山田太一『異人たちとの夏』ゲイ映画版リメイクが英米合作で制作中
1988年に大林宣彦監督が映画化した、山田太一の小説『異人たちとの夏』。異世界に踏み込んでしまい子供の頃に亡くなった両親と再会する男性に起きる、ひと夏の出来事。人間ドラマとホラーをミックスしたこの作品の、リメイク情報をいち早くお伝えする。
昭和最後の話題作『異人たちとの夏』
1987年に山田太一が発表した小説を、市川森一が脚本化して大林宣彦が監督するという、昭和の最後に実現した日本映画界の歴史に遺る作品が『異人たちとの夏』だ。
『異人たちとの夏』の物語を簡単に紹介する。
風間杜夫が演じる脚本家が、同じマンションに住む謎の女性ケイ(名取裕子)と知り合ったことをきっかけに、子供の頃に亡くなった両親(片岡鶴太郎・秋吉久美子)と再会する。奇妙な出来事にも関わらず、両親に甘えることが嬉しくて両親が住む浅草に足繁く通うようになる。同時にケイとも男女の仲になっていくのだが、いつしか男の体は衰弱し始めていた。
両親が住む懐かしい昭和中期の浅草の風景と、バブルが始まる頃の東京の街という全く異なる2つの背景を舞台に進行する物語は、両親と再会するという心温まる面と、謎の女性との関わりや男の体に生じる異変という不穏な面が融合した、ある種独特な印象を与えてくれる。
英米合作でゲイ映画にリメイク
この『異人たちとの夏』のリメイクがハリウッドで進行していると、バラエティ(Variety)が伝えた。
ゲイの友情や恋愛を描いたドラマシリーズ『ルッキング/Looking』や、各国の映画祭で話題となったゲイ映画『ウィークエンド/Weekend』の監督・製作・脚本を手がけたアンドリュー・ヘイによるリメイク版は『Strangers(ストレンジャーズ)』というタイトルで進行している。製作には、米国のサーチライト・ピクチャーズと、英国のフィルム4、ブループリント・ピクチャーズが関わっている。
まだ作品の全貌が不明だが、原作と大きく異なっているのは主人公の男性が、謎の女性ではなく男性と知り合うことで物語が始まることだ。
主役のアダムを演じるのは、2013年にカミングアウトした英国人俳優のアンドリュー・スコット。日本ではベネディクト・カンバーバッジ主演の「SHERLOCK/シャーロック』のモリアーティ役の印象が強い人も多いだろう。
2015年『007 スペクター』、2016年『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』、2019年『1917 命をかけた伝令』などハリウッドの話題作への出演が増加。またテレビシリーズ『フリーバッグ』の神父役でも注目を集めている。
アダムと知り合う謎の若い男性役は、2020年の英国ドラマ『Normal People』でブレイクした新進俳優ポール・メスカル。アダムの両親は、クレア・フォイとジェイミー・ベルが演じる。
『Strangers(ストレンジャーズ)』の6月末にクランクインして、すでに撮影は終了している模様。公開時期などはまだ発表されていないが、日本の小説・映画が原作ということもあり、日本公開も期待できそうだ。
ジオ倶楽部は、これからも『Strangers(ストレンジャーズ)』の最新情報をチェックしていく。
※参考記事:Variety
(冨田格)
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