【プライムビデオ】ド派手なおねえレスラーの人間ドラマ『カサンドロ』
プライムビデオで9月22日(金)より配信開始となる『カサンドロ リング上のドラァグクイーン』は、実在するメキシコのプロレスラーの人生をベースにした注目の新作映画だ。本編を見る前に理解しておきたいメキシコのプロレスの事情と、作品の魅力を紹介する。
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日本人にも親しみやすいルチャ・リブレ
WWFやAEWなどデカイ男たちが中心のアメリカン・プロレスとは異なるプロレス文化がメキシコには根付いている。スペイン語でプロレスを意味する「ルチャ・リブレ」は、メキシコを中心に中南米で長く人気を集めているカテゴリーだ。
「ルチャ・リブレ」のリングに上がるレスラーのことを”ルチャドール”と言うが、ルチャドールの多くは小柄な選手が少なくない日本人プロレスラーと体格的に大きな違いがないため、昭和の時代から日本のプロレスとは親和性が高い。
「スカイ・ハイ」をテーマ曲にして颯爽とリングに上がり、華麗な空中殺法を繰り出し一世を風靡したミル・マスカラスは大ブームを巻き起こした。また初代タイガーマスクやザ・グレート・サスケ、ウルティモ・ドラゴンなどメキシコで「ルチャ・リブレ」を修行した日本人レスラーも多い。
女装のレスラー「エキソティコ」という存在
ルチャドールは、ベビーフェイスの「テクニコ」とヒールの「ルード」に分かれて闘うことが基本だが、さらに「エキソティコ(exótico)」という女装でリングに上がるルチャドールもいる。
”変わり者”を意味するエキソティコは、マッチョな男たちの世界にスパイスを効かせ笑いをとる道化役としての存在している。
いわゆる、色物と捉えられているエキソティコだったが、初めてチャンピオン王座に就いたのが「カサンドロ」ことサウル・アルメンダリスだ。エキソティコにはノンケやトランスジェンダーもいるが、アルメンダリスのセクシュアリティはゲイ。
日常から女装をしているわけではなく、リングに上がるときのギミックとして女装をしている。ルチャドールとして今ひとつ目立てなかったアルメンダリスが、女装をしエキソティコとしてリングに上がることで輝きだす。レスラーとして、そしてゲイとしてアルメンダリスの愛と人生を描くのが新作映画『カサンドロ リング上のドラァグクイーン』だ。
カサンドロの成功と挫折
物語は、メキシコ国境の町シウダー・フアレスから始まる。観客のヤジが飛び交うなか、派手な色のマスク、ピチピチのコスチューム、そして威嚇的なリングネームのルチャドールたちのスビーディーかつ激しい試合が行われている。
ガエル・ガルシア・ベルナルが演じるルチャドールのサウル・アルメンダリスは、周囲のルチャドールに比べるとスマートで、つまりレスラーとしては貧弱な体格であり、なかなか勝利に恵まれることがない、いわば負け組だ。ゲイであり、メキシコ系アメリカ人であることで”よそ者”として見られてもいる。
しかし、アルメンダリスは勝ちたいし、自分の名を上げたいと願っている。そんなアルメンダリスにコーチ(ロベルタ・コリンドレス)が、女装ルチャドールのエキゾチコ「カサンドロ」になることを勧めたとき、アルメンダリスは開眼する。
最初はゲイ嫌いの観客たちから口汚く罵られもするが、カサンドロのスピード、しなやかな体格、そして媚びない魅力を武器に、対戦相手や見物人の心を解きほぐしていく。そして、彼は観客を魅了し始め、観客たちはカサンドロが勝つのを見るのが好きになっていく。
ゲイあることが原因のアルメンダリスと父の過去の確執や母親の愛情、彼がルチャドールとして成功するにつれてクローゼットな既婚ゲイのルチャドールである恋人との関係がぎくしゃくしていく過程などを描いていく。
カサンドロはさまざまな挫折や敗北を経験し、さらに破滅的な敗戦も経験する。血みどろの試合場面も、どこか優雅でスタイリッシュに描かれているという『カサンドロ リング上のドラァグクイーン』は、この秋必見の作品となりそうだ。
9月22日(金)午前9時よりプライムビデオで独占配信。
※参考にした記事:npr
(冨田格)
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