ゲイ視点で見ると3倍楽しいサブスク配信映画「スパイ・ゲーム」若専な高齢ゲイが語るノンケ落としのテク自慢

Netflix、Amazon Prime、Disney+、Hulu、U-Nextなど、サブスクリプション配信で映画やドラマを楽しめるプラットフォームは増える一方。

そのおかげで、日本で見られる映画やドラマの数は一挙に増加。そんな配信で見られるコンテンツの中から、ゲイ映画ではないはずなのに、ゲイ視点で見ると「ゲイ映画」としか見えない作品を連続紹介する連載コラム。

第二回「スパイ・ゲーム」

スパイゲーム

このコラムの第一回で取り上げた「トップガン」のトニー・スコット監督作品、Hulu、U-NEXT、Watchaでサブスク配信中の「スパイゲーム」をゲイ視点で見直してみる。

目次

・この映画を50文字以内で表してみる
・ネタバレほぼなしの作品解説
・物語
・クレジット
・ネタバレありのゲイ視点感想

この映画を50文字以内で表してみる

スパイゲーム

若専の高齢ゲイがハンサムな若いノンケを落とした手練手管を延々と語り続ける120分強、これ何の映画?(49文字)

ネタバレほぼなしの作品解説

スパイゲーム

全米では2001年11月に公開、日本では翌月12月にお正月映画として公開され、日本での興行収入26億円のスマッシュヒット。

ロバート・レッドフォードとブラッド・ピットという、ハリウッドの新旧二大二枚目スターの共演作ということで大きな話題となった。

1991年「テルマ&ルイーズ」の出演で、一躍セックス・シンボルとしてブレイクしたブラッド・ピットは、「若き日のロバート・レッドフォードの雰囲気を持っている」と評判になる。

80年代には役者から、監督やプロデューサー業に進出したロバート・レッドフォードは、1992年、監督第三作めとなる「リバー・ランズ・スルー・イット」の主役にブラッド・ピットを抜擢。大自然の渓流でフライ・フィッシングをするブラッド・ピットが美しく描き出されたこの作品は、第65回アカデミー賞で撮影賞を受賞。ブラッド・ピットの初期の代表作になった。

そんな2人が約10年の時を経て共演した「スパイ・ゲーム」は、定年を翌日に控えた伝説のCIAエージェントのミュアーが、中国でスパイ容疑で逮捕された若いエージェントのビショップを、長年のCIA勤務で身につけた知恵と人脈をフル活用して救出しようと試みるサスペンス映画。

ミュアーが救出作戦を一人で実行する姿と、ミュアーとビショップの出会いからのエピソードが交互に描かれる。

物語

スパイゲーム

数々の困難な任務を遂行し伝説の存在と化したCIA工作員ネイサン・ミュアー(ロバート・レッドフォード)は、1991年春、あと1日で引退の日を迎えようとしていた。

そんなミュアーに、CIA香港支局長からミュアーの弟子だったトム・ビショップ(ブラッド・ピット)が中国にスパイ容疑で逮捕され、翌朝処刑されるという連絡が入る。

トム・ビショップはミュアーが自らスカウトし、スパイに関するあらゆることを教え育て上げた、もっとも信頼のおける相棒でもあった。

本来ビショップは、米中通商会談の盗聴作戦に従事するはずであったが、許可なく中国人協力者を指揮して自分のための別作戦を実行していた。米中関係の親密化を優先するホワイトハウスの意向で、CIAはビショップを見殺しにしようとする。

それを知ったミュアーは、ビショップ救出のための壮大な作戦を上層部に悟られないよう密かに計画するのだった。

クレジット

スパイゲーム

原題:SPY GAME
監督トニー・スコット
制作:ダグラス・ウィック、マーク・エイブラハム
出演:ロバート・レッドフォード、ブラッド・ピット、ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ、ダニエル・ミンデル、クリスチャン・ワグナー ほか
配給:ユニバーサル・ピクチャーズ(アメリカ)東宝東和(日本)
2001年/アメリカ/127分

U-NEXT:https://onl.bz/W78FAsx
Hulu:https://www.hulu.jp/watch/60024219
WATCHA:https://watcha.com/lp_popular/index.html

【警告】

ここから先は、かなりのネタバレ注意です。

あらかじめご了承ください。

ネタバレありのゲイ視点感想

スパイゲーム

最近の映画ファンにとってのロバート・レッドフォードは、「キャプテン・アメリカ~ウィンター・ソルジャー」に出てきた、シールドの理事のくせに実はヒドラだった悪役の爺さん、くらいのイメージしかもっていないかもしれない。

しかし、待ってほしい。1960年代半ばから80年代にかけてのロバート・レッドフォードは、ハリウッドを代表する正統派の二枚目スターだったのだ。

「裸足で散歩」「明日に向かって撃て!」「スティング」「追憶」「華麗なるギャツビー」「大統領の陰謀」「遠すぎた橋」「ナチュラル」「夜霧のマンハッタン」など、多くの名作、ヒット作に主演してきた。

ところが、80年代半ばごろから、体質なのか、もしくは所有する牧場で無防備に陽に当たりすぎたせいか、実年齢以上に顔のシワが目立つようになり、老化が顕著になってきた。

そんなレッドフォードが、自分の3本目の監督作品「リバー・ランズ・スルー・イット」の主演に、「若き日のレッドフォードのような二枚目」と評判だったブラッド・ピットを起用。

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大自然の中の渓流、フライ・フィッシングの優雅な動き、そしてブラッド・ピットをあまりにも美しく描き出している様に、筆者はロバート・レッドフォードの強烈なナルシシズムを感じた。「ブラピに自分を投影しながら監督しているはずだ」と。

そんなレッドフォードとブラピが、主演俳優同士として共演するこの「スパイ・ゲーム」。監督が、前回「ゲイ視点で見ると3倍楽しいサブスク配信映画『トップガン』戦闘機ファイトは何のメタファー?」でとりあげた「トップガン」のトニー・スコットとあれば、濃密な男同志の関係を描いているだろうと期待するのが当たり前。

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その期待、半分は裏切られるのだが、もう半分は期待以上の濃厚さだった。

裏切られるというのは、「トップガン」のように男の肉体をゲイポルノ並みに見せつけるようなことはまったくなく、絵的には”普通”のスパイアクション、サスペンス映画のようにしか見えないという点。

ところが、キャラクターの精神的には「トップガン」を遥かに超える濃厚なゲイ映画だったのだ。なぜ「ゲイ映画」と感じたのかをここから解説していく。なお、役名で表記すると読んでいて混乱しかねないので、以下、俳優の名前で話を進めていく。

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「スパイ・ゲーム」のキモは、レッドフォードが自分の知識と人脈と密かに溜め込んだ金と退職金を注ぎ込んでCIAに秘密のまま実行するブラピ救出作戦ではなく、レッドフォードが回想するブラピとの出会いから別離までの物語にあるのだ。

ベトナム戦争末期に、ラオスの要人暗殺の任務のために米軍の狙撃手ブラピと出会ったレッドフォードは、その才能を見抜き、CIAにスカウトするべく、老獪な手練手管を駆使していく。

どういう手練手管かというと、ブラピをベトナムから引き上げさせ西ドイツでNATOとの連絡役的な閑職につかせる。周囲に英語が話せる人もいない環境のブラピは、とてつもない孤独に苛まれいわば「静かな絶望状態」に追い込まれる。そこで、偶然の再会を演出。

クリスマスパーティーに誘うと、英語を話すことに飢えていたブラピはほいほいとやってくる。その場でCIAへのスカウトという餌をぶら下げると、その餌にパクリと食いついた。

その翌日からはスパイ(エージェント)になるための技術と精神面での特訓が始まる。これって、これノンケ男を言葉巧みにたらしこんで、SM調教を仕込んでいくような展開だなと思ったら、まさにその通り。

実戦になってからは、飴と鞭を巧みに使いこなすレッドフォードは、ブラピを精神的に支配していき、ご満悦の表情。

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そんな2人の絆が崩壊するベイルートでのエピソードがとにかく濃厚。戦場カメラマンを装い先乗りでベイルート入りしたブラピは、ターゲットに近づくためのつなぎ役として、難民キャンプへの世話をする女性に目をつけるのだが、気づけば男女の関係になりのめり込んでいく。

それと並行してレッドフォードとの関係の変化も描いていくのだが、2人が交わすセリフがなんとも意味深。

たとえばレッドフォードと朝食ミーティングのために部屋にブラピが迎えにいくと、レッドフォードは髭剃りの真っ最中。

ブ「色男を気取る気か?」
レ「君にモテたい」
ブ「じゃ、花束が必要か?」
レ「朝飯で我慢しておこう」

って、ノンケ男同士がこんな会話をするだろうか? そして銃撃の中を必死で移動して到着したレストランでは、朝食を食べながらブラピが

ブ「誕生日だろ」

とスキットルを差し出す。レッドフォードが上物のスコッチ好きなのを知っての、気の利いたプレゼントだ。戦火のベイルートで、よくスキットルが手に入ったな、と驚くレッドフォードに対し

ブ「ディナー作戦さ。スパイがこっそり必要なもの取り寄せる」
レ「ディナー作戦? 覚えておこう」

という会話を交わす。これ、のちのち重要になるセリフ。

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その後、作戦の標的を監視しながら、すでに女性の存在を把握しているレッドフォードが作戦のキーマンとなる人物とどうやって知り合ったのかと話を持ちかける。

ブ「ボランティナの紹介さ」
レ「金髪か?」
ブ「なぜ女だと?」
レ「美人か?」
ブ「ハハ、ただの繋ぎ役さ」
レ「他の役目には?」
ブ「使わない」

ブラピが女性といい仲になったことを把握したうえでのこの会話。二人とも双眼鏡で標的を見ながらの会話なので、視線を合わせないまま微妙な空気感が漂う。レッドフォードが見せる、たらしこんだはずの年下ノンケ男が女性に興味を持ち始めた年上の若専ゲイの焦り、的な感じが実にいい。

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完璧なエージェントだったはずのブラピが、待ち合わせに遅刻したりと弛みが見え始める。そしてブラピを監視するスタッフから、連日彼女と夜を過ごしていると証拠写真を突きつけられた時にレッドフォードが見せる、「幸せ」だと感じていたことが砂上の楼閣のようなもろいものだったと悟ったかの表情がまたいい。

実はこの彼女、過激な活動をする団体に関わっていたことがあり、人権擁護の運動で中国の施設を爆破したところ、無人のはずの施設には中国の首相の甥がいて死亡することに。これによりテロリストと認定され、母国のイギリスにも帰れない状況になっていた。

そこまで調べ上げたレッドフォードは、ブラピと彼女がデートしているレストランに偶然を装って登場、彼女の前で調べ上げたことを暴露する。怒った彼女が出ていった後、ブラピに対して「調べが足りないぞ。彼女を利用する? 逆に利用されているのではないか?」と叱責。

怒ったブラピが「俺の私生活には口をださないでくれ!」と言うと、「いいとも、君の”私生活”には興味がない」と返すレッドフォード。

これは職務上の立場ゆえの行動なのか、それとも痴話喧嘩なのか、と疑ってしまうのは、この件でギクシャクした2人の関係を修復するべく、後日レッドフォードがブラピに切り出すこんなセリフのせい。

レ「一緒に南米で働こう、アルゼンチンへ行って」

こ、これは愛の告白なのか? しかし、レッドフォードから心が離れてしまったブラピはまったく反応しない。

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アクシデントに見舞われた作戦は、バックアップとして用意した義勇兵によって遂行され、予想もしなかった大惨事を引き起こしてしまう。その後、ブラピからチームを解消したいと言われレッドフォードは納得する。

しかし、彼女の存在がCIAにとってもはブラピにとっても安全上のリスクだと考えたレッドフォードは、中国に囚われていたスパイ容疑の米外交官と彼女の交換取引を中国のもちかけて、警備厳重な蘇州の刑務所送りにする。彼女のアパートに、ブラピへの偽の絶縁状を残して。

しかし、ブラピの彼女への愛情は本物であり、居場所をつきとめたうえで勝手な作戦を遂行してスパイ容疑で捕まってしまった。レッドフォードはブラピを助けるべく、全財産をつぎこんで遂行した作戦名が「ディナー作戦」。

米軍の特殊部隊によって救出されたブラピが作戦名を聞き、レッドフォードの深い愛情を知り涙を流すことで終わるので、なんとなくいい映画を見たような気にさせるが、その実、延々と若いノンケを堕とすのが好きな高齢ゲイの手練手管と、恨み節を聞かされたような、なんとも言えない気持ちにさせてくれる一本。

回想場面でも老化を隠せないレッドフォードが、ギリギリ二枚目として存在できた最後の作品としても見る価値がありそうだ。

(冨田格)

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