【号泣必至】ガテン野郎同士の愛と人生を描いたミュージックビデオが話題
カントリー・ミュージックと炭鉱労働者。同性愛者には居心地がいいとは決して思えない世界で、ゲイ・カップルの切ない物語を描いたミュージック・ビデオが注目を集めている。
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まるで短編映画のような愛の物語
2017年にアルバム『Purgatory(プルガトリー/煉獄)』でブレイクしたカントリー・シンガーのタイラー・チルダーズ(Tyler Childers)が、9月8日にリリースするニューアルバム『Rustin’ In The Rain』から先行シングル『In Your Love』のミュージックビデオを発表した。
このミュージックビデオは、短編映画のようにあるゲイ・カップルの切なすぎる愛と人生を描きだしている。主演は、カミングアウトしている2人の俳優、コルトン・ヘインズとジェームズ・スカリー。
2人が演じるのは1950年代のアパラチア地方で働く炭鉱夫。現場で知り合った2人は、やがて恋に落ちる。周囲には秘密で2人だけの時間を楽しんでいたが、ある時、同僚にキスしているところを見られる。ゲイ嫌いの同僚にスカリーが襲われたことから、2人は炭鉱を辞め町を出ることにする。
のどかな田舎町に越した2人は美しい家を買い、畑を耕し農業をはじめ、友人たちと食事会を開き、夫婦として親密な時間を共有する。しかし、そんな幸せは長く続かなかった。
炭鉱での暮らしゆえかスカリーは呼吸器の病を発症し吐血する。やがて恋人のヘインズの腕の中で息を引き取る。老人となったヘインズが、家のポーチの椅子に座り亡き恋人のことを回想する場面でミュージックビデオは終わる。
カントリーでゲイを描くことのインパクト
『In Your Love』のミュージックビデオは、チルダーズの地元ケンタッキー州で桂冠詩人を務めているサイラス・ハウスが脚本とクリエイティブ・ディレクションを手がけた。米国の地方で育ったゲイであるハウスは、この物語がどれほどインパクトを与えるものかを十分に理解している。
ハウスは、こう語っている。
「カントリー・ミュージックが大好きな10代のゲイだった私は、自分がビデオに登場するなんて想像もできなかった。でも、この可視性はとても重要です。田舎町にも性的少数者は常にひっそりと暮らしている。オープンにできない地方のマイノリティが、ついにカントリー・ミュージックのビデオで描かれるようになるなんて、すごいことです」
なによりすごいのは、ノンケのカントリー・シンガーであるタイラー・チルダーズが、
「長く厳しい戦争だ/でも僕はニヤニヤして耐えることができる/だって僕は何のために戦っているのかわかっているから」
と、マイノリティの気持ちを代弁する歌詞を書き、このミュージックビデオを作ったことだ。
主演の2人はオープンリー・ゲイ
主演のコルトン・ヘインズは、ドラマ『ティーン・ウルフ』や『ARROW/アロー』への出演で知名度を上げ、悩んだ末に2016年にカミングアウト。翌年にはフローリスト(花屋さん)のパートナーと同性婚した。
ジェームズ・スカリーはオフ・ブロードウェイからキャリアをスタートし、様々なドラマや、アウトバック・ステーキハウスのコマーシャルなどに出演。ディズニープラスの映画『ファイアー・アイランド』ではチャーリー役で出演している。
『In Your Love』のような切ない曲から、陽気で男臭いカントリーソングまでタイラー・チルダーズの音楽の幅は広い。興味をもったら、各音楽配信サイトでチルダーズの世界に浸ってほしい。
(冨田格)
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