それは24時間だけの恋だったのか?新作ゲイ映画『オブ・アン・エイジ』
2022年のメルボルン国際映画祭でオープニングを飾った、ダンスに打ち込むセルビア移民の青年と彼のダンスパートナー(女性)の兄との間で生まれた24時間の恋を描いた『オブ・アン・エイジ』。3月よりオーストラリアで公開が決定したこの新作ゲイ映画を紹介する。
映画『オブ・アン・エイジ』の物語
2022年のメルボルン国際映画祭でオープニングを飾った『オブ・アン・エイジ(Of An Age)』。
映画の舞台は、1999年の夏、メルボルンの郊外。
セルビア人移民のコル(エリアス・アントン)は翌日のダンス大会に向けて準備をしていた。そこに、ダンスパートナーである親友のエボニー(ハティ・フック)が助けを求めてくる。彼女は二日酔いで、自宅から遠く離れた見知らぬ街で目覚めたというのだ。
コルは車を持っているエボニーの兄アダム(トム・グリーン)に頼み、2人でエボニーを迎えるためにメルボルン郊外に向かう。交通渋滞に巻き込まれながら2人の間でさまざまな会話が交わされ、少しずつお互いの感情が化学反応を示しはじめ、強い絆で結ばれていく。
しかし、コルは翌日のダンス大会を終えたら南米へ旅立つことが決まっており、2人の恋には24時間という時間の制約が立ちはだかっていた。
そして数年の時を経て、エボニーの結婚式に参列したコルはアダムと再会する。
恋愛映画の定石に陥らない「稀有な宝石」
オープニング上映となったメルボルン国際映画祭では高く評価され、「CinefestOZ Film Prize」という主要な賞を受賞した。
批評家たちは、この映画を「稀有な宝石」と呼んでいる。その理由は、しつこいユーモアに屈することも、メロドラマの決まり文句の犠牲にもなっていないからだ、という。
脚本は、オーストラリア系マケドニア人のゴラン・ストレフスキ監督みずからが執筆した。ストレフスキ監督によると、もともとはコロナ禍の外出できない状況で執筆の練習のために書き始めたものだったそうだ。しかし、その後、ストレフスキ監督自身の時代と場所の記憶からインスピレーションを得て、本格的な脚本に発展していった。
ストレフスキ監督はこの映画について、こう語っている。
「この映画の中の出来事は私の身に起こったことではないので、特に自伝的脚本というわけではありません。しかし、特に愛、人間関係、友情に関しては、当時の私の考え方にとても基づいています。また、私にとって1999年のメルボルン郊外という、世界で最もロマンチックでない場所でロマンスを作るというアイデアも気に入っています」
『オブ・アン・エイジ(Of An Age)』は3月にオーストラリアでの公開が決定している。日本でも公開されることを期待したい。
参考記事:star observer/QUEERTY
(冨田格)
★あわせて読みたい!
新作ゲイ映画『ベネディクション』奔放に男たちと交わる青年が選んだ道とは