スコットランド初”カミングアウト”サッカー選手ザンダー・マーレイの願い

今年1月よりスコットランドのサッカーチーム「ボニーリグ・ローズFC」に所属しているザンダー・マーレイ選手が、2022年9月にゲイであることをカミングアウトした。彼がカミングアウトしたきっかけや、これからの目標を紹介する。

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きっかけはプライド・イベント

ザンダー・マーレイ
画像引用元:Instagram

スコットランドのシニア・サッカー選手で、ゲイであることをカミングアウトする選手は一人もいなかった。そんななか2022年9月に、当時「ガラ・フェアリーディーン・ローバーズ」に所属していたザンダー・マーレイ選手がカミングアウトした。

マーレイ選手がカミングアウトをするきっかけとなったのは、2022年のプライド・イベントに参加したことだという。

「私がカミングアウトする理由は2つあります。

一つは、プライドイベントに参加したことです。今までずっとゲイであることを隠したクローゼットだったので、プライド・イベントには行ったことがありませんでした。しかし、休暇をとって訪ねたプライド・イベントは、とても自由でハッピーで、自分らしくいられる最高の空間でした。私は、この雰囲気が大好きだと感じたのです。

そしてもう一つは、サッカー選手にとってカミングアウトすることが容易ではないことを私は実体験として知っていることです。自分を隠し続けることのストレスはとても大きく、正直うんざりしていました。私と同じように、ゲイであることを隠し悩んでいる他の選手たちの力になりたいと考えたのです。

スコットランドでサッカーをしているゲイの男性が他にもいることは、以前から知っていました。私がカミングアウトしたことが、彼らが声を上げる力になることを願っています」

マーレイ選手は、カミングアウトすることでチームメイトから反感をかうのではないだろうかと不安を抱いていたという。

「最悪の事態を覚悟していたのだけど、クラブの仲間たちはとても好意的に受け入れてくれました。みんなとは本当に強い絆で結ばれていると感じられましたし、そのサポートには圧倒されるほどでした」

多くのゲイのアスリートから届いたDM

ザンダー・マーレイ
画像引用元:Instagram

マーレイ選手はカミングアウトに合わせてインスタグラムのアカウントを取得した。すると、そこに様々なDMが寄せられたという。

「正直なところ、信じられないようなダイレクトメッセージが届きました。複数の現役アスリートが『カミングアウトしてくれて、ありがとう』と言ってきたのですが、彼らはみんなクローゼットのゲイでした。そして、私にカミングアウトするためのアドバイスを求めてきたのです」

マーレイ選手に届いたアスリートからのメッセージは、それだけではなかった。

「カミングアウトしてから数週間後、クラブのトレーニングを終えて4人の仲間と車で帰宅しているときに、トム・デイリーが私にメッセージを送ってくれたのです」

2021年の東京五輪のシンクロ高飛込で金メダルを獲得した英国のトム・デイリーは、2017年にダスティン・ランス・ブラックと同性婚、翌年、代理母出産によって長男を授かり、家族3人で幸せに暮らしている。

2013年にカミングアウトしたデイリーは、現在活躍している多くのゲイのアスリートにとっての憧れであり、精神的な支柱とも言える存在だ。

そんなデイリーからのメッセージを受け取ったマーレイは、思わず涙ぐんでしまったという。

当事者が自分を受け入れるための力になりたい

ザンダー・マーレイ
画像引用元:Instagram

3月13日にBBCが放送したドキュメンタリー番組『スコットランド・ディスクロージャー』が、マーレイ選手を取り上げた。が出演した。

番組の中でマーレイは、性的少数者のサッカーファンや、ゲイのアマチュア・サッカー選手、そしてカミングアウトしているレフェリーのロイド・ウィルソンと、ゲイを嫌う人たちが投げかける言葉がいかに自分たちを傷つけるかについて話している。

アマチュアのある選手は、18歳の時に所属していたクラブでカミングアウトしようとしたが敬遠されクローゼットに引きこもってしまい、公にカミングアウトするまでに12年かかったと語る。現在のクラブの仲間は、彼を受け入れ応援してくれているそうだ。

「彼が新しいチームメイトと自由におしゃべりしているのを見て、大きな希望を持つことができました」と、マーレイはBBCのウェブサイトに記した。

さらにマーレイは、スコットランドサッカー協会が同性愛者への嘲笑やその他の差別的な行為を行った選手に対して10試合の出場禁止となる新しい懲罰規定を導入したことの重要性を挙げている。この新条項は今シーズン22回使用され、そのうち17回が反同性愛の違反行為だったとのこと。

現在は新たなクラブ「ボニーリグ・ローズFC」でプレーするマーレイは、世界中の他の性的少数者のサッカー選手の模範となることを望んでいる。

「私の物語が、他の人たちが自分を受け入れるための力になることを願うばかりです」

※参考記事:OUT SPORTS

(冨田格)

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