柔道界史上初の快挙!カミングアウトした柔道家がドイツ選手権で優勝
ドイツから嬉しいニュースが届いた。2020年に公にカミングアウトした男子柔道家ティモ・カベリウスが、2023年1月最終週にシュトゥットガルトで開催されたドイツ国内柔道選手権でクラス優勝を果たのだ。
ドイツ個人選手権で初優勝
ティモ・カベリウスは、現在25歳。2023年1月最終週にドイツ・シュトゥットガルトで開催された柔道のドイツ個人選手権の81kg級で、初優勝した。
対戦相手は、2020年と2021年のドイツチャンピオンであるティム・グラムコウ。2020年から2022年にかけて3回続けて準優勝したカベリウスは、スリリングな戦いのなか試合開始から8分後に決定的なポイントを獲得して、初めての個人選手権優勝を果たした。
カベリウスはOutsportsのインタビューで、今回の優勝と国際的な成功により2024年のパリ・オリンピックへの出場権獲得を目標としていると語った。
チームメイトに告白することの恐怖
カベリウスは2020年に公にカミングアウトしたが、15歳のときから家族や友人にはカミングアウトしており、完全に受け入れられていた。
「ドイツの有名なタブロイド紙は、実は私のセクシュアリティについて大きな記事を書きたかったようです。しかし、私のカミングアウトについて悲しい話やショッキングな話はまったくないので、その話題は取りあげられませんでした」と、2020年のインタビューで語っている。
家族や友人には10代半ばでカミングアウトしたカベリウスだが、柔道家として公にカミングアウトするまでには、そこから7年以上の歳月が必要だった。
ドイツのオンライン雑誌『Bento』に、カベリウスはこう語っている。
「スポーツでは、この話題は長い間タブーでした。メディアでアスリートのカミングアウトに関する怖い話を何度も読んだからだけではありません。私のチームメイトはみんな思春期の少年で、自分の男らしさを証明したいと思っていました。柔道は非常に身体的なスポーツで、お互いに投げ合い、寝技では信じられないほど距離が縮まります。ゲイであることをカミングアウトしたら、誰も自分の練習相手になってもらえないのではないかと不安だったんです」
スポーツ心理学者との対話が転機に
そんな恐れを抱いていたカベリウスの考えを変えるきっかけとなったのは、あるスポーツ心理学者の存在だったという。
「私たちの柔道チームではスポーツ心理学者と一緒に、試合中のストレスを解消するための方法を開発したり、テクニックを学んだりしているんです。その人に初めて自分のセクシュアリティについて話したとき、とても重要な気づきがありました。
私がゲイであることを告げたとき、その人は私をどの方向へ押しやることもなく、選択するのはすべて私なんだと明確にしてくれました。その通りでした、このことにどう対処するかは私自身が決められるのです。カミングアウトすることへの恐怖は、友人や家族と一緒に乗り越えてきました」
そして2020年に、チームメイトとの “公の場 “でカミングアウトしたことは、多かれ少なかれ突発的な反応ゆえだったという。チームのFacebookへの投稿で、「カベリウスがゲイなのでは」という噂を一掃したのだ。「たしかに私はゲイですが、だからといって私が誰であるかは変わりません」と。
「もちろん、チームメイトがどんな反応をするか怖かったです。でも、”調子はどう?”という定番の質問を除けば、みんな冷静に受け止めてくれました」
クローゼットなゲイに伝えたいこと
カベリウスは自分をゲイの活動家だとは思ってなく、自分がすべきことは柔道に打ち込むことだと考えている。しかし、カミングアウトすることを恐れて隠している人たちに伝えたいことはあるそうだ。
「多くの人がカミングアウトすることを恐れているように思います。でも、自分の運命を自分の手で切り開いた瞬間、何も起こらなくなりました。私の信条はとても明確です。”プロスポーツの世界でも、もはや同性愛嫌悪の余地はないのです”」
カベリウスがパリ・オリンピックの出場権を獲得できれば、さらに柔道界史上初の快挙が続くことになる。今後のカベリウスとドイツ柔道界の動向を注視していきたい。
※参考記事:Outsports
(冨田格)
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