ブレンダン・フレイザー受賞記念・ゲイを演じた10人の愛すべきノンケ俳優
「ゲイの役はゲイが演じるべきだ」という流れもあり、ハリウッドではカミングアウトしている俳優がゲイ役を演じる機会が増えている。しかし『ザ・ホエール』の演技でオスカーを受賞したブレンダン・フレイザーのように、ノンケ俳優が演じたゲイ役が印象に残る場合もある。
★あわせて読みたい!
【ハリウッド】ホットでイケてるカミングアウト俳優ランキングTOP10
印象深いゲイを演じたノンケ俳優
ゲイの俳優がゲイ役を演じると、あきらかに説得力がある。最近の欧米の映画やドラマでは、カミングアウトしている俳優が増えたために、ゲイがゲイを演じるという傾向は顕著になってきた。
では、ノンケがゲイを演じると説得力がないかといえば、そうとも言い切れない。先日発表になった第95回アカデミー賞で主演男優賞を受賞したブレンダン・フレイザーは、『ザ・ホエール』で巨漢ゲイ役を演じたことが高く評価された。
他にも、ノンケ俳優がゲイを見事に演じた例は数多くある。その中から、特に印象に残る10人の「ゲイを演じたノンケ俳優」を紹介する。
コリン・ファース/ゲイ役で輝くノンケ
1984年『アナザー・カントリー』2008年『マンマ・ミーア!』2009年『シングルマン』、そして2020年『スーパーノヴァ』と、キャリアの要所要所でゲイ役を演じ、いずれも高評価を得ている。
トム・フォードの監督デビュー作『シングルマン』では、同性パートナーを失ったとてつもない喪失感と同時に、若い男を見るとつい心がときめいてしまう中年ゲイの哀しい性を見事に演じた。ゲイ役に限らず評価の高い俳優だが、ゲイを演じるとさらに輝いて見える珍しい存在。
ゲイという設定なのか明らかにはされていない『キングスマン』でのハリー・ハート役も、ゲイ的気配が濃厚に漂って見えるのは意図した演出なのか、コリン・ファースが演じているせいなのか。
ガエル・ガルシア・ベルナル
新作映画『カサンドロ(Cassandro)』で、伝説的なゲイのルチャリブレ・レスラーを演じるベルナルは、メキシコ生まれのイケメン俳優。
2001年の『天国の口、終わりの楽園』では親友と共に年上の女性と3人での性的交渉の場面を演じた。2004年にはペドロ・アルモドバル監督の映画『バッド・エデュケーション』で主演のゲイの役を演じた。
ジェイク・ギレンホール
2005年の『ブロークバック・マウンテン』で演じたゲイのカウボーイ役は、あまりにも鮮烈な印象を残した。ジャックを演じられたのは彼だけだろうと思わせるほどの、説得力ある演技を見せた。
大作映画から小さな作品まで、さまざまな役をこなせる演技派のギレンホールは、2019年のNetflix映画『ベルベット・バズソー: 血塗られたギャラリー』で風変わりなクィア美術評論家を演じた。現在準備中の、製作と主演を務めるミュージカル『ファン・ホーム』の映画化でゲイの父親役を演じる予定となっている。
スタンリー・トゥッチ
2006年『プラダを着た悪魔』のゲイのファッション・ライター役で強烈な印象を残したスタンリー・トゥッチは、他にもさまざまなゲイの役を演じてきた。
1996年の『デイトリッパー』や2014年の『ヴェルサイユの宮廷庭師』といった小品から、『プラダを着た悪魔』や2010年の『バーレスク』などの大作映画でも。
コリン・ファースと共演した2020年の『スーパーノヴァ』では、認知症がはじまりだした高齢ゲイの役を演じ、印象に残る。
ジェレミー・アーヴァイン
2015年の『ストーンウォール』でゲイの青年役で主演。実際に起きた「ストーンウォールの叛乱」をベースにした作品ながら、アーヴァイン演じる架空の白人ゲイを主役にたことで史実を捻じ曲げた作品として評価も興行成績も最悪に終わる。
しかしイケメンでマッチョなアーヴァインは着実にキャリアを重ね、2021年の映画『ベネディクション(Benediction)』で性に奔放なゲイの役を演じた。
映画『ボーン』シリーズのスピンオフ・ドラマである2019年の『トレッドストーン』では、やたらと全裸に剥かれ飴とムチで殺人マシーンへと洗脳されていく描写がたっぷりで、ゲイにとっての眼福な存在となった。
マット・デイモン
1999年の『リプリー』では、裕福な家系の青年に邪な願望を抱きつつも、精神的に残酷に傷つけられていくゲイ役を演じた。アクシデントから青年を殺害してしまい、自分が裕福な青年にすり替わっていくという、繊細かつ複雑で、ある種サイコな面を持つゲイ役を見事に演じた。
2013年のスティーブン・ソダーバーグ監督の『恋するリベラーチェ』では、派手なコスチュームプレイで大衆の人気を博し「世界が恋したピアニスト」と称されたリベラーチェの同性の恋人役を演じた。整形とドラッグに溺れお互いに深く傷つけあうという、見る方が息苦しくなるカップルをマイケル・ダグラスと共に熱演。
ロビン・ウィリアムズ
1996年の『バードケージ』では、ゲイ・クラブのオーナーカップルをネイサン・レインと共に軽妙に演じた名優ロビン・ウィリアムズ。
そのキャリアではさまざまな役を演じてきたが、晩年の2014年の映画『シークレット・ロード』で演じた既婚の高齢クローゼット・ゲイの役は印象深い。ずっと自分を押さえつけて生きてきたクローゼットなゲイが男娼に入れ上げたことで夫婦関係も仕事のキャリアも崩壊させていくという、あまりにも切ない役を熱演した。
フィリップ・シーモア・ホフマン
2014年に亡くなったフィリップ・シーモア・ホフマンは、個性的な演技派として知られているが、キャリアの中で演じたゲイの役も印象に残っている。
1997年の『ブギーナイツ』では、マーク・ウォルバーグ演じるノンケでドラッグ中毒のポルノ男優と愛を交わす撮影スタッフのスコッティを演じた。
また2005年の『カポーティ』では、ゲイの小説家トルーマン・カポーティ役が高く評価され、アカデミー賞主演男優賞を獲得。
性別適合手術のための資金を貯めようとする性同一性障害の役を演じた1999年の『フローレス』も印象的な役だった。
ティモシー・シャラメ
まだ27歳の若き大スター”ティモシー・シャラメ”がゲイ役を演じたのは、2017年の『君の名前で僕を呼んで』のみだが、主役のエリオ役が圧倒的に高い評価を得た。
映画化されたのは原作小説のほんの一部にすぎず、ルカ・グァダニーノ監督は続編構想を持っているようだが、共演のアーミー・ハマーが私生活のトラブルで俳優業を休業している状態であり、実現できるかは不透明だ。
ユアン・マクレガー/まさにゲイ達者
2009年の映画『フィリップ、きみを愛してる!』では、刑務所で知り合ったサイコな詐欺師(ジム・キャリー)に翻弄されるゲイ役で、受け(性的な意味ではなく)の演技を見せたユアン・マクレガー。
2021年のNetflixオリジナル・シリーズ『ホルストン』では一転、攻め(性的な意味ではなく)の演技でゲイ役を演じる。センスと才能に恵まれながらも心に抱えたコンプレックスの闇のせいで、一旦激すると周囲の人間を過剰に攻撃してキャリアも人間関係も自ら崩壊させていったゲイのデザイナー”ロイ・ホルストン”の、繊細さとサイコな面を見事に表現。
若き日のオビ=ワンを演じた『スターウォーズ』プリクエル三部作における、クワイ=ガン・ジンやアナキン・スカイウォーカーとの関係にブロマンスを超えた雰囲気が漂うのも、ユアン・マクレガーの演技がゲイ達者ゆえなのかもしれない。
日本でも『きのう何食べた?』の西島秀俊と内野聖陽、『エゴイスト』の鈴木亮平と宮沢氷魚など、ゲイ役を説得力をもたせて演じるノンケ俳優は少なくない。これからどんなノンケ俳優がゲイ役を演じていくのか、そしてカミングアウトする俳優が日本でも増えていくのか、楽しみは大きい。
※参考記事:Out
(冨田格)
★あわせて読みたい!
ハリウッド”裸族”ランキング・”すぐ脱ぐ俳優”ナンバーワン決定戦