映画『スター・ウォーズ』の世界に果たしてゲイは存在するのだろうか?
1977年、米国で公開された映画『スター・ウォーズ』は世界中で大ヒット。その後、紆余曲折ありながらも長い年月をかけて、アンソロジー作品も含めて11本の映画が作られてきた。大宇宙をテーマにしたシリーズだけあって、様々な惑星の多様なキャラクターが登場しているのだが、その中にはゲイはいるのだろうか? ルーク・スカイウォーカーを演じたマーク・ハミルの興味深い2つのコメントを紹介しよう。
拡大し続ける『スター・ウォーズ』の世界
2019年末に公開した『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』を最後に、新作映画はまだ公開されていないが、ディズニープラスではドラマシリーズが続々と配信している。
『マンダロリアン』『ボバ・フェット』『オビ=ワン・ケノービ』『キャシアン・アンドー』に続き、年内に『アソーカ』『スケルトン・クルー』も配信スタートの予定だ。
さて、広がり続ける『スター・ウォーズ』の世界だが、今までに同性愛者のキャラクターは登場したのだろうか。
その答えは「イエス」。現時点での最新作『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』のモブ・キャラで女性同士のキスシーンが描かれ、同性愛者の存在は確認されている。
そうなると当然ながらゲイのキャラクターも存在するのでは、という期待が膨らんでしまうもの。
『スター・ウォーズ』の中でも最重要キャラクターの一人であるルーク・スカイウォーカーを演じたマーク・ハミルが、このことについて2つの興味深いコメントを残している。
ルーク・スカイウォーカーはゲイなのか?
2016年、Vanity Fair誌のインタビューを受けた時に、「ルーク・スカイウォーカーがゲイである可能性は?」と聞かれたマーク・ハミルはこう答えた。
「ゲイのファンから多くのファンレターが届くのだけど、中でも『学校でいじめられている』とか『カミングアウトするのが怖い』という人が多いんだ。そして彼らは『ルークはゲイじゃないだろうか』と尋ねてくる。そういう彼らに『ルークがゲイだと思うのなら、もちろんゲイだよ。それを恥じるべきではない。ルークが誰を愛するかよりも、彼がどういう人物であるのかという方が重要だよ』と答えているんだ」
『スター・ウォーズ』の世界では、ルークやオビ=ワンなどジェダイの戦士は誰とも恋愛や性的に結びつかないという誓いを立てる。これは精神的な理由もあるが、愛や欲望の結果、彼らの持つ強大な力が間違った理由で使われる可能性を避けるためだ。
ルーク・スカイウォーカーの物語の前日譚であるエピソード1~3では、ルークの父であるアナキン・スカイウォーカーがパドメ・アミダラと恋に落ち結婚し、彼の心がダークサイドに傾いていき、結果的にダース・ベイダーになるという展開が描かれている。
1977年に公開された『スター・ウォーズ』エピソード4から始まるオリジナル3部作を夢中になって見て育った多くのゲイは、自分のアイデンティティをルークに投影し、彼もゲイなのではないかと推測している人が少なくない。
実際、作中でルークが女性と絡むのは、パニックに陥ったときに後に実の妹であると判明するレイア姫にキスしてしまう場面のみだ。『スター・ウォーズ』の世界でルークが誰かに恋愛感情を抱く場面は一切描かれない。
ルークは、ジェダイの誓いを忠実に守っているキャラクターであるにもかかわらず、マーク・ハミルは、「芸術は主観的であり、解釈の自由がある」ということを教えてくれている。
フィンとポーのキス場面はなぜ消えた
現在の時点で映画最新作であるエピソード9『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』は賛否両論が渦巻く問題作で、現在でもファンの間ではさまざまな議論が収まらずにいる。
その議論のひとつが、企画段階で取り沙汰されたエピソード7からの3部作の男性主要キャラクターであるフィンとポー・ダメロンの同性愛描写を描かないと決定したことへの賛否だ。
ポー・ダメロンを演じた俳優のオスカー・アイザックは、フィンとポーのロマンスがなかったことに失望を表明しSNSでこう発言している。
「とても興味深い、先進的な、いや先進的ですらない、ただ現在的なラブストーリーがあったかもしれないと思う、まだ全く探求されていない何かが。戦争の渦中にいる2人の男が恋に落ちる可能性があったというダイナミックさに興味を持った私は、その方向に少し押し進めようとしたのだが、ディズニーの経営陣はその関係を描くことを受け入れる準備ができていなかったようだ」
オスカー・アイザックの発言を受ける形で、マーク・ハミルはSNSに一編の詩を記した。
「ルークはフィンにもポーにも会ったことがない
だから、彼らが密室で何をしているのか
私は知る由もない…
しかし、愛は愛であることも記しておきたい
あなたのボートを浮かべるものは何でもいいのだから」
ルークのこのツイートには、13万件以上の「いいね!」がついた。
結果的に『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』では、モブ・キャラの女性同士のキスシーンを描いたわけだが、フィンとポー・ダメロンのキスシーンがあればゲイにとってもっとエモーショナルな作品になったことは確実。
エピソード8『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』にはフィンとの間にラブな雰囲気が漂うアジア系の女性整備士ローズ・ティコというキャラクターが登場した。ところが『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』では二人の関係に進展がなかったどころか、ローズ・ティコが冒頭に僅かに登場する場面でフィンがあまりにも素っ気ない態度をとったことが話題となった。
これは、企画段階でポー・ダメロンとの関係を描くことを想定していたゆえの描写だったのかもしれない。
英国ロンドンで開催した公式ファンイベント「スター・ウォーズ セレブレーション ヨーロッパ 2023」で、すでに発表している1本の新作映画に加えて3本の新作映画の企画を発表した。もしかすると、それらの作品の中にゲイのキャラクターが登場するかもしれない。
そんな期待もしながら、映画にドラマにと拡大し続ける『スター・ウォーズ』の世界を楽しみたい。
(冨田格)
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