あるゲイカップルの愛と別離の実話・映画『スポイラー・アラート』が見たい
12月2日に全米で公開した映画『スポイラー・アラート』は、あるゲイカップルの愛と闘病の記録を綴った回想録をベースにした物語。セクシュアリティや性別を超えて感動の輪が広がっている、このロマンティックで悲しくもポジティブな映画を紹介しよう。
あるゲイカップルの14年間の回想録
このプロジェクトは2017年発行の一冊の本がきっかけだ。
「SPOILER ALERT:THE HERO DIES」(ネタバレ注意:ヒーローの死)と題されたその本の著者は、TVコラムニストで”TVLine.com”の創設者および編集長のマイケル・オージエロ。
マイケルは米国「TVガイド」や「エンターテインメント・ウィークリー」で影響力のある仕事を積み重ね、現在は”TVLine.com”の創設者兼編集長として、エンターテインメント情報に関して、頼りになるエキスパートとしての地位を確立している。
しかし、2011年創立”TVLine.com”の仕事が多忙になっていく裏で、、マイケルは個人的に最大の悲劇に耐えなければならなかった。マイケルと同性婚した夫の写真家のキット・コワンは、 11ヶ月におよぶ末期ガンとの闘いの末に亡くなったのだ。
著書「SPOILER ALERT:THE HERO DIES」の中で、マイケルはキットとの苦しく困難な最後の1年を語るとともに、それ以前の13年間を振り返り、彼とキットの紛れもない強い絆が、あらゆる困難の中で、常に笑いを中心とした彼らの関係を支えてきたことを語っている。
「SPOILER ALERT:THE HERO DIES」は、悲しみや喪失感の物語ではなく、真の愛の回復力と強さを示す、忘れがたい、感動的で美しい物語だ。
2人のゲイ俳優が実在のカップルを演じる
映画『スポイラー・アラート(原題)』では2人のゲイ俳優、ジム・パーソンズ(マイケル・オージロエ役)とベン・オルドリッジ(キット・コワン役)が、カップル役を演じている。
映画は、2人がニューヨークのバーで出会い、キットの両親へのカミングアウト、プロポーズから10年にわた2人の関係の浮き沈み、引っ越しなどの大きな転機、そしてキットの病が発覚して闘病から永遠の別離までを描く。
映画のプロデューサーも務めるパーソンズは、「この2人の関係は、これまで舞台やカメラで描くことのできなかった充実感と豊かさに満ちており、そして、とてもやりがいの役でした。私にとって、私という人間、私が知っている人、愛している人を表現する最も信頼できるものだったのです」と語っている。
またオルドリッジは、カミングアウトや同性愛嫌悪の克服、疫病の生き残りといった幾度も描かれてきたテーマが中心ではないゲイのプロジェクトに参加できることが、この作品の魅力の中心であったと語る。
「この映画で最も誇りに思っていることの一つは、この映画が愛について描いているということです。恋愛がテーマで、彼らがゲイであることはそのために不可欠な要素です。また、長期間にわたって関係を続けるということはどういうことなのか、それは必ずしも簡単なことではなく、彼らは様々な嵐を乗り越え、人生と時間が彼らをどのように変えていくのか、ということも描かれています」
人生の様々な局面を凝縮したような物語
キットの保守的な母マリリンを演じるのは、映画『ノーマ・レイ』と『プレイス・イン・ザ・ハート』で2度のオスカー受賞歴を持つサリー・フィールド。
映画『マグノリアの花たち』『ミセス・ダウト』『フォレストガンプ』『アメイジング・スパイダーマン』やテレビドラマ『ブラザーズ&シスターズ』など、数々の作品に出演している大女優だ。『ブラザーズ&シスターズ』ではゲイの息子を持つ母親役を演じたが、実生活でもゲイの息子がいる。
2人の出会いからプロポーズへと続くロマンチック・コメディ的な軽妙な場面から、両親へのカミングアウトや2人の関係を続けていくことでぶち当たるトラブルやそれを乗り越えていく姿などシリアスな場面、そして闘病から別れへと続く感動的な場面と、人生のさまざまな局面を凝縮したようなこの映画、日本でも公開されることを期待したい。
なお、ベン・オルドリッジはジョナサン・グロフとゲイカップルを演じる、M・ナイト・シャマラン監督の新作映画『ノック・アット・ザ・キャビン(原題)』(2023年2月公開)が控えている。こちらも見逃せない作品になりそうだ。
参考記事:Out/Below the Line
(冨田格)
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