【僕らのメディカル】ゲイ・バイはノンケより「肛門がん」のリスクが高い
ヒトパピローマウイルス(HPV)といえば、女性の子宮頸がんの原因だと知っている人は多いはず。でも、ゲイ・バイ男性にとっては「肛門がん」の原因となっていることも、おさえておきたい。「肛門がん」の最新情報と自己検診の調査結果を紹介する。
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HPVウィルスの基礎知識
ヒトパピローマウイルス(HPV)という名前を聞いたことがあるだろうか。
厚生労働省のサイトには、「ヒトパピローマウイルス(HPV)は、性経験のある女性であれば50%以上が生涯で一度は感染するとされている一般的なウィルス」と記されている。
そして、このウィルスに感染することで、『子宮頸がん』『肛門がん』『膣がん』や『尖圭コンジローマ』等の病気が引き起こされるという。
そのため、性経験のない若年層のうちにワクチン接種が有効とされている。現在、小学6年から高校1年の女子生徒へのワクチン接種が推奨されている。
若年層男子へのHPVワクチン接種
同時に、同年代の男子生徒へのワクチン接種も進めるべきという声もある。
これは、男性が感染予防をすることで、性交渉によるHPV感染から女性を守るためだと筆者は思い込んでいた。
しかし、そうではなかった。HPVは、男性にとっても『中咽頭がん』『肛門がん』『尖圭コンジローマ』などの原因となるというのだ。
経験を積んでいる大人のゲイ・バイ男性ならば、他人事ではない身近な問題だと気づくだろう。
自己検診は有効かという研究
実のところ、ゲイ男性の肛門がん罹患率はノンケ男性よりも高い。
主な原因は、ゲイ男性が人生の早い段階でHPVが原因である『尖圭コンジローマ(肛門いぼ)』を発症しやすいことだ。HIV陽性であることと喫煙は、さらなる危険因子である。
米国ウィスコンシン、シカゴ、ヒューストンを拠点とする科学者たちは、『肛門がん』のリスクの高いグループが自己検診をすることで、早期発見につながるのかという調査研究を実施。
この「肛門癌を予防するための触診」研究結果は、最近『Lancet』誌で発表された。2020年から2022年にかけて、ヒューストンとシカゴのゲイ・バイ男性など714人が研究に参加した。
自己検診が有効だという結果が得られた
ほとんどの『肛門がん』は、腫瘍性のしこりが平均3cm以上の大きさになるまで発見されない。その結果、より侵襲的な治療が必要となることがある。
『肛門がん』においても、早期発見が治療に有効であるのは言うまでもない。そこで研究者たちは、自己検診は小さな異常の発見に役立つのか、という点を調査した。
研究の参加者は、まずは臨床医による診察を受ける。その後、肛門周辺の自己検診方法について15分間の説明を聞き、実践する。
その結果、参加者の34%に異常が見つかった。発見された「しこり」の約90%は、痔核などであり『肛門がん』につながるものではなかった。
しかし、約12人に「疑わしいしこりや肥厚」が見つかり、モニタリングやさらなる調査が必要とっされた。
これは、臨床医が異常を発見したケースの59%である。『肛門がん』のリスクが高い人は、しこりがないか自分でチェックするように勧めるべきだと研究者らが言うには十分な結果が得られた。
まずは医療機関で検査を受けよう
もちろん、自己検診は専門家による十分かつ適切な検診の代わりにはならない。
とはいえ、現状では『肛門がん検診』は普及しておらず、身近なものとは言えない。また、『肛門がん検診』を受けることを恥ずかしいと思う人も少なくなさそうだ。そのため、深刻な異常が認められた場合にしか、病院での検査を受けない人も多そうだ。
自己検診の方法が広く認知されることは、『肛門がん』リスクが高いゲイ・バイ男性にとってはプラスだ。
腫瘍の大きさが1cm以下のときに発見されれば、治療は100%成功することが多い。早期発見・早期治療で『肛門がん』のリスクを大きく減らすことができる。
ジオ倶楽部では、『肛門がん』の自己検診に関する最新の情報に今後も注目していく予定だ。ゲイ・バイ男性で『肛門がん』や『中咽頭がん』が気になる人は、一度病院で検査をしてもらうのもいいかもしれない。
最後に読者に『尖圭コンジローマ(肛門いぼ)』について質問してみよう。
(冨田格)
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