【東京国際映画祭】2本のゲイ映画『異人たち』&アルモドバル西部劇初上映
10月23日(月)より開幕する「第36回東京国際映画祭」で、山田太一の小説をイギリスで映画化した『異人たち』とペドロ・アルモドバル監督の西部劇『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』の、2本の注目新作ゲイ映画が日本初上映されることが分かった。
★ジオ倶楽部はひとつ前の記事も見逃せない
【ゲイと愛犬】犬と暮らす男が魅力的でセクシーに見えるのはなぜだろう?
「東京国際映画祭」の注目ポイント
1985年にスタートした「東京国際映画祭」。当初は、渋谷のBunkamuraや映画館、ホールを会場として隔年開催されていたが、第4回以降は毎年10月に開催されている。
その後会場は六本木ヒルズ中心に移行、さらに現在は日比谷・有楽町・銀座エリアで開催されるようになった。
スタート当初からトラブルや作品選定への批判も多く、なかなか評価が高まらなかったが、2021年にプログラミング・ディレクターに市山尚三氏が就任して以来、上映作品のラインナップが格段に面白くなったと評価が高まっている。
36回目となる今年、今後の映画祭の統一ミッション「東京から映画の可能性を発信し、多様な世界との交流に貢献する。」を策定、10月23日(月)から11月1日(水)までの10日間にわたり、新作から旧作まで世界各国のさまざまな映画を上映する。
コンペティション部門の審査委員長にはヴィム・ヴェンダース監督が就任。オープニング上映には、ヴェンダース監督が役所広司を主役に起用して日本の公共トイレ清掃員の日々を描いた『PERFECT DAYS』、クロージング上映は山崎貴監督のゴジラ最新作『ゴジラ-1.0』、さらに生誕120年となる小津安二郎監督作品の特集上映など注目点が多い。
ゲイ・バイ男性にとって見逃せないのは、2本の新作ゲイ映画が日本初上映されることだ。
山田太一の小説をゲイ版に
1988年に日本で映画化された山田太一の小説『異人たちとの夏』の舞台を英国ロンドンに、そして主人公をゲイ男性に置き換えた新作映画『異人たち(原題:All of Us Strangers)』が、10月25日(水)にアジア初上映される。
ロンドンの高層マンションで暮らすゲイでうつ病の初期症状にある中年の脚本家アダムは、同じマンションに住む男ハリーと知り合い、肉体関係になっていく。
アダムは、12歳のときに交通事故で亡くなった両親との関係に着想を得て執筆しようとしている脚本が進まず苦闘していた。気まぐれで、自分が育ったクロイドン近郊の古い町並みを見に行くと、そこには生家が当時のまま存在し、そこに生前の姿そのままの両親が暮らしていた。
両親との交流、そしてハリーとの関係、現実と幻想の狭間にいるようなアダムに訪れる結末とは。
ゲイの友情や恋愛を描いたドラマシリーズ『ルッキング/Looking』やゲイ映画『ウィークエンド/Weekend』の監督・製作・脚本を手がけたアンドリュー・ヘイが監督・脚本を担当。
アダムを演じるのは、2013年にカミングアウトした英国人俳優のアンドリュー・スコット。ベネディクト・カンバーバッジ主演のドラマ『SHERLOCK/シャーロック』のモリアーティ役をはじめ、『ルッキング/Looking』『フリーバッグ』や映画『007 スペクター』『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』『1917 命をかけた伝令』など話題作に出演している。
ハリーを演じるポール・メスカルは、2020年のドラマ『ノーマル・ピープル』でブレイク。現在日本でロングラン上映中の映画『aftersun/アフターサン』で第95回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた注目の俳優だ。
8月31日よりコロラド州で開催された『テルライド映画祭』でワールド・プレミア上映が行われた『異人たち』は、批評家から絶賛のコメントを集めている。
★あわせて読みたい!
山田太一『異人たちとの夏』ゲイ映画版リメイクの予告編公開、期待が膨らむ
おっさん同士の”おっさんずラブ”西部劇
5月開催の「第76回カンヌ国際映画祭」で初上映されたペドロ・アルモドバル監督の短編映画『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ(原題:Strange Way of Life)』は、アルモドバル流の『ブロークバック・マウンテン』への答えであると評判になっている。
若き日に雇われガンマンとして働いていたジェイクとシルバ。現在は保安官として働くジェイクを、牧場主となったシルバが訪ねてきて25年ぶりの再会を果たす。シルバが訪ねてきた理由とは、そして2人の関係とは。若き日の2人と現在が交差するミステリアスな展開となりそうだ。
シルバを演じるのは、『マンダロリアン』(ディズニープラス)『THE LAST OF US』(U-NEXT)と近年の主演ドラマが立て続けにヒットしているペドロ・パスカル。ジェイクを演じるのは『ビフォア・サンセット』『6才のボクが、大人になるまで。』のイーサン・ホーク。
Netflix『エリート』にシーズン4から登場したゲイ青年パトリックを演じたマヌ・リオスが出演していることにも注目だ。
『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』は、10月25日(水)と29日(日)の2回上映予定となっている。
★あわせて読みたい!
おっさん同士の”おっさんずラブ”西部劇、想像膨らむ予告編がついに公開
関連イベントとして、三菱地所と東京国際映画祭が10月28日(土)から10月30日(月)に開催する「第1回 丸の内映画祭」では、ゲイをカミングアウトしている橋口亮輔監督の『ハッシュ!』(02’)を初日の10月28日に上映。
付き合い始めて間もないゲイ・カップルが、知り合った奔放な女性に精子提供を持ちかけられるという物語の『ハッシュ!』は、第54回カンヌ国際映画祭監督週間に正式招待され、世界69各国以上の国で公開。国内では文化庁優秀映画大賞をはじめ数々の賞を受賞した名作だ。
話題の新作の国内最速上映や、現在配信では見ることのできない名作の上映など、今年の「第36回東京国際映画祭」はゲイ・バイ男性としても見逃せないものになりそうだ。
「第1回 丸の内映画祭」のチケットは発売中、「第36回東京国際映画祭」のチケットは10月14日(土)発売開始。
「第36回東京国際映画祭」公式サイト
「第1回 丸の内映画祭」特設サイト
映画『異人たち』公式サイト
(冨田格)
★あわせて読みたい!
青年と大人の端境期の魅力が凝縮した新人俳優を誰よりも早く”推し”にする