世界のゲイを魅了するセクシーなアパレルブランド『Nasty Pig』30年の物語

ニューヨークのアンダーグラウンドなゲイシーンから誕生した小さなブランドが、30年の時を経て世界中のゲイが選ぶブランドへと発展していった。これは、デイヴィッドとフレッドという2人の男たちが作り上げた、ゲイを魅了するアパレルブランドの物語。

始まりは1984年のことだった

Nasty Pig
画像引用元:Nasty Pig

チェルシーの8番街の「マルガリータ・ナイト」で出会った、フレッド(Frederick Kearney)とデイヴィッド(David Lauterstein)。出会った瞬間に二人の心に、運命的な化学反応が生じた。

そして、フレッドはデイヴィッドの初めての恋人となり、デイヴィッドはフレッドの最後の恋人となった。

ファッション関係の仕事をしていた2人が最初に作ったのは、屈折レンズ付きの「re:visionゴーグル」。ナップザックに詰めて、クラブ「サウンド・ファクトリー」のフロアで客に販売し、その利益で布を購入して友達のための服を作っていた。

そんな2人のことは、ファッション業界にじわじわとクチコミで広がっていき、注目を集めるようになっていった。

ブレイクは洗えるラバーの寝具

Nasty Pig
画像引用元:Nasty Pig

1994年のハロウィーンに、2人の愛犬ピギーから名付けたブランド『Nasty Pig(ナスティーピッグ)』を法人化し、クリスマスイブにウォークインクローゼットくらいの小さな店舗をオープンした。

エイズが猛威をふるっていたその当時、今のような治療薬はなく世代を問わず多くのゲイが命を落としていった。当然、ゲイに対して厳しい目が向けられていた。そんな時代だからこそ、フレッドとデイヴィッドはゲイの男たちが自分のセクシュアリティを恥じることなく、身にまとうことができるメンズウェアを作ることを目指したという。

『Nasty Pig』=「淫乱な豚」という、ある種過激で自嘲的でもあるブランド名に、彼らの想いが込められている。

当初、『Nasty Pig』はレザーやラバーなど、ゲイのフェティッシュなカルチャーに対応したスポーツウェアに焦点を当てていた。デイヴィッドによると、「Nasty Pigは、ニューヨークのヒップホップ文化や野球、バスケットボール、クロスフィット、サッカー、総合格闘技、重量挙げなどのスポーツに影響を受けている」そうだ。

最初に大きな注目を集めたのは、洗濯機で洗える『Nasty Pig』ラバーのプレイシーツ(寝具)だ。このアイテムの誕生により、『Nasty Pig』はニューヨークの若いフェティッシュなゲイに選ばれるブランドとなっていく。クローゼットサイズの店舗はすぐに手狭となり、少し大きい店舗に移転した。

Nasty Pig
Nasty Pig プレイシーツ

豚の鼻のブランド・マークはゲイの目印

ブランドが大きくなるにつれ、フェティッシュに特化していた当初のラインアップから、下着やジーンズ、Tシャツ、水着、アクセサリーなどフル・アパレル・ラインに拡大していった。

『Nasty Pig』が目指しているものは、ゲイの「デイ&プレイ」に対応するラインアップであることだ。「デイ」とは、明るい時間帯に普通に着用できるアイテムのこと。そして「プレイ」は、暗闇での性的な状況を盛り上げるセクシーなアイテムだ。

Nasty Pig
「デイ」 画像引用元:Nasty Pig
Nasty Pig
「プレイ」 画像引用元:Nasty Pig

「デイ」を強化し始めた当初は、「アブソルート・ウォッカ」や「メジャーリーグ」などのパロディ・アイテムで話題を集めたが、商標権侵害で訴訟騒ぎになったことで、より独自のデザインでブランドを強化する道を選ぶようになる。

ブランド・アイデンティティを再考し、豚の鼻のブランド・マークを完成させた。このマークは、すぐにユーザー同士の目印となっていき、会話を交わさなくともお互いにゲイだと分かる目印になっていった。『Nasty Pig』ではこれを、 「a private nod in public world(公共の場での私的なうなずき)」と呼んでいる。

Nasty Pig
画像引用元:Nasty Pig

さらに大きな存在へと成長していく

2010年代になり、ますます『Nasty Pig』の躍進は続く。世界中にユーザーが増えていることをふまえ、商品ラインアップとショッピングサイトを拡充。またニューヨークの旗艦店も、より広いスペースへと移転を重ねていく。

さらに映像でのプロモーションにも注力し始め、PV制作を始める。

そして、2014年には初のテレビコマーシャルを制作。FOX(当時)の人気番組「アメリカン・ホラー・ストーリー」でオンエアした。

フェティッシュ色が濃く、アンダーグラウンドのイメージが強かった『Nasty Pig』が、マスメディアの広告スポンサーとなることは、ユーザーであるゲイにとっても誇らしい出来事となった。

コロナ禍を経て、2022年10月28日、『Nasty Pig』は新たな旗艦店をオープンさせる。

デイビッドは新店舗に関して、こう語っている。

新たな旗艦店は、多目的な場所にしたいと私たちは考えました。

クリエイティブチームがコレクションをデザインするためのスタジオ、アート部門がコンテンツを作成するためのスペース、そしてお客様がカーテンの裏側を覗き見られるような、単なる小売店ではなくデザインハウスとして『Nasty Pig』を知ってもらうためのスペースです。

28丁目のアートギャラリーとクリエイティブなエネルギーに満ちたビルにスペースを見つけ、初めて足を踏み入れた時、ここが『Nasty Pig』の次の段階の拠点になると確信しました。

https://instinctmagazine.com/what-made-boyfriends-now-husbands-start-nasty-pig-almost-30-years-ago/
Nasty Pig
画像引用元:Nasty Pig
Nasty Pig
画像引用元:Nasty Pig

『Nasty Pig』の公式サイトでは、日本からは「円」表示で購入しやすくなっている。男性的で、ワイルドで、セクシーな『Nasty Pig』のラインアップに興味を持ったなら、公式サイトを覗いてみてほしい。

『Nasty Pig』:https://store.nastypig.com/

※参考記事:instinct

(冨田格)

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