パリ五輪を目指す米国の若手競泳選手がカミングアウトして得た”幸せ”
2024年のパリ五輪を目指す、米国水泳ナショナルチーム所属の競泳選手ニック・アルビエロは、アメリカを代表するゲイのアスリートでありたいと強く願っている。アルビエロがカミングアウトすることで、どんな反響があったのかを語った。
カミングアウトする時期がやってきた
米国水泳ナショナルチーム所属の競泳選手ニック・アルビエロは、自分がゲイであることを隠していたわけではなく、ただ、大げさなカミングアウト・パーティーを開催する必要を感じていなかっただけだという。
ケンタッキー州の公立大学ルイビル大学で2回NCAA(全米大学体育協会)チャンピオンに輝き、現在パリ五輪出場を目指し研鑽しているアルビエロは、コロナ禍に見舞われたこの数年の間に、自分がゲイのアスリートであることをより公にするようになった。
「今こそカミングアウトする時期なのだと思ったのです。5年前には、カミングアウトするための心の準備ができていなかったでしょう」
競泳選手としての実績
アルビエロは、2つの国内選手権を獲得し、さらにACC(アトランティック・コースト・カンファレンス)では、バタフライ(200ヤード)で5回チャンピオンになっている。その成績が認められ、ACCの男子スイマー・オブ・ザ・イヤーを2回受賞している。
また、コロナ禍の特別対応としてNCAAが設けた追加資格のおかげで5年間競泳を続け、MBAを取得することができた。
アルビエロは、ルイビル大学の水泳競技の歴史の中で、最も勲章を受けた選手の一人となった。このことは、彼が世界の舞台で活躍する可能性があることを示している。
2023年、アルビエロは「世界選手権」と10月にチリで開催の「パンアメリカン大会」への出場者を決定するチームUSAの選考会に出場する予定だ。
「目標は、これらの大会のいずれかに出場することです。そしてその先には、当然オリンピックトライアルを見据えています」とアルビエロは語る。
カミングアウトしてからのこと
アルビエロは2022年6月、妹と一緒に「ルイビル・プライド」を体験した後カミングアウトすることを決意し、虹で飾った写真をインスタグラムで公開した。
それがアルビエロにとって初めて公へのカミングアウトだったが、反響は好意的だったという。
「本当に楽しかったです。とてもくつろいだ気分になれました。周囲の誰もが受け入れてくれて、ありのままの自分でいられるようになりました。とてもクールな体験ができました」
ルイビル大学では、1年目に何人かの友人と親しいチームメイトにカミングアウトしたそうだが、結果、チーム全員が知ることになり不安も覚えたそうだ。それは、通っていたキリスト教系の高校と中学で、周囲の生徒からからかわれた経験があったからだ。
「同級生の男子たちは、かなり意地悪なことを言ってました。僕の声は少し高いし、友達はほとんど女の子だし、行動は普通の男子っぽくないし。そういうことでからかわれながら中学と高校を過ごしてきました」
大学に入ってチームの中で少しずつカミングアウトし、インスタグラムでの公でのカミングアウト、その後にテレビのインタビューなどに応えていく中で、水泳関係者から否定的なことはまったく言われなかったという。
「ロッカールームや、競泳水着でプールサイドにいることで、僕のことを違う存在に思ったり、僕のことを妙に意識されたら嫌だなと思うことが足かせになっていました。でも、ネガティブなことは一切受けていません」
アルビエロは、水着メーカーの”Tyr”とスポンサー契約を結び、活動家のJPデイヴィスと募金活動のパートナーシップを結んでいる。パリ五輪に向けて、順調に競技者生活を続けているようだ。
ゲイのアスリートして、これからのアルビエロの活躍を見守っていきたい。
※参考記事:OUT SPORTS
(冨田格)
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