大型有料ハッテン場「北欧館/ロイヤル」閉館で考えるゲイの居場所の守り方
ゲイ・バイ男性があって当たり前と考えていた”居場所”は、予想外にモロい存在だった。大阪の大型有料ハッテン場「北欧館」「ロイヤル」の突然の閉館から、自分たちの”居場所”をどう守るのかということを考える。
突然の閉館で衝撃が走る
2023年3月31日早朝に、大阪の大型有料ハッテン場「北欧館」と「ロイヤル」が、事前予告もないまま突然閉館を発表した。そのニュースはSNSで瞬く間にゲイ・バイ男性の間に広まり、衝撃をもたらした。
一時はTwitterのトレンドに「北欧館」「ロイヤル」が表示されるほどだったので、その反響の大きさがよくわかる。
閉館の日時を早めに発表して別れを惜しむ利用客を集めるという、閉店セールをすることもなく突然の閉館。電話も繋がらず、ホームページも削除されており、閉館の真相が公式に明かされることはなさそうだ。
インバウンドとコロナ禍
何も情報を得ることはできないので、ここからはあくまでも状況を鑑みたうえでの推測。
アジアのLCCのハブとも言うべき存在の関西国際空港を持つ大阪は、コロナ以前は日本でインバウンドの恩恵をもっとも受けた都市のひとつであった。当然、アジアを中心とした各国から訪れるゲイの観光客も多かった。
梅田の「北欧館」と新世界の「ロイヤル」の名前はアジアのゲイの間でもよく知られており、大阪観光に来たインバウンドのゲイ客が大挙して押し寄せていたことは間違いない。
ところが、2020年初めからのコロナ禍によってインバウンドは消滅。コロナ感染を警戒して、日本人の利用客も激減したであろうことは想像に難くない。
年中無休で24時間営業の「北欧館」「ロイヤル」ともに、館内の照明や空調、大浴場の浴槽の湯やサウナなどにかかる光熱費はバカにならないものがあったと思われる。ここにきてエネルギー代の高騰はさらに打撃となったであろう。
また大きな施設を維持するために雇用している人も当然少なくないわけで、人件費の問題が影響した可能性も考えられる。
閉店セールという手法を取らないで、年度末にいきなりの閉館の影にはそんな状況もあったのではないかと推察している。
閉店が決まってからでは遅い
以前はよく通っていたけれど、最近めっきり足が遠のいているバーやイベントなどないだろうか?
そんな人が増えれば、バーのマスターやイベントの主催者にとって「続けていこう」という気持ちが折れてしまいかねない。そして一度気持ちが折れてしまうと、ふたたび続けようという気力を振り絞るのは並大抵のことではない。
皮肉なことに、閉店やイベント終了の告知をするとしばらく顔を見せなかった人がやってきては、口々に「もっと続けてほしい」「残念だ」と言い出すのもまた常。
いわば閉店セールの時期にやってきてそう言われても、マスターも主催者も困惑するだけであろう。「だったら、心が折れる前に来て欲しかった」と。
大切な居場所は自分たちで守る
「北欧館」と「ロイヤル」がいきなり閉館したことからも分かるように、漠然と「そこにずっとあり続ける」と思い込んでいた私たちの居場所は、ある日突然無くなってしまうことがある。
その理由が、マスターや主催者になんらかの都合が生じたのなら仕方がないことだが、もし私たちの足が遠のいたことにあるのならそうならないように努力することはできる。
最近行かなくなったバーやイベントがあると思い当たり「また行きたい」という気持ちがあるならば、「そのうちに行けばいいか」などと先送りせずなるべく早く足を向けてほしい。
もしそれがゲイバーならば、できれば週末を避けて平日に顔を出す方がいいかもしれない。週末に比べてお客さんが少ない平日、何日も来店する客が極端に少ない日が続くとマスターの心が折れるきっかけになりかねない。
そんな平日に昔馴染みの客が顔を出してくれたらマスターは絶対嬉しく思うはずだし、忙しくない日の方がゆっくり話もできるというもの。
インターネットを介した交友関係も大事だが、リアルに人と出会い話ができる居場所も同じように価値がある。そんな大切な居場所を守ることができるのは、私たち自身だという意識を持ち続けたい。
(冨田格)
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