007を卒業したダニエル・クレイグが魅せるレザー親父のセクシーダンス
ジェームズ・ボンドは、映画界に燦然と輝く偉大なキャラクター。その役に抜擢されることは一躍大スターの仲間入りを約束されることであり、同時にジェームズ・ボンドの強烈な呪縛に囚われることでもある。
ボンド役を卒業したダニエル・クレイグが、鮮やかにその呪縛を脱ぎ捨てた最新CMを紹介する。
60年に渡り6人の俳優が演じてきた
イアン・フレミングのスパイ小説を原作とした、 英国秘密情報部のエージェントであるジェームズ・ボンドの活躍を描く映画「007シリーズ」。その第1作は1962年(昭和37年)に公開された『007は殺しの番号』。
以降、昨年公開の『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』で第25作となり、製作会社の異なるシリーズ外の2作品を加えると、27本の映画が作られてきた。
初代のジェームズ・ボンドを演じたのは、ショーン・コネリー。以降、ジョージ・レーゼンビー、ロジャー・ムーア、ティモシー・ダルトン、ピアーズ・ブロスナン、そして、ダニエル・クレイグが歴代のボンド役を演じてきた。
ボンドを演じてきた俳優は、いずれも世界的な名声を得てスターの仲間入りを果たしたのだが、同時にボンド役以外を演じることの難しさにも直面することになる。それだけジェームズ・ボンドのイメージは観客にとって、また演じる俳優にとっても強烈すぎるのだ。
特に、007が人気シリーズとなる基礎を築いた初代のショーン・コネリーと、マンネリに陥り迷走していた内容大幅に軌道修正して再び人気シリーズとして再生させたダニエル・クレイグには、ボンドのイメージが一際強烈に植え付けられたように思う。
ショーン・コネリーは”かつら”を脱ぎ捨てた
007シリーズを卒業したショーン・コネリーは、ボンドのイメージを守るために装着していた”かつら”を脱ぎ捨てることで、その呪縛から逃れることができた。現在、全国で上映している映画『未来惑星ザルドス』は、ショーン・コネリーはボンドのイメージを脱ぎ捨てた最初の作品といえる。
一方、007を卒業したばかりのダニエル・クレイグは、チャラいパリピのレザー親父になりセクシーに腰を振ってみせることで、ボンドの呪縛を鮮やかに脱ぎ捨てたようだ。
ダニエル・クレイグはスーツを脱ぎ捨てる
ポーランドで生まれた世界初のラグジュアリー・ウォッカ”ベルヴェデール・ウォッカ”のブランド・アンバサダーに就任したダニエル・クレイグ主演のキャンペーン動画が公開された。
『ジョジョ・ラビッド』『ソー:ラブ&サンダー』のタイカ・ワイティティ監督による、きわめて映画的なキャンペーン動画で、ダニエル・クレイグはボンド役を卒業した彼自身を演じてみせた。
冒頭、パリのポンヌフ橋でボンドが天国に召されたかのような白いスーツを纏ったダニエル・クレイグがファンやマスコミのカメラの前を通りロールス・ロイスに乗り込み、反対側のドアから出てきた時はレザーを纏ったパリピなチャラい親父になっている。ファンやマスコミはそんなクレイグに気付こうとしない。
ステップを踏みながらシュヴァル・ブラン・パリ・ホテルに入ったクレイグは、レザージャケットを脱ぎ、タンクトップ姿になり踊りながらプール付きの最上階のスイートルームに入り、さらに踊りまくる。そして、セクシーに腰をくねらせて”ベルヴェデール・ウォッカ”をラックから取り出し、ついに至高の一杯にありつくのだった。
クレイグのダンスは、ビヨンセのコレオグラファーであるジャクエル・ナイトが振り付けた。また音楽は、ワイティティ監督のリアルパートナーの歌手リタ・オラがイギリスのラッパー”ギグス”とともに制作した動画のためのオリジナルトラックだ。
動画のラスト、「カット!」の後にワイティティ監督はクレイグに対し「もう一度、自分らしく」と声をかける。そして、クレイグはカメラに向かって微笑み、ベルヴェデーレ・ウォッカをもう一口飲む、という意味深長な終わり方をする。
シリアスなボンドのイメージを脱ぎ捨て、チャラくて軽妙な遊び人親父を”自分自身”として演じたクレイグの新作は、12月23日よりNetflixで配信が始まる『ナイブズアウト:グラスオニオン』。クレイグが演じるボンドのイメージとはまったく異なる、皮肉屋でどこかコミカルな探偵ブノワ・ブランのシリーズ第二弾だ。
今作では、ブランが男性パートナーと暮らしているゲイだという設定が暗示されるとのこと。
ボンドを卒業した54歳のダニエル・クレイグが、これからどんな幅広い役を演じていくのか期待が膨らむ。
※参考記事:GQ
(冨田格)
★あわせて読みたい!
映画『ナイブズ・アウト』ダニエル・クレイグ演じる名探偵はゲイだった!