アルモドバル流『ブロークバック・マウンテン』と話題の新作ゲイ西部劇

ゲイをカミングアウトしているスペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督。独特のポップな感覚が特徴の作風で、性的少数者を描く作品も数多い。ペドロ・パスカルとイーサン・ホークを起用した新作短編映画「Strange Way of Life」は、アルモドバル流『ブロークバック・マウンテン』だと話題を呼んでいる。

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ゲイを公言しているアルモドバル監督

Strange Way of Life
ペドロ・パスカル 画像引用元:Instagram

1980年『Pepi, Luci, Bom and Other Girls from the Neighbourhood(ぺピ、ルシ、ポンとその他大勢の娘たち)』で監督デビューしたペドロ・アルモドバル。

ペネロペ・クルスを主人公にした女性映画のイメージが強いかもしれないが、1987年『欲望の法則』2004年『バッド・エデュケーション』2013年『アイム・ソー・エキサイテッド!』2019年『ペイン&グローリー』と、ゲイを主人公にした印象的な映画も作り続けている。

神学校での神父による性的虐待を描く『バッド・エデュケーション』や、創作意欲が減退して行き詰まった映画監督が主人公の『ペイン&グローリー』は、監督自身の体験が色濃く反映されている作品だ。

Strange Way of Life

2020年に初の英語による短編映画『ヒューマン・ボイス』を公開したアルモドバル監督が、同じく英語による短編映画『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ(Strange Way of Life)』を制作。5月16日より開催の第76回カンヌ国際映画祭で初上映するこの映画のポスターと最初のスチールが発表された。

ゲイのガンマンを演じる2人の俳優

Strange Way of Life
(左)イーサン・ホーク(右)ペドロ・パスカル

25年ぶりに砂漠を越えて再会した中年のガンマン2人組を描く『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』。

若き日に雇われガンマンとして働いていたジェイクとシルバ。現在は保安官として働くジェイクを、牧場主となったシルバが訪ねてきて久しぶりの再会を果たす。

様々な情報筋は、この2人がかつて同性愛の関係を楽しんでいたと伝えている。エスクワイア誌は若い頃の彼らの友情が「おそらくロマンチックなものだった」とほのめかしている。

シルバを演じるのは、『マンダロリアン』(ディズニープラス)『THE LAST OF US』(U-NEXT)と近年の主演ドラマが立て続けにヒットしているペドロ・パスカル。ジェイクを演じるのは『ビフォア・サンセット』『6才のボクが、大人になるまで。』のイーサン・ホーク。

ペドロ・パスカルは性的少数者を積極的にサポートしていることも有名で、ゲイ・エピソードの評価が高い『THE LAST OF US』に主演したことで「ダディ・アイコン」として人気が急上昇している。

パスカルはInsider誌に、アルモドバルと仕事をするチャンスに飛びついたと語っている。

「アルモドバルから頼まれたことは何でもできたし、何の疑問もなくやっただろうね。彼は、ストーリーテリング、色彩、文化、反抗、セクシュアリティの世界を完全に切り開いた。それはまさに、酔わせ、危険、陽気、悲痛、全領域を網羅し、しかしその独特のスタイルを持っているんだ」

『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』には、Netflix『エリート』にシーズン4から登場したゲイ青年パトリックを演じたマヌ・リオスが出演していることにも注目が集まっている。

『ブロークバック・マウンテン』への答え

Strange Way of Life

『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』に期待するべき点はキャスティングだけではない。この映画は、アルモドバル流の『ブロークバック・マウンテン』への答えであるとも言われているのだ。

アカデミー賞国際長編映画賞をはじめ世界中の権威ある映画祭で評価の高いアルモドバル監督に、ハリウッドがオファーをしないはずがない。実際、『天使にラブソングを』や『ブロークバック・マウンテン』などの企画が持ち込まれていたそうだ。

しかし、アルモドバルはそのオファーをすべて拒否してきた。その理由は、映画全体の完全なクリエイティブ・コントロールが欲しかったからだという。

ブロークバック・マウンテン
映画『ブロークバック・マウンテン』

『ブロークバック・マウンテン』に関してアルモドバルはこう語っている。

「監督のアン・リーは素晴らしい映画を作ったと思うが、(ハリウッドのスタジオが)私が望むものを作るために完全な自由と独立を与えてくれるとは信じていなかった。やりたいことは何でもできると言われたが、そこに限界があることは分かっていた。

『ブロークバック・マウンテン』の2人の関係は動物的なものであり、感情ではなく肉体的な関係だった。映画のオチは、二人が別れなければならなくなったときにヒース・レジャーが『別れられるとは思えない』と発見するところだ。それはとても強い発見だが、その瞬間までは動物的な関係でしかなかった。

ハリウッド映画であるためには私の構想を実現することは不可能だった。この2人が、ずっとファックし続けている映画なんて、ありえないことだから」

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(左)マヌ・リオス(中央)ペドロ・アルモドバル監督

アルモドバルが『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』で、『ブロークバック・マウンテン』に対するどういう答えを出したのか非常に気になるところだ。

※参考にした記事はこちら:instinct/QUEERTY/Out

(冨田格)

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