【ゲイカースト】それはもちろん存在するが絶望するのはまだ早い
「モテ」が基準のゲイ社会では、たしかにヒエラルキーは存在する。しかし、そのヒエラルキーは流動的な面もあるので、目先の『ゲイカースト』に絶望するのはまだ早い。「ゲイに捨てるモノはない」という言い伝えから、その理由を考える。
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『ゲイカースト』はたしかに存在する
8月後半、ゲイ・バイ男性のX(旧ツィッター)のタイムラインに『ゲイカースト』という単語が飛び交った。これはゲイにおける「モテのヒエラルキー」を図にしたものが、ゲイ・バイ男性の間でバズり話題を呼んだのだ。
『ゲイカースト』という言葉には複雑な感情を抱く人が少なくないようで、賛否両論の様々な意見や感想がポストされていった。
実際のところ『ゲイカースト』なるものは存在するのだろうか。
昭和の終わりから日本のゲイ社会を40年間見てきた筆者の実感としては、たしかに『ゲイカースト』は存在している。しかし同時に、『ゲイカースト』は決して固定化されたものではなく、徒に絶望する必要もないと考えている。
ゲイに捨てるモノはない
Xでバズった『ゲイカースト』の図は、GOGOやマッチョがヒエラルキーのトップに君臨している。この図を見た時に思ったのは、この人はゲイの世界を俯瞰しているのではなく自分の半径3メートルくらいの感覚で作成したのだろう、ということだ。
昭和の頃から「ゲイに捨てるモノはない」という言い伝えがある。他にも「二丁目に捨てるモノはない」など類似の言い伝えが残されている。
これはある意味、とても正しい。
ゲイ・バイ男性が好む男のタイプはとても幅広く、そして細分化している。女性が好むいわゆる「イケメン」ばかりがモテるわけではなく、むしろ女性が嫌悪するようなタイプを好む人たちも少なくない。
たとえば、「老け・チビ・デブ・ハゲ・汚れ(不潔)・オタク」などが好みのカテゴリーとして成立するのがゲイの世界なのだ。
細分化したカテゴリーの存在
「ゲイに捨てるモノはない」という言い伝えが、ある意味とても正しいのは、細分化したカテゴリーが存在しているからだ。
『ゲイカースト』では自分が下の方に位置していると感じている人は、自分の好みを優先して属するカテゴリーを選んでいないだろうか。自分の好みではなく、自分が好まれるカテゴリーに属してみればヒエラルキーの位置付けが一気に変わることを実感するだろう。
俗な言い方なら「ショバを変えてみる」、美しい言い方なら「愛するより、愛されることを優先する」ということだ。
どんなに自分が好きなタイプが揃っているカテゴリーに属していても、好みのタイプに相手にされずヒエラルキーの下層にいる事実を突きつけられ続けることは、まったく幸せではない。
自分が好まれるカテゴリーに属する方が、モテる実感を得られたり、交際相手を見つける可能性も高くなることは確実だ。
とはいえ、細分化されたカテゴリーの中にも、それぞれヒエラルキーは存在するのもまた事実だ。
自分の努力でカースト上位に
自分が好まれるカテゴリーを見つけて属しても、そこでもまた『ゲイカースト』で苦しめられるのか、と絶望するのはまだ早い。
ヒエラルキーは決して固定化されたものではなく、自分の努力や年月によって変わっていく可能性が大きいということだ。
自分の努力の例をあげよう。
「筋トレをする」「太る」「痩せる」「清潔にする」「ワイルドになる」「髪を短くする」「髪を伸ばす」「日焼けする」「日焼けしない」「洋服の好みを変える」「下着の種類を変える」「髭を伸ばす」「髭を剃る」「VIOをトリミングする・しない」「コンタクトにする」「メガネをかける」
属するカテゴリーでカースト上位にいると感じる人を参考に努力すれば、自分を変えていくことは決して困難ではない。
年月が男を大人に変えていく
自分の努力ではなく、年月によってヒエラルキーの位置が変わっていく場合もある。
たとえば若い頃は特に目立つこともなく「その他大勢」の一人という印象だった人が、10数年ぶりに再会するとなんとも言えない色気を放っていることがある。
仕事やプライベートの経験を積み重ねたことで自信がついたのか、蛹から見事に脱皮した蝶のごとく大人の男の魅力に溢れている。
「若さ」の魅力だけがカースト上位というカテゴリーに属しているなら親父ゲイはカースト下位だろうが、「大人の男」がカースト上位にくるカテゴリーはいくらでも見つかる。
若い時代に『ゲイカースト』で苦しめられている人も、年月とともにその悔しさを見返すことだってできるかもしれないのだ。
ということで結論。
たしかに『ゲイカースト』は存在している。しかし『ゲイカースト』は決して固定化されたものではなく、自分の努力や年月によって変化する流動性がある。それゆえ現在『ゲイカースト』で苦しんでいたとしても徒に絶望する必要はない。
では最後に読者のみなさんは『ゲイカースト』の存在をどう考えているのか尋ねてみよう。
(冨田格)
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