「サル痘は激痛」高熱と激痛に襲われながら孤独で苦しんだ2週間の話

致死率は非常に低く、発疹が出てから2~4週間で自然治癒する。という「サル痘」の一般的な症状を知ると、なんとなく楽観視してしまいがちだが、実は痛みに苦しめられている例は結構あるようだ。

7月27日に公開した「『サル痘は激痛』死なないからと甘くみたら酷い目に遭うNYゲイの体験談」は多くの人に読まれているが、もっと酷い状況の人もいるようだ。

スウェーデン出身でブルックリンに住む39歳のゲイの苦しみの体験談を紹介する。

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NYプライドで複数の男性と性交渉

サル痘は激痛

The Guardianが7月23日に公開した「‘I literally screamed out loud in pain’: my two weeks of monkeypox hell(痛みのあまり文字通り叫んだ:私の2週間のサル痘地獄)」から引用する。

この記事で告白したあるニューヨーカーは、サル痘が新たに拡大している感染症のため、医療システムが十分に確立していない中で闘病せねばならないという悲惨な試練を体験した。

6月24日からの週末、ニューヨークではパレードを中心としたプライドフェスティバルが開催された。その前日、6月23日からニューヨーク市が最初の予防接種活動を開始したが接種を受けられる人数は非常に少なく、検査は1日に10人しかできないほど体制が整っていなかった。

彼はフェスティバルを楽しみ、その週末に複数の男性と性交渉をした。

そして、1週間後の7月1日、私は強い疲労感を覚え始めた。悪寒と筋肉痛を伴う高熱があり、リンパ節が喉から2センチほど飛び出しているほど腫れていたのです。

https://www.theguardian.com/world/2022/jul/23/i-literally-screamed-out-loud-in-pain-my-two-weeks-of-monkeypox-hell

痛みのあまり文字通り大声で叫んだ

サル痘は激痛
‘I’m pretty worried this is going to be another endemic disease, especially among gay men’ – Sebastian Kohn Photograph: Courtesy of Sebastian Kohn

症状が始まって2日後に、肛門と直腸に痛みを伴うただれとして発疹がで始めた。しかし痛みというよりもチクチクとしたかゆみを感じる程度。

基礎疾患もなく健康な彼は、この時点ではサル痘に対して恐れをいだいていなかった。

プライマリーケア医(PCP)のオンライン診察で検査を受けた方がいい言われたので、救急医療機関に行き、サル痘と性感染症の検査を受ける。そこで、サル痘の治療に使われている抗ウイルス剤「TPOXX」を希望したが、サル痘陽性者以外には処方できないと断られた。

彼の地獄はそこから始まった。

帰宅後、発疹が広がり始め、不安な気持ちになりました。最初は蚊に刺されたようなものから、ポツポツとした水疱になり、やがて弾けて、最後はかさぶたになって傷跡が残るのです。

頭蓋、顔、腕、足、手、胴体、背中、そして右ひじに5個できました。ピーク時には50個以上の病変があり、高熱と激痛に襲われ、パニック発作を起こしました。皮肉なことに、ペニスだけは病変がでませんでした。

翌日、性感染症の結果が出て、淋病は陽性でした。しかし、サル痘の結果はまだ出ません。

その頃から、首から下の体中にじんましんができ、頭痛、指や肩の関節痛、すねの骨の変な痛みが出て、立てなくなるくらい痛くなりました。夜は、病巣とじんましんの痛みとかゆみで目が覚め、ベッドに座り込んで体を掻くだけで気が狂いそうでした。

私は孤立し、孤独で、この状況がいかに不公平であるかということに苛立っていました。明らかに重い病気なのに、治療を受けることもできず苦しみに耐えるしかなかったのです。

ただでさえ痛かった肛門の病変は、開いた傷口になってしまいました。まるで3つの裂け目が隣り合わせにあるような感じで、耐え難いものでした。トイレに行くときは、文字通り大声で叫びました。体を洗うなど患部を清潔に保つことさえも、非常に苦痛で、毎回2時間もかかっていました。

https://www.theguardian.com/world/2022/jul/23/i-literally-screamed-out-loud-in-pain-my-two-weeks-of-monkeypox-hell

陽性になっても入手できない抗ウィルス剤

サル痘は激痛

検査から4日経ち、サル痘陽性の連絡が入る。CDCが、肛門病変・咽頭病変・皮膚病変を持つ人を治療の対象とすべきとする指針を出していることは知っていた彼は、抗ウイルス剤を入手しようとする。

しかし、救急医療センター、保険省、プライマリーケア医(PCP)をたらい回しにされるだけで、入手することはできなかった。

それから、喉が腫れてきたんです。扁桃腺は白い膿で覆われていました。PCPに、”ERに行った方がいい “と言われましたた。

ERでは細菌性扁桃腺炎と判断され、抗生物質を一通り処方されました。でも、抗ウイルス剤は重度の免疫不全の人にしか処方できないと言われたんです。私は「それはCDCの治療ガイドラインと違う」と伝えたがダメでした。そして、夜中の2時に退院させられました。私は信じられないほど意気消沈しました。

https://www.theguardian.com/world/2022/jul/23/i-literally-screamed-out-loud-in-pain-my-two-weeks-of-monkeypox-hell

その翌日になり、ようやく抗ウイルス剤を処方してもらえることになり、服用しはじめてからは発疹がみるみる乾きかさぶたになっていき、肛門の痛みも徐々に軽減され、痛みなくトイレを使えるようになったそうだ。

サル痘を自分事と考えて感染予防を

サル痘は激痛

死なないし、自然に治るから「サル痘」なんて怖くない。と、甘く見ていたら大変な目に遭うかもしれない。

各国の感染報告を見ると人によって症状にバラつきがあるので、感染したら誰もがここで紹介した彼のように激痛地獄でのたうちまわるわけではないかもしれない。

しかし、ニューヨーク以上に感染者数が少なく検査と治療体制ができていない今の日本でサル痘に感染すると、一人で苦しみと闘わねばならない可能性は高い。

決して楽観視することなく、どうすればサル痘が感染するのかを知り、感染予防につとめていきたい。

ジオ倶楽部ではこれからも継続して「サル痘」の情報を発信していく。

(冨田格)

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