世界保健機構(WHO)がゲイ・バイ男性に向けて「サル痘」に関するアドバイスを発表
コロナ禍がようやく落ち着き、日常生活が少しずつ戻ってきているなか、欧米のゲイの間で「サル痘」という感染症が広がり始めているという報道が増えてきた。
世界保健機構(WHO)が5月25日に、「ゲイ(バイ)男性のための公衆衛生上のアドバイス」を発表した。
WHO年次総会でサル痘に言及
5月27日、ジュネーブで開催されている世界保健機構(WHO)の年次総会で、世界的な感染症への対策を統括するシルビー・ブリアン氏は、このように語った。
「今適切な対策を講じれば、おそらく簡単に封じ込めることができると考えている」
https://news.yahoo.co.jp/articles/671520e3ec5c449e8878abcf6e98423ae70ac599
「現在の重要な優先事項は、非流行国での感染を食い止めることだと考えている」と言及。
必要な対策として症例の早期発見と隔離、接触者の追跡を挙げた。
また、ブリアン氏は「サル痘にも有効な天然痘ワクチンの備蓄に関する情報を共有する必要がある」と指摘。WHOは、ワクチンは集団接種ではなく、感染者の濃厚接触者を対象に投与することを勧めているそうだ。
5月26日に公開した記事「致命的じゃないが発症すると厄介な「サル痘」性に開放的なゲイは最新情報を抑えておきたい」でも記したが、サル痘はゲイ特有の感染症ではないが、現状は欧米のゲイの性的ネットワークで広がり始めている。
また、致死率は低いものの発症するとかなり厄介な感染症であり、かつ治療法もまだ確立していない。
そんななか、6月にはコロナ禍によって止まっていたインバウンドが再開する。日本のゲイにとっても他人事ではない「サル痘」に関する最新の情報を把握しておくことは重要だ。
致命的じゃないが発症すると厄介な「サル痘」性に開放的なゲイは最新情報を抑えておきたい
WHOが発表した公衆衛生上のアドバイス
世界保健機構(WHO)が5月25日に発表した「ゲイ(バイ)男性のための公衆衛生上のアドバイス」から、特に重要と思われる項目をピックアップして紹介していこう。
まず、大前提。
サル痘のリスクは、ゲイ(バイ)男性に限定されないことに留意することが重要です。感染している人と密接に接触している人であれば、誰でもリスクがあります。
https://www.who.int/publications/m/item/monkeypox-public-health-advice-for-men-who-have-sex-with-men
サル痘の症状どのようなものだろうか。
症状は以下の通りです。
サル痘の症状は、通常、発熱、強い頭痛、筋肉痛、背中の痛み、元気のなさ、リンパ節の腫れ、皮膚の発疹や病変が含まれます。発疹は通常、発熱から1~3日以内に始まります。平坦またはわずかに隆起し、透明または黄色がかった液体で満たされています。
その後、痂皮(かさぶた)になり、乾いて落ちます。一人の人にできる病変の数は、数個から数千個に及ぶことがあります。発疹は顔や手のひらなどに集中する傾向があります。また、口、生殖器、目などにもできることがあります。
サル痘の発疹は、梅毒やヘルペスと間違われることがあります。症状は通常2~4週間続き、治療しなくても自然に治ります。
人によっては、合併症を引き起こし、まれに死に至ることもあります。基礎的な免疫不全のある人は、より重篤な症状を引き起こす危険性があります。
https://www.who.int/publications/m/item/monkeypox-public-health-advice-for-men-who-have-sex-with-men
では、どのように感染するのだろうか?
サル痘にかかった人は、症状がある間(通常2週間から4週間)感染力があります。サル痘は以下の方法で感染します。
症状のある人との密接な身体的接触によって感染します。発疹、体液(皮膚病変部の体液、膿、血液など)、かさぶたは特に感染力が強いです。
また、感染者との接触によりウイルスに汚染された衣服、寝具、食器などの物も、他の人に感染させる可能性があります。口の中の潰瘍、病変、ただれなども感染する可能性があり、唾液を介してウイルスが拡散する可能性があります。
サル痘の発疹は性器や口の中に見られることがあり、これが性的接触による感染の一因になっている可能性があります。
https://www.who.int/publications/m/item/monkeypox-public-health-advice-for-men-who-have-sex-with-men
サル痘から身を守る方法として推奨されているものは。
サル痘が疑われる人、あるいは確認された人との密接な接触(性的接触を含む)を避けることで、リスクを軽減することができます。
もし、症状がある人が他の人と接触する場合は、発疹の上に軽い包帯を巻くか服を着るなどして皮膚病変を覆うようにしてください。物理的に近い距離にいるときは、二人とも医療用マスクをつけてください。
可能な限り皮膚と皮膚の接触を避け、病変部に直接触れる場合は使い捨ての手袋を使用します。
特に、感染者、感染者の衣服、ベッドシーツ、タオル、その他感染者が触れた物や表面に触れた後は、石鹸と水またはアルコールベースの手指消毒剤で定期的に手を清潔にします。
衣服、タオル、ベッドシーツ、食器類は、ぬるま湯と洗剤で洗ってください。衣服や寝具を扱うときは、マスクを着用してください。
https://www.who.int/publications/m/item/monkeypox-public-health-advice-for-men-who-have-sex-with-men
ゲイ(バイ)男性必読!海外の実例から考える「サル痘」とゲイコミュニティ
感染・発症したら厄介だという認識を持ちたい
サル痘は誰にでも感染リスクがあるとはいえ、現在はゲイ(バイ)男性の性的ネットワークで広がっているという情報は、ゲイ(バイ)男性以外にも広がり始めている。
発症したら、発疹が顔など露出している部分に現れるので隠すことは困難だ。また、周囲の人に感染を広げないために隔離する必要もある。
今はまだ日本ではルールが定められていないが、感染が増え始めたら濃厚接触者への天然痘ワクチンの接種や、隔離が求められるようになる可能性もある。
もし、クローゼットなゲイが発症したら会社や家族に強制カミングアウト状態になってしまう。またパートナーに隠れて浮気している場合や、既婚ゲイ男性の場合もパートナーや家族に浮気がバレて厄介な状態になることは確実だ。
しかし、コロナ禍を経験したことで私たちは未知(または一般的ではない)の感染症については情報が早い速度でアップデートされていくことを学んだ。サル痘に関してもなるべく最新の情報をアップデートしていきたい。
サル痘に感染したことで、自分の生活や、恋愛、社会的立場を失いたくないから。
「ジオ倶楽部」では、引き続き「サル痘」に関する情報を随時紹介していく。
国立感染症研究所「サル痘」:https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.html
(冨田格)