「HIVは怖い病気じゃなくなった」からもう平気って、それホント?
最近ではいつHIV検査を受けた?
コロナ禍もあって、ここ数年「HIV」に関する情報に触れる機会がめっきり減ってきているように感じる。しかし、新型コロナウィルスが消えてなくならないのと同じく、HIVが消えてしまったわけではない。
話題に上らなくなったから、もう心配いらない、というわけではないことを、ゲイは特に意識しておきたい。特にゲイの老後にも大きく関わってくる問題なのだから。
投薬でコントロールできるようになった
「U=U」という言葉を耳にしたことがあるだろうか?
効果的なHIV療法を受けて、血液中のHIVの量が検出限界値未満(Undetectable)のレベルに継続的に低く抑えられているHIV陽性者からは、性行為によって他の人にHIVが感染することはもはやありません(Untransmittable)。
引用元:https://hiv-uujapan.org/
これは、20世紀終わりの頃のように、HIV/エイズが「死」につながるものではなく、正しい投薬を続けることでコントロールできるものへと変わってきたことを意味している。
「U=U」の認識が広まってきたことで、「HIVは怖い病気ではなくなった」というイメージを抱く人が増えてきたことが、「HIV」の情報に触れる機会が減ってきた理由のひとつかもしれない。
たしかに、医療によってコントロールできるのだから「怖い病気ではなくなった」というのは、ある面では事実だ。しかし、それは自分が陽性か陰性かを把握していて、陽性の場合はなるべく早く医療とアクセスできている場合に限られる。
「HIV」への恐怖感が薄れたことで、検査もしないままリスキーな性行為を繰り返していれば自分では気づかないうちに発症してしまう恐れだってある。
だからこそ、HIVは甘く見てはいけない。ここで基礎的なことから、あらためておさえておきたい。
HIVに関する基礎の基礎
「HIV」はウイルスの名前であって、HIV陽性の人が発症する病気の名前が「AIDS(エイズ)」。
「HIV感染症」は、その時間経過にもとづいて、大きく次の3つのステージに分けられる。
「急性感染期」
「無症候期」
「AIDS発症期」
「無症候期」は、数年〜10年以上も続く人もいるが、感染から短期間のうちにエイズを発症する人もいる。
「無症候期」に個人差があることに関して、おさえておきたいのが「いきなりエイズ」だ。
「いきなりエイズ」とは、自分がHIVに感染していることに気づかずに、エイズを発症してから初めて感染に気づくことをいう。
30代以上だと「無症候期」を5~10年くらいと認識している人が多いと思われる。しかし最近は、事情がちょっと異なってきている。HIV感染からエイズ発症まで1年程度と、短期間でエイズ発症をするケースが増えてきているのだ。
エイズ発症する前に医療にアクセスして正しい投薬を始めてコントロールをするのと、陽性であることに気づかないまま発症して治療から始めるのでは、肉体的にも精神的にも、あと入院する必要が生じたら仕事にも支障をきたして経済的にも大きなダメージを受けることになる。
▼参照記事 あおぞらクリニック「いきなりエイズ」
https://www.aozoracl.com/suddenly_aids
知っておきたい「エイズと老後」問題
基本的にHIVやエイズに感染した男性は、老人ホームへ入居する時に不利に働く。理由はこれだけ高齢者が多い世の中では、あえてHIVやエイズなどの病気を抱えている高齢者を入居させなくとも、他にも入居希望者はたくさんいるからだ。
また、施設職員が感染症対策をしなくてはならないため、大幅にリソースを割かれることも要因の一つだ。「入居要相談」と掲げている施設もあるが、そのほとんどは不可に等しいのが現状である。
また、治療薬の副作用で、認知症発症率を高める傾向にあるとの研究もある。
「HIVは怖くなくなった」と甘く見て、検査もしないままリスキーな性行為を繰り返していると、老後に大変な状況になるかもしれないということは理解できただろうか?
「無症候期」が短くなっている傾向もある現在、HIV検査をしないリスクは年々高まっている。エイズの根本治療は、いまだ確立されていないということを忘れてはならない。
健康のため、老後のためにやれること
健康のためにも、また老後の苦労を少しでも軽減するためにも、HIVを甘く見ることなく、きちんと向き合っておきたい。
やるべきことは2つ。
まずは、「セーファーセックス」をすること。アナルセックスの際は、コンドームを使用することを徹底したい。
もうひとつは「定期的にHIV検査を受けること」だ。もし陽性であることがわかっても、「無症候期」の間に医療にアクセスして正しい投薬を始めれることができる。
この2つのことを徹底して、可能な限り健康な状態を保って高齢期を迎えられるようにしたいものだ。
「定期的にHIV検査を受けること」を実践するためには、どこで検査を受けられるのかを把握しておくことが必要だ。一例として、気軽に受検査を受けることができる上野・浅草付近の検査所を紹介しよう。
■台東区保健所
所在地:東京都台東区東上野4-22-8
アクセス:JR上野駅、東京メトロ上野駅 徒歩7分
TEL:03-3843-5751
検査実施日時:第2、4水曜日(年末年始、祝祭日を除く)3部制
検査予約:予約不要 ※要電話 03-3843-5751
検査料:無料
名前の申告:不要(匿名)
所要時間:60〜120分
結果日:即日検査(判定保留の場合は概ね2週間後)
他の性感染症検査:梅毒(要確認検査の場合は紹介状発行)
■墨田区保健所 本所保健センター
所在地:東京都墨田区東駒形1-6-4
アクセス:東京メトロ銀座線・都営浅草線 浅草駅徒歩6分 東武伊勢崎線浅草駅 徒歩15分
TEL:03-5608-6191
検査実施日時:原則毎月 第1木曜日※12月は第1水曜日、即日検査
検査予約:予
約不要
検査料:無料名前の申告:不要(匿名)
所要時間:60〜120分
結果日:2週間後
他の性感染症検査:梅毒
全国各地の検査所は、こちらのサイトでまとめられているので、行きやすい検査所をチェックしておこう。
HIVマップ すぐに役立つHIVの情報サイト
https://hiv-map.net/
HIVに感染しているかいないかで、個々の老後問題は大きく異なることを覚えていてほしい。そして万が一、感染していることが分かった場合は適切な治療を受け、老後の準備を見直してみよう。
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