ゲイのラガーマンでボブスレー選手”サイモン・ダン”氏35歳で亡くなる

オーストラリア出身のラグビー選手であり、初のボブスレーのナショナル・チームに所属したゲイ選手となったサイモン・ダン氏。ボブスレーの試合で大怪我をするものの、リハビリを重ね日常生活を取り戻している様子をインスタグラムで公開していたのだが、2023年1月21日に自宅のアパートで亡くなっているのが発見された。

ラグビーからボブスレーへの転身

サイモン・ダン
画像引用元:Instagram

サイモン・ダン氏は1987年7月27日生まれ。シドニーの南にあるウーロンゴンで、子供の頃からラグビーリーグに所属して、ラグビーに打ち込んでいた。しかし、自分がゲイであることを自覚していたダン氏はセクシュアリティの問題で悩み、周囲にカミングアウトしてラグビーからは遠ざかった。

しかし後に、オーストラリア初の同性愛者を含むラグビーユニオンのクラブ「シドニー・コンビッツ」に所属してラグビーを再開する。

選手としてのキャリアを積むためにカナダに渡ったダン氏は、カナディアン・スポーツ・インスティテュートのジムで働きながら、オーストラリアのボブスレー・チームに挑戦する機会を得る。このチームに参加し国を代表したことで、ダン氏は「スポーツで国を代表した最初のゲイ」であることを公表した。

2016年11月にボブスレーからの引退を発表したダン氏はイギリスに渡り、世界初のゲイのラグビークラブ「キングス・クロス・スティーラーズ」で、ラグビーを再開する。

2021年7月、ダン氏はボブスレーへの復帰と2022年の北京冬季オリンピックにオーストラリア代表として出場する意思を表明。同年9月からオーストラリアチームの練習に参加し、カナダのウィスラーで大会に出場したが、シーズン2戦目の4人レースで上腕骨破裂を起こし治療のためにオーストラリアに帰国した。

嵐のような1年間で私生活に生じた変化

サイモン・ダン
画像引用元:Instagram

手術からリハビリに打ち込んだことで、日常生活を取り戻した様子をインスタグラムに投稿していたダン氏だが、その私生活には大きな変化があったようだ。

2022年11月、ダン氏は5年間交際してきたパートナーのフェリックス・メイシー・カーティスとの別離を発表した。2人は2018年に、ラグビーのグラウンドでキスをしている画像を公開し、世界中で大きな話題となった。

ダン氏は、「個人的な損失でつらい1年を過ごした後、私たちが一緒に過ごした時間は終わりに近づいており、人生やパートナーに求めているものが進化していることが明らかになりました。私は彼を賞賛します。誰かを解放するタイミングを知るには真の愛が必要であり、私たちはそれを実行することに決めました」とコメントを添え、2人の交際が終わったことを報告した。

今年の元日、シドニーハーバーブリッジのニューイヤー花火を背景にした写真に「おいおい2023年か。2022年のジェットコースター のような日々を過去に残して..」とコメントと共に投稿した。ダン氏のインスタグラムへの最後の投稿は、1月19日、下着姿で鏡に映った自撮り画像に「そろそろまた写真撮影の時期かな?」というコメントを添えられていた。

1月21日(土)午前10時頃、シドニー郊外のサリーヒルズのクラウンストリートにあるアパートで男性の遺体が発見されたという報告を受け急行したNSW警察がダン氏の遺体を発見、彼の死を不審なものとはみなしていないと発表した。

多くの人に愛された男

サイモン・ダン
インスタグラムへの最後の投稿より 画像引用元:Instagram

2016年にカナダのボブスレーチームを引退後は、オーストラリアのゲイ雑誌「DNAマガジン」の表紙に登場したり、写真家レオ・ホールデンの被写体となり大胆なヌード写真をインスタグラムで公開。雑誌、オンライン・ニュースサイト、ラジオ、テレビなど数百のメディアに登場して、ゲイのインフルエンサーとしての地位を確立した。

またダン氏は自分の知名度を活かして、セクシュアル・マイノリティのコミュニティのため複数のチャリティ団体を積極的に支援してきた。

2020年には、グレッグ・グールドとイナヤ・デイのシングル「Love Like This」のMVの主役として俳優デビュー、また同年には「キングス・クロス・スティーラーズ」のドキュメンタリー映画『スティーラーズ』にも出演した。

世界中の多くのゲイに支持され、大きな影響力を持っていたサイモン・ダン氏。35歳で人生を終えたのは、あまりに早すぎるというしかない。

写真家レオ・ホールデンは1月24日に、ありし日のダン氏の写真に追悼のコメントを添えてインスタグラムに公開した。

「私の大切な友人サイモン、ご冥福をお祈りします。 いつも写真を撮るのがとても素敵で、一緒に遊ぶのがとても楽しく、あらゆる方法でとても素晴らしい。あなたが私の人生に現れなければ、今の私でも写真家でもなかったでしょう。私は永遠に感謝します」

参考記事:star observer/instinct

(冨田格)

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