2人のゲイが気になるNetflix『クレイジー・エックス・ガールフレンド』

※年末年始にイッキ見したいサブスク配信作品の記事を再掲するアーカイブ企画。

Netflixで配信している『クレイジー・エックス・ガールフレンド』は、4シーズンにわたる大人向けの毒に塗れたミュージカル・ドラマ。ミュージカル・ファンはもちろん楽しめるが、ゲイにとっても見逃せない。その理由は、このドラマに魅力的な2人のゲイが存在しているからだ。

シャレにならない『glee/グリー』

クレイジー・エックス・ガールフレンド
画像引用元:Instagram

ミュージカルドラマ『クレイジー・エックス・ガールフレンド』は、例えるなら”シャレにならない『glee/グリー』という感じだろうか。

一見、マイノリティを応援するかのように装う『glee/グリー』も、その実、マジョリティに対してもマイノリティに対しても、かなり毒入りスパイスを効かせたドラマではあった。しかし、『クレイジー・エックス・ガールフレンド』の毒は、そんなものを遥かに超えた猛毒だ。

主人公レベッカ(中央)

主人公は、ニューヨークでバリバリ働く弁護士の白人女性レベッカ。若いとは言えなくなってきた年になり、現実の壁にぶち当たった時、偶然再会したのが学生の頃のサマーキャンプで仲良くなった、アジア系の男性ジョシュ・チャン。

クレイジー・エックス・ガールフレンド
ジョシュ・チャン

その瞬間までジョシュのことを思い出したこともないくせに、一気に頭の中で「彼こそ私の運命の人」という妄想ミュージカルが膨れ上がり、仕事を辞めてジョシュが住む街、西海岸のウエストコビーナへと引っ越してしまう。弁護士として働きながらなんとかジョシュに近づこうとするが、ジョシュにはすでに結婚を考えている彼女がいて…。

レベッカの行動原理は、常に自分にとって都合のいい妄想によるもの。それゆえ身勝手にしか思えず共感し難いのだが、なぜだか周囲のキャラクターがレベッカに巻き込まれていき騒動が持ち上がり、それが笑いを生み出す。

シーズンを重ねるごとに、だんだんとレベッカの妄想も行動も度が過ぎるようになっていき、レベッカにはメンタルの問題があることが明らかになっていく。

https://youtu.be/92538NJ0lbE
■ジョシュと再会して妄想が広がり西海岸へ引っ越すミュージカル場面
■精神安定剤の服用を拒むレベッカに精神分析医が「安定剤なんて誰もがのんでるわよ」と歌う場面は、「ラ・ラ・ランド」風で安定剤の名称が連呼されるという悪質すぎて笑えるパロディ。

毎回、過去の名作ミュージカルにオマージュを捧げた、というよりもタチの悪いパロディとする方がしっくりくるミュージカル場面も見どころだ。

ノンケを目覚めさせる健康的な魅力

クレイジー・エックス・ガールフレンド
ホワイト・ジョシュ(デイビット・ハル)

『クレイジー・エックス・ガールフレンド』には、強烈な存在感を放つゲイのキャラクターがいる。ジョシュの地元の白人男性の友達で、名前が同じジョシュなので”ホワイト・ジョシュ”と呼ばれている。

マッチョで歯が白い健康的で、いわゆる”西海岸のゲイ”のイメージ通り。

クレイジー・エックス・ガールフレンド

ホワイト・ジョシュがドラマの中で存在感を増していく理由は2つある。1つは、周囲のキャラクターがレベッカのブチ壊れた行動に巻き込まれていくなか、常に客観的で冷静に状況を見ていること。もう1つは、とびきりの笑顔とエクボを駆使して、レベッカの上司の男性ダリルを虜にしていくところだ。

クレイジー・エックス・ガールフレンド
(右)ダリル

バツイチのダリルは、ホワイト・ジョシュに惹かれていくことで、自分がバイセクシュアルであることを自覚する。ダリルがそれを受け入れカミングアウトするミュージカル場面は、コミカルだけれど感動的でもある。

■「僕はバイセクシュアルだ!」と高らかに歌い上げるダリル

ホワイト・ジョシュに誘われて、ゲイのアウトドアフェスに初参加したダリルが、そこで出会う親父たちが全員ホワイト・ジョシュに親しげに接してきて嫉妬に狂う場面も印象深い。あのルックスで親父好きなホワイト・ジョシュは、若専親父たちに対しては無敵な存在なのは間違いないので、相当遊んできたのは確実だろう。

クレイジー・エックス・ガールフレンド
クレイジー・エックス・ガールフレンド
クレイジー・エックス・ガールフレンド

レベッカと巻き込まれた人々がやらかす下衆い騒動にげんなりした時に登場するホワイト・ジョシュは、この猛毒スパイスが効きすぎたドラマの中で一服の清涼剤ともいえる。

実はクマ専だったアジア系ゲイ俳優

そして、もう一人のゲイがジョシュ・チャンだ。ドラマの中のジョシュ・チャンはノンケ設定だが、演じているヴィンセント・ロドリゲス3世は、オープンリーゲイ。フィリピン系アメリカ人で、愛嬌のある可愛い顔立ちと、マッチョなのだけど手足短めでずんぐりした体型は日本人にとっても馴染みやすい雰囲気だ。

ミュージカルの舞台での経験を重ねてきて『クレイジー・エックス・ガールフレンド』に起用されたので、彼が歌い踊るミュージカル場面もふんだんに楽しむことができる。

■拳法の道場で歌い踊る「フラッシュダンス」のパロディ場面では抜群の運動神経を発揮。

ヴィンセントが2015年に同性婚したグレゴリー・ライトは笑顔が可愛いクマ系だ。ヴィンセントのインスタグラムでは、2人の幸せそうな画像も多数公開されている。

クレイジー・エックス・ガールフレンド
画像引用元:Instagram
クレイジー・エックス・ガールフレンド
画像引用元:Instagram

2021年のホリデーシーズンに配信が始まったAmazonプライムビデオのオリジナルシリーズ『With Love』では、ヴィンセントはゲイの役を演じていて、こちらも注目だ。

クレイジー・エックス・ガールフレンド
画像引用元:Instagram

猛毒スパイスが効きすぎた物語は好みが別れることは確実だけれども、ホワイト・ジョシュと、ジョシュ・チャンことヴィンセント・ロドリゲス3世の2人のゲイの魅力を味わう目的なら『クレイジー・エックス・ガールフレンド』はおすすめのドラマだ。

Netflix『クレイジー・エックス・ガールフレンド』
AmazonPrime『With Love』

(冨田格)

Crazy Ex Girlfriend ©2016 The CW Network, LLC All Rights Reserved.

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