若きゲイの歌人が描く自伝的青春小説「僕は失くした恋しか歌えない」発売
若いうちに自分がゲイだと気づいた人ならば、誰もが感じる戸惑いや悩み。
オープンリーゲイの歌人が記した自伝的青春小説「僕は失くした恋しか歌えない」が発行された。
SNSや出会い系サイトなど、兄貴・親父世代が若い頃には存在しなかったツールに恵まれていながら、青春時代のゲイが心に抱える問題や葛藤は、時代が変わっても驚くほど共通している。
■世代を超えて共通する青春時代のゲイの葛藤
オープンリーゲイの歌人、小佐野 彈(オサノ ダン)。
1983年、東京・世田谷に生まれる。
1997年、慶應義塾中等部在学中に作歌を始める。慶應義塾大学経済学部卒、大学院進学後に台湾にて起業する。現在は、台湾台北市に在住。
歌人としては、2017年「無垢な日本で」で第60回短歌研究新人賞を受賞。2018年、第一歌集『メタリック』を講談社より刊行。2019年、第12回「(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」、第63回現代歌人協会賞を受賞。
2019年6月に初の小説『車軸』を集英社より刊行。
また、俵万智、野口あや子との共編書に『ホスト万葉集』『ホスト万葉集 巻の二』がある。11月30日に短歌研究社より最新歌集『銀河一族』を発売した。
新潮社より11月29日に発売した小説「僕は失くした恋しか歌えない」は、オープンリーゲイとして創作を続ける著者が、セクシャリティに戸惑う少年のリアルな青春を描いた自伝的青春小説。
「親ガチャ」大当たり! なのに、どうしてこんなにつらいんだろう。
「グループ企業の御曹司」として生まれ、「幼稚舎から慶應」のセレブ人生。何不自由ない学生生活を送る「僕」。
性愛の対象が同性であることに気付いたとき、それまで抱えていた違和感が明確になっていく。
はたから見れば順風満帆な人生でも、「BLみたいな恋がしたい!」という唯一の夢だけが叶わない。超美少女に告白されても応えられない自分への焦り。
BLマンガのようにはならなかった初恋、出会い系サイトでの冒険、大失恋に家族への露見、絶対的な味方だと思っていた母との軋轢。
数々の出会いと別れを経て、「お金持ちのダンくん」は、歌人・小佐野彈へと成長していく。
触れないでください、胸に割れそうな水風船を隠しています
抱き合えばきっとどちらもやわらかい あなたの胸も僕の背中も
憐れみと迷いと愛をぐちゃぐちゃに混ぜればできる 青という色
著者と同年代や、より若いゲイだけじゃなく、遥か昔のことだと忘れていたはずの青春時代の思いが蘇ってきそうな兄貴・親父世代のゲイが読んでも心に響きそうな作品だ。
僕は失くした恋しか歌えない
著者:小佐野彈
造本:四六版(272ページ)
価格:1870円(税込)
Amazon:https://amzn.to/3F870UA
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