【ゲイが考える親の介護と自分の老後 その2】近い将来「在宅介護」の自己負担が倍になる可能性

介護保険という制度は、高齢者にとっても、また高齢の親を介護する家族にとっても、非常にありがたい存在だ。しかし、超高齢社会となっている日本では、介護に関わる国の予算は増加する一方。今の状態をいつまで維持し続けられるのか、不安を抱く人は少なくないだろう。

今後、介護保険がどのように変わっていくのかに関して気になる記事を発見した。親の介護をしている人や、これから親の介護と向き合わねばならない人、または高齢のパートナーの在宅介護を覚悟している独身ゲイの人たちにシェアする。

介護保険のありがたさを知る

私は2021年までの約5年間、同居している母の在宅介護を経験した。老化とともに元気がなくなりつつも、家事もそこそここなしてくれていた母がいきなり入院して、そこから介護生活が始まった。

入院時に様々な書類を記入せねばならないのだが、そのときに尋ねられたのが「退院後のケアに関して、当院のソーシャルワーカーとお母様のケアマネージャーで打ち合わせをします。ケアマネージャーの連絡先を記入してください」ということだった。

突然入院するまでは家事もこなしていたわけで、介護認定する受けたことがなく、担当してくれるケアマネージャーがいるはずもない。私自身、介護保険や在宅介護に関する知識もまったくなかったので、大きな不安に襲われ、正直、途方にくれてしまった。

そこでまずは市役所に連絡して状況を相談したところ、住んでいる地区の「地域包括支援センター」を紹介された。初めてその存在を知った「地域包括支援センター」は、家から徒歩5分の近所にあった。

「地域包括支援センター」で相談すると、ケアマネージャーの所属する会社を紹介してくれて、そこで初めて担当してくれるケアマネージャーが決まった。

ケアマネージャーからは介護保険認定やどうやって認定を受けるのかなど、私がまったく分かっていなかったことを詳しく教わる。また病院で母と面談してもらい、介護認定が下りるであろうことを前提に、退院後に家で過ごすための環境をどう整えるのか検討して「ケアプラン」を作成してくれた。

当初の「ケアプラン」で提案してくれたのが、母が家の中で一人で動くために必要な介護用品のレンタルだった。まずは、電動で角度をつけられる介護ベッド、それから、ベッドからトイレ、ダイニングに移動する導線に据え置き型の手すりを設置、洗面所と廊下の段差のあるところに突っ張り形式のポールを設置、トイレ内に手すりを設置、することだった。

さらに、リハビリのために近所のデイサービスに週三回通うことも提案してくれた。

介護認定は、高齢者の状態にあわせ7段階に分かれている。軽い方から、「要支援1、2」「要介護1~5」だ。介護認定の段階によって、どれだけの介護サービスが利用できるのか変わってくる。軽い方から重度な方になるにつれ、使用できるポイントが増えると考えると分かりやすい。

その時点では、母は認定を受ける前だったので、ケアマネージャーの見解では「要介護1」の認定がおりると思うが、ひとまず「要支援2」の範囲内でサービスを組んでくれた。

担当してくれるケアマネージャーが決まり、介護保険で使えるサービスにどのようなものがあるのかを理解したことで、途方にくれていた私の不安はかなり解消された。これなら在宅介護ができそうだ、という自信すら湧いてきたのだ。

その後、母は何度か入院をして、そのたびに介護度が上がっていったので、利用するサービスも増えていった。たとえば「入浴介助サービス」「訪問リハビリ」なども受けることで、なんとか約5年間の在宅介護をやりきることができた。

介護保険のシステムは本当にありがたいものなのだが、今まで通りであり続けることはどうも難しいようだ。

利用者の負担が倍増する改革案

介護保険自己負担増

介護福祉ライターの宮下公美子氏が5月1日にyahooニュースでこのような記事を公開した。

「軽度要介護者の介護保険はずし。利用者負担の原則2割化。財務省が繰り返し提案する介護保険改革案」

宮下氏によると、

介護保険が始まった2000年度、介護保険の総費用(介護給付費+利用者負担額)は3.6兆円だった。それが2018年度には10兆円を超え、2021年度には12.8兆円と過去最高を更新した。

65歳以上が支払う介護保険料も、第1期(2000-2012年)には全国平均で2911円だったが、第7期(2018-2020年度)には5869円、第8期(2021-2023年度)には6014円と倍増している。

総費用が約4倍に増大しているのに制度はそのまま、というのはやはり無理がある。

2022年度の国家予算では、社会保障費は約36兆円で一般歳出の約54%を占める。増え続ける総費用をそのままに、ない袖を振り続けることはできない。」

https://news.yahoo.co.jp/byline/miyashitakumiko/20220501-00293355

ということから財務省財政制度等審議会財政制度分科会では、この4月に「効率化」を強く訴える介護保険制度改革案が示された、という。

そこで示された改革案には

・利用者負担の見直し
・ケアマネジメントの利用者負担の導入等
・軽度者へのサービスの地域支援事業への移行等
・業務の効率化と経営の大規模化・協働化

が挙げられている。詳細は宮下氏の記事を読んでほしいのだが、在宅介護を担当する人にとって特に重要なことは上の2つ「利用者負担の見直し」と「ケアマネジメントの利用者負担の導入等」だ。

介護保険も健康保険と同じく、一部は自己負担となる。現在の自己負担割合は1割だが、この改革案では2割にするとなっている。利用する側にとっては、負担額が倍になるということだ。

また現在は自己負担がないケアマネージャーによる「ケアプラン」作成費用が有料になるというのだ。

反発も多い改革案がいつから導入されるのかは分からないが、国の予算には限りがあるわけで、いつまでも今のままではいられないという覚悟を決めておく必要はありそうだ。

民間の保険を活用する案もある

介護保険自己負担増

在宅介護するにしても、施設へ入所させるにしても、かかる費用の問題から目を背けるわけにいかない。満足のいく介護をするためには、相応の費用がかかることを覚悟して、準備しておく必要がある。

財テクや資産運用で十分な預貯金を用意することができる人は問題がないが、誰もがやれることではない。

ここまで読んできて不安に押しつぶされそうな気持ちになった人は、介護に向けての民間の保険を活用することも考えてみてもよさそうだ。

介護保険自己負担増

「介護その時に」:https://www.asmo-ssi.co.jp/product_apply/webentry.php?p1=1&p2=0&p3=0&p4=5176&kaigo=1
(アライアンサーズ株式会社取扱い:03-6260-8637)

より詳しく親や高齢のパートナーが介護認定を受ける前なら加入できる民間の保険に関しては、下記記事で解説している。

ゲイが考える親の介護と自分の老後 その1「健康でいる間が準備のラストチャンス」

知らないことに対しては徒に不安ばかりが膨らんでしまうのは当然のこと。いざという時に途方にくれてしまわないよう、「介護」の現実に直面する前に、必要な情報を入手して準備できることは進めておきたい。

これは、母の介護に直面して、知識も準備もないゆえに途方にくれてしまった私の実感でもある。

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(冨田格)

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