青いカフタン』の物語

青いカフタン

2022年のカンヌ映画祭「ある視点」部門でプレミア上映された『青いカフタン(Le Bleu du caftan)』。

この映画は、モロッコのメディナ(旧市街)で伝統的な民族衣装であるカフタン屋を営む、ハリムとミナの夫妻、そしてハリムの弟子となる青年ユセフとの三角関係を描いている。夫妻は要求の多い客のニーズに応えるためにユセフを雇う。刺繍と仕立ての技術をハリムから学ぶため、ユセフは献身的に働く。しかしミナは徐々に、ハリムがこの青年の存在にどれほど心を動かされているかに気づいていく。

カンヌ映画祭で絶賛される

青いカフタン

『青いカフタン』はカンヌ映画祭で圧倒的な好評を博し、批評家たちは結婚という現実に対するトゥザニ監督のニュアンスに富んだアプローチを賞賛した。

インディ・ワイヤー誌は、次のような批評を掲載した。

『青いカフタン』は、恋愛、プラトニック、家族愛、性的なものなど、さまざまな種類の愛と、人生の複雑な瞬間にそれらが交差せずにはいられない方法についての映画である。

しかし、それ以上に、この映画は、現実に打ちのめされた人々についての映画だ。この世界の厳しさは、彼らが生涯をかけて培ってきた仮面を剥がす。隠すものが何もない最も弱い瞬間に、トゥザニはハリムが誇れるような細部へのこだわりをもって、登場人物たちのありのままの姿を見せる。

そして、この映画は、登場人物が私たちに信じさせるよりもずっと良い人間であったことを明らかにしてくれる。

https://www.indiewire.com/2023/01/the-blue-caftan-trailer-1234797577/

モロッコの人々が変わるきっかけ

青いカフタン

『青いカフタン』は、モロッコの性的マイノリティに対する関心を喚起し始めているという。

トゥザニ監督は、こう語る。

「モロッコのメディアで性的マイノリティの人々について言及する記事を目にするようになりました。この映画が話題になる以前は、まったく目にすることがなかったのです。言い換えれば、社会やメディアの目には性的マイノリティが存在し始めたということで、これは大きな前進だと思います。同時に、まだまだ遅れている面も大きいと思います」

第95回アカデミー賞の国際長編映画賞にモロッコから正式出品された『青いカフタン』は、2月10日より米国の一部の劇場で公開される。予告編を見るだけで、職人と弟子の間の化学変化と、それに気づいた妻とのピリピリした緊張が伝わってくる。日本でも公開されることを期待したい。

※参考記事:Indie Wire/instinct

(冨田格)

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