「おすぎとピーコ」から考えた同世代ゲイカップルの老老介護の不安を解消する方法
5月10日に公開した記事「『おすぎとピーコ』の現状から、同世代ゲイカップルの老老介護の不安を考える」が、多くの人に読まれている。
これは、同世代ゲイカップルにとっても、また独り身のゲイにとっても老後や介護が必要になった時への不安は大きいことの現れだろう。
前回の記事は「老老介護」で想定される不安を解説したが、「考えるとますます不安になる」という声が多く寄せられたので、今回は不安を少しでも解消するための具体的な方策を解説する。
立ちはだかる身元引受人と連帯保証人問題
同世代ゲイカップルの「老々介護」に関して、不安となる要素はさまざまあるのだが、中でも反響が大きかったのは、
「病院に入院するときは『身元引受人』『連帯保証人』の二名が必要になること」
ということだ。
後期高齢者になれば、持病の悪化や、体調を崩したり、不意に転倒して怪我をしたりなど、病院に入院する機会は増えてくるものだ。その際に、独身の同世代ゲイカップルや、独り身のゲイにとって、入院が必要となった時点で身元引受人と連帯保証人の二名を揃えるのは至難の業だ。
そして、この「身元引受人」と「連帯保証人」問題は、入院する時だけじゃなく、老人ホームなど高齢者施設に入所するときも立ちはだかってくるのだ。
今回は、この厄介な「身元引受人」と「連帯保証人」問題を解決する方法を探っていこう。
3種類の解決方法
ゲイの老後に対する不安解消のための活動をしているアライアンサーズの久保さんに、「身元引受人」と「連帯保証人」問題について話を聞いた。
子供がいない独身のゲイカップルや独り身のゲイが、病院への入院や高齢者施設への入所のために「身元引受人」と「連帯保証人」問題を解決する方法は3種類あるという。
1)同性パートナーに身元保証・身元引受を依頼する
2)甥や姪などに同性パートナーと同様の対応を求める
3)アライアンサーズなどの身元保証団体に依頼する
「同性パートナーに身元保証・身元引受を依頼する」場合は、「任意後見契約」「死後事務委任契約」「財産管理契約」「遺言」などを公正証書で作成しておく必要がある。
また、実費で掛かる費用を現金もしくは同性パートナーが受取人になれる終活用の生命保険などで用意しておく必要も生じる。もしもの時に、相続税や後のトラブル回避を考慮すると現金よりも保険活用を考える方が無難かもしれない。
兄弟に子供がいる場合は、「甥や姪などに同性パートナーと同様の対応を求める」という方策もある。この場合は、財産分与などの金銭的配慮が必要となるだろう。
実の親子でさえ介護に関しては避けたがる人がいる現実をみれば、甥や姪に無償の奉仕を期待するのは無謀というもの。手間と時間をかけさせてしまう分、お礼を考えるのは当然だ。
高齢の同世代ゲイカップルや、家族のいない独り身のゲイの場合、「アライアンサーズなどの身元保証団体に依頼する」という方策がもっとも現実的だ。
ただし、この3つの方策はいずれも、いざ入院するとか入所しなければならない、という段階になってから調整することは不可能に近い。
たとえば公正証書を作成するためには最短でも1ヶ月以上の準備が必要だ。甥や姪に依頼するにしても財産分与などの手配を済ませなければ引き受けてもらえる可能性は低い。そして身元保証団体に依頼するにしても、契約成立までは時間を要する。
そしてなにより、入院や入所の必要が生じた緊急時は、体調万全であるはずはなく、そんな体調不良な状態で面倒な手続きなどを自力で調整することは困難だ。さらに、心身が健康で認知症を発症していない時点でなければ契約行為自体が無効になるリスクがあることも覚えておきたい。
「同性パートナーに身元保証・身元引受を依頼する」もしくは「甥や姪などに同性パートナーと同様の対応を求める」という方策をとりたいならば、先延ばしにすることなくなるべく早めに調整を開始することが必要だ。
アライアンサーズができること
同世代のパートナーでお互い高齢の場合や、家族親族に頼れない場合は、「身元保証団体に依頼する」という選択肢がある。
インターネットで検索すれば、さまざまな「身元保証団体」が見つかるので、住んでいるエリアやそれぞれの団体の理念やサービス内容を検討して、ピンとくるところを探すところから始めたい。
しかし、ゲイであることをカミングアウトすることに逡巡があるならば、ゲイの老後に対象を絞って活動しているアライアンサーズに相談するのがいいだろう。
アライアンサーズは何ができるのか、を久保さんに尋ねてみた。
まずは、一番気になる「身元保証」「身元引受」は対応するので、パートナーや家族がいなくとも大丈夫だ。
それから「任意後見契約」「死後事務委任契約」にも対応する。これは、入院する時や老人ホームに入所する時の手配代理や、病院付き添いなどの事務代行全般を請け負ってもらえる。
さらに、月1回の面談や、電話を通じて健康状況の把握を兼ねた話相手となる「見守り契約」や、「墓じまい」など老後に掛かる費用の圧縮する方法を提案して実行してもらえる。
そして、アライアンサーズは高齢者のゲイが家賃が安めの同じエリアに住むことで、仲間との交流が生まれる環境づくりをする「ゲイの老後は横浜で」という提案をはじめている。
ゲイならではのサービスといえば、万が一のときに、DVDやアダルトグッズ、下着、過去の写真など、部屋を片付ける親族や大家などに見られたくないものの生前整理や遺品整理の対応もしてもらえること。実はこの問題がもっとも重要で、ニーズも大きいかもしれない。
「その他にも出来ることはなんでも対応します」と久保さんは語る。
同世代ゲイカップルの「老老介護」や、独り身ゲイの老後に関しては、まだまだ不安になる問題は数多くあるが、まずは病院に入院するときや、高齢者施設に入所する際の「身元引受人」と「連帯保証人」問題を解決する具体的な方策は見えてきた。
さまざまな問題や不安を一度に解消することは不可能だが、なるべく若く元気なうちにひとつひとつ解決の道筋をつけていくことで、漠然とした不安は解消されていく。
パートナーと真面目に話してみたり、また独りでじっくり考えて、どうすることが一番いいのか検討をはじめてほしい。
(冨田格)
アライアンサーズ
所在地:東京都新宿区新宿2-12-13
電話:03-6260-8637
公式サイト:https://alliancersjp.com/
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