【ゲイと終活】夢を実現する機会を逃さず、後悔しないことが何より大切
ある程度の年齢になると、自分の人生の時間が有限であることを切実に感じるようになる。独身ゲイは自分の老後から人生の結末に向けての準備をしていくことが重要なのだが、それとは別に、元気なうちに夢を実現させておくべき、という考え方もある。
目次
実現した夢と、直面した現実
ゲイ、バイ男性の老後・終活の支援を行うアライアンサーズに自分の終活相談にきた、60代のゲイ男性・田中さん(仮名)は、終活準備とともに、念願のタイ旅行を実現することができた。
夢を実現できた喜びもつかのま、帰国後に過酷な現実と直面せざるを得なかったという。あまりにもドラマチックなことが短期間に起きたことを、田中さんご本人はどのように感じているのか?
率直な言葉で語ってくれた田中さんの話を紹介する。
自分の終活を考え準備をはじめたきっかけ
平成16年に母が亡くなり、平成30年に父親を見送り、納骨を済ませた後も実家があった栃木に住んではいました。しかしそこは自分の生まれた土地ではなく、いずれは生まれた横浜に住みかえようと考えました。
そして、実家の取り壊し・売却を済ませて藤沢に住まいを移し、1年程で相模原市に移り住んだ頃にインターネットでアライアンサーズの活動を知りました。
久保さんと相談して、横浜に引っ越すことにして、同時に両親の墓を永代供養してもらうようにして、自分の墓を横浜に購入しました。さらに保険の整理などをしている時に、人生の中で後悔していることがあって、それは行きたかったのに行けなかったタイ旅行なのです、という話をしました。
タイ旅行に行けなかった理由とは
もともと、肌が浅黒い感じの人が好きだったので、タイに旅行に行きたいと思っていました。10年程前にタイへ行くチャーター便があると知り、急いでパスポートを取り空港に向かったのですが、機材繰りが合わず6時間程遅延する事態に。その時は余裕のある旅程ではなかったので現地滞在時間も限られており、無理して行くのは止めようとキャンセルしてしまいました。
そんな話を久保さんにしたら、「では、一緒に行きますか?」と言ってもらったんです。思わず「ぜひ!行きたいです!」と答えたものの、改めてパスポートを見たら残り7ヶ月しかなく、ギリギリで10年来の夢を叶えることができたという訳です。
長年の夢を実現できて感じたこと
生まれて初めて海外に行くことが出来たのは、本当に嬉しかったです。
「バイタク」「ソンテウ」「トゥクトゥク」など、日本には無い交通手段に乗れた事は、とてもよかったです。また、マッサージを受けただけですが、有名なタイのハッテン場に行った事もいい経験です。
それから、町中のマッサージ店の客引きの乗りの良さには感動しました。あくまでも客と店員という関係の中でかもしれませんが、何となく大阪人のノリに近いものを感じて楽しかったです。
メディアで目にするだけだった土地を実際に見る事が出来て、なんだか生きる気力のようなものが湧いてきました。「また、絶対来るべき所」だなと実感したんです。
帰国後に知らされた厳しい現実
今回、旅行から帰って来たその日に、腰痛で通院していた病院から電話がありました。すぐに行ってみると、「前に撮ったレントゲンに影が~」と言われ、大学病院でMRIや専門病院のPET検査を受けることになりました。
結果は、『悪性リンパ腫の疑い』との事。最終的な検査をして今後治療方針が決まると思いますが、やっぱり終活を始めるにあたり『最後まで健康でいる事』はとても重要だと実感しました。
以前障害を持った子供たちの学校で勤務した事があり、腰痛持ちなので定期的にメンテナンスをしていましたが、結果的にはそれでは追いつかず、11年程前にヘルニアの手術をしました。それ以降、時折通院の必要がありまして、今回も11月に通院して検査したことでリンパ腫を見つけてもらうことができました。
病状を告げられた時に感じたこと
正直、そんなに『生』に執着してはいないと思うので、「いつ死んでも良いや」くらいの気持ちが大きかったです。
子供の頃からいじめられ易い存在だったし、兄弟もいなかったし、中学生の頃に『ゲイ雑誌』を知り、何となく「自分は独りで生きていくんだろうなぁ」と感じて生きてきましたね。他の人と一緒に暮らしていく事が出来ない性格である事もその理由かもしれません。
親と一緒に住んでいるのも嫌で、早く一人暮らしをしたかったです。「生に執着しない」というのは、その延長上の事かもしれません。いつも、誰に対しても、どこにいても、自分に自信が持てない性格なんですよ。
合唱や観劇をする事が、唯一の趣味と言ったところです。
本来,歌う事が好きで、高校生の時に文化祭でバドミントン部だった自分に「手伝ってほしい」と声がかかり、以来、色々な所で歌ってきました。ハマると身体の芯が浄化できるように感じるんです。
また、元々舞台の裏方に興味があって、演劇関連の仕事をしたかったのですが、親がとにかく反対するもので、その道に進むのは諦めて観る側にまわったんです。自分の中で一番は好きなのは『レ・ミゼラブル』ですね。
仕方がない事だと思うのですが、『悪性リンパ腫』の治療方針が決まるまで、検査・検査が続くことに疲れてしまっています。今は、方針が定まって心が落ち着く事を考えるのが、楽しみです。
自分より下の世代に伝えたいこと
「生に執着しない」と言っていた人間が言うのも変ですが、やはり一番大切なのは健康でいる事だと思います。そして、自分がしてきて良かったのは、がん保険を根気強く続けてきた事だと思います。40代になる前に「いずれがんになるかも」と思い、加入したんです。
それから、自分の心が喜ぶ事は何だろうかを考え続ける事が必要なんだと思います。自分の場合は、念願のタイに行けたことで生きる気力が湧いてきましたから。
やり残したことは何かを振り返る重要性
インタビューの最中に、「うまく表現できませんが、居場所があるか無いかで、生きている実感に影響があるのではないかと思います」と語っていた田中さん。
病という現実に直面して「いつ死んでもいいや」と思ったこととは反対に、タイ旅行を実現したことで「生きる気力が湧いてきた」という実感もあったという。
この相反する気持ちは、大なり小なり独身ゲイなら誰もが抱えているものかもしれない。
老後・終活の準備を進めるのは必須なことであるが、私たちはただ死ぬために生きているわけではない。体が元気な間なら、やり残したと後悔している夢を実現することはできる。生きる気力や希望を持てることは、老後や終活準備にとっても重要なこと。
自分の人生の中でやり残した、元気なうちに実現できる夢は何なのか、一度振り返ってみることも大切だろう。
※ゲイ・バイ男性の老後・終活支援はこちら
アライアンサーズ
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電話:03-6260-8637
問い合わせ:https://alliancersjp.com/contact/
(冨田格)
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