ゲイの孤独と向き合う切なすぎる名作誕生。映画『異人たち』特別映像公開

4月19日より全国公開される映画『異人たち』は、誰かを愛し受け入れることができない孤独な中年のゲイが、子供の頃に亡くなったはずの両親と再会するという不思議な体験を通じて成長していくという物語。すべてのゲイが共感できるポイントが詰まったこの春必見のゲイ映画の特別映像が公開された。

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『異人たちとの夏』とは

映画『異人たち』All of us strangers
映画『異人たち』原題:All of us strangers © 2023 20th Century Studios All Rights Reserved.

1987年に、脚本家の山田太一が発表した小説が、ある夏に中年男性が遭遇した奇妙な物語を描いた『異人たちとの夏』だ。

東京の都心のマンションでひとり暮らしをしている中年の男性脚本家は、同じマンションに住む謎の女性と知り合ったことをきっかけに、ふと、子供の頃に亡くなった両親と暮らしていた街・浅草を訪ねる。

するとそこは時が止まったように、亡くなった当時のまま、つまり今の主人公と同年代の両親が生活していた。あまりにも奇妙な出来事にも関わらず、両親に甘えることが嬉しくて主人公が浅草に足繁く通うようになる。

同時に謎の女性とも深い仲になっていくのだが、いつしか男の体は衰弱し始めていた。

両親が住む懐かしい昭和中期の下町・浅草の風景と、バブルが始まる頃の東京都心の街という全く異なる2つの背景を舞台に進行する物語は、両親と再会するという心温まる面と、謎の女性との関わりや男の体に生じる異変という不穏な面が融合した、ある種独特な印象を与える。

1988年には、この小説を市川森一が脚本化し大林宣彦が監督した映画『異人たちとの夏』が公開。主人公を風間杜夫、謎の女性を名取裕子、両親を片岡鶴太郎と秋吉久美子が演じた。

ゲイ男性が主人公の映画『異人たち』

映画『異人たち』All of us strangers
映画『異人たち』原題:All of us strangers © 2023 20th Century Studios All Rights Reserved.

原作小説が日本で発表されてから36年の時を経て、リメイク映画が制作されることになった。舞台を東京からロンドンへ、そして主人公の男性をゲイに置き換えたのが4月19日より全国公開される映画『異人たち』だ。

物語の骨子は『異人たちとの夏』をしっかり踏襲しているのだが、映画『異人たち』の注目すべき点はゲイの中年男性が抱える孤独に焦点をあてたことだ。

心にぽっかりと空いた「穴」を抱えながらも、その「穴」の正体に目を向けようとしないまま歳を重ねてきたゲイ男性だが、同じマンションに住む男性と知り合ったこと、そして亡くなったはずの両親となぜだか再会したことをきっかけに、自分が孤独を感じ続けてきた理由と向き合っていく。

映画『異人たち』All of us strangers
映画『異人たち』原題:All of us strangers © 2023 20th Century Studios All Rights Reserved.

米国のサーチライト・ピクチャーズと、英国のフィルム4、ブループリント・ピクチャーズが制作した『異人たち』は、ゲイの友情や恋愛を描いたドラマシリーズ『ルッキング/Looking』や、各国の映画祭で話題となったゲイ映画『ウィークエンド/Weekend』の監督・製作・脚本を手がけたアンドリュー・ヘイが監督・脚本を担当。

主役のゲイ男性・アダムを演じるのは、2013年にカミングアウトした英国人俳優のアンドリュー・スコット。

ベネディクト・カンバーバッジ主演のドラマ『SHERLOCK/シャーロック』のモリアーティ役をはじめ、『ルッキング/Looking』『フリーバッグ』や映画『007 スペクター』『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』『1917 命をかけた伝令』など話題作に出演している。

また4月4日よりNetflixで世界配信がスタートするアンドリュー・スコット主演ドラマ『リプリー』にも注目が集まっている。

映画『異人たち』All of us strangers
映画『異人たち』原題:All of us strangers © 2023 20th Century Studios All Rights Reserved.

アダムと同じマンションに住む謎の男ハリーは、ポール・メスカルが演じる。アイルランド出身のメスカルは2020年のドラマ『ノーマル・ピープル』でブレイク。映画『aftersun/アフターサン』で第95回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた注目の俳優だ。

アダムの母を演じるクレア・フォイは、Netflix『ザ・クラウン』でエリザベス2世の若年期を演じて話題を集めた。アダムの父を演じるジェイミー・ベルは2000年の映画『リトル・ダンサー』の主役に抜擢され、以降様々な作品で活躍している。

2023年秋より、世界各国の国際映画祭で上映され絶賛されてきた『異人たち』が、いよいよ4月19日より日本での上映がスタートする。公開を前に発表された特別映像をご覧いただこう。

ゲイの孤独と家族との関わり、誰かを愛することの困難さとそれでしか得られない幸せ。心を締め付けられるような切なさと共に、一縷の望みを感じさせるラストが胸を撃つ、すべてのゲイ男性必見の映画『異人たち』。

ジオ倶楽部では、公開に向けてさらなる情報を紹介していく予定だ。

映画『異人たち』公式サイト

(冨田格)

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