バイ男性の声はゲイやノンケより男っぽいという調査結果が判明

同性愛者に比べると話題になることが少ないバイセクシュアル(両性愛者)だが、オーストラリアで声を聞くだけでバイセクシュアル男性を見分けられるのか、という研究が行われた。興味深い結果が判明した、この調査を紹介する。

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「両性愛の消去」消されるバイセクシュアル

バイ男性の声はゲイやノンケより男っぽいという調査結果が判明
バイ男性の声はゲイやノンケより男っぽいという調査結果が判明(イメージ画像)

同性愛者であるゲイとレズビアンがさまざまなメディアで取り上げられたり、映画やドラマ、アニメなどのキャラクターとして登場することも珍しいことではなくなった。しかし、同じ性的マイノリティといっても、バイセクシュアル(両性愛者)はちょっと事情が異なっている。

「両性愛の消去(bisexual erasure)」という言葉をご存知だろうか? 「両性愛の消去」とは「歴史、学術、ニュースメディアおよびその他の資料において、両性愛の証拠を無視したり、削除、改ざん、恣意的な再解釈をしたりする傾向である」、とされている。

たしかにゲイやレズビアンに比べると、バイセクシュアルに光があたることは少ないし、バイセクシュアル当事者の体験や悩みなどを耳にする機会もほとんどない。メディアなどで取り上げられる機会が少なければ、言葉としては知っていても、その存在は幻のように感じてしまうかもしれない。

しかし、バイセクシュアルの当事者は少なからず存在している。そんなバイセクシュアル男性に光をあてる調査が、オーストラリアで行われた。

声だけでゲイ・バイ・ノンケを聞き分ける

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『Journal of Sex Research』誌に掲載された研究は、「声を聞いただけでバイセクシュアルかどうかを判別できるか」を調べることを目的としていた。

その結果、声を聞いただけではバイセクシュアルかどうかを判断できないことがわかった。同時に、ゲイ・ノンケ・バイセクシュアルの男性の声を聴いたとき、人々はバイ男性の声を最も男性的だと感じることもわかった。

先行研究では、ゲイ男性によく見られる声の特徴が特定されている。より高いピッチ、より広い音域、より長い母音、拡大された母音空間、より正確な発音など特徴とされている。しかし、バイセクシュアル男性の声の特徴については、これまで広く研究されてこなかった。

これまでの研究で、バイ男性は自己申告および観察者が申告する男性らしさ、女性らしさにおいて、ゲイとノンケの中間に位置することが多いことが示唆されてきた。そこでバイ男性の声はノンケ男性よりも女性らしく、ゲイ男性よりは男性らしく聞こえるのではないかという仮説が立てられた。

声からバイセクシュアルであることを識別できるということは、社会的に重要な意味を持つ。差別に対する脆弱性を高める可能性があるものの、「両性愛の消去」やバイ当事者が抱く疎外感を軽減するのにも役立つかもしれないと考えられたのだ。

オーストラリアで行われた研究

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バイ男性の声はゲイやノンケより男っぽいという調査結果が判明(イメージ画像)

この研究は、オーストラリアのシドニー大学のジェームス・モランディーニ教授らによって勧められた。

男女80人ずつ合計160人の参加者が、ゲイ・バイ・ノンケ男性20人ずつ合計60人の男性の声のサンプルを聞き、彼らの認識する性的指向を0(完全にノンケ)から10(完全にゲイ)までで評価した。また、聞き手は、声の女性らしさ、男性らしさを視覚的アナログ尺度で評価した。

合計60人の男性には、オーストラリア国歌の最初の2行を暗唱してもらい、スマートフォンを使って録音した。音声サンプルは、バックグラウンドノイズを除去し、音量レベルを正規化することで準備して一貫性を確保した。

その結果、聞き手はゲイとノンケの声を62%の精度で区別できた。しかし、バイとノンケの声を正確に聞き分けることはできなかった。また、女性は男性よりもゲイ男性の声を正確に聞き分けることができた。

さらに、バイ男性の声はゲイおよびノンケの声に比べ、より女性にのみ惹かれていると認識されることを発見。また、バイ男性の声は、ゲイやノンケの声よりも男性的であると評価された。

興味深い点と調査の問題点

バイ男性の声はゲイやノンケより男っぽいという調査結果が判明
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この研究の著者らは、声と性的指向の関係を理解する上で、研究結果が持つ意味について論じている。

この研究結果は、聞き手がゲイ男性の声を識別するための知覚的な声や話し方の特徴が、バイ男性の声には存在しない可能性があることを示唆しているという。また、バイ男性の声はゲイとノンケの声のブレンドであるという仮説を覆すものであるとも述べている。

この研究にはいくつかの限界があり、研究者らはそれを認めている。

ひとつは、オーストラリア人しか参加していないことで、他の文化圏への一般化には限界があるかもしれないということ。もう1つの限界は、音声サンプルの品質に影響を与えた可能性のある録音環境やマイクと口の距離をコントロールできなかったことである。

また、スマートフォンの録音を使用したため音声サンプルの周波数帯域が制限され、話者の声の重要なスペクトル特性が除外された可能性があることも指摘している。

この研究は、声と性的指向の関係の理解に貢献し、聞き手がゲイおよびバイ男性の声を識別できるようにする知覚的な声と音声の特徴を探求するさらなる研究の必要性を強調した。

バイ男性は、言葉による会話でセクシュアリティを特定される可能性が低い。それは、セクシュアリティを公表したくない人にとっては利点かもしれないが、自分のセクシュアリティを間違って認識される可能性もある。

ジオ倶楽部では、なかなか注目される機会がないバイセクシュアルに関して興味深い記事を見つけたら今後も紹介していく予定だ。

最後に、読者に「自分の声は男っぽい」のかを尋ねてみる。

※参考記事:PsyPost

(冨田格)

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