2022年6月29日サル痘最新ニュース「ゲイ・バイ男性に広がるサル痘の症状は発疹が局部や肛門から始まる場合もある」

感染症に関するデータをリアルタイムで提供する国際的な連携組織「グローバルヘルス」がまとめるサル痘の確定症例や疑い症例をリアルタイムで監視する「サル痘トラッカー(Monkeypox Tracker)」によると、6月29日(水)現在で、全世界の確定症例は4,300例を超えた。

シンガポール、韓国に続き台湾でも感染報告が始まり、アジアのゲイ・バイ男性にとってもいよいよ他人事ではなくなってきたサル痘の、気になるニュースをピックアップする。

・サル痘が日本上陸する前に日本のゲイが知っておくべき「サル痘の基礎知識」

現在の感染拡大で特徴的なこと

サル痘

6月28日にAERA dot.が公開した記事「サル痘の『異常な広がり』と『濃厚接触』 WHO緊急事態宣言見送りの理由とは」から引用する。

WHOによると、今回の流行ではサル痘の典型的な症状を示さない感染者が多いという。発疹の数が数個、人によっては1個だけと少なかったり、発熱などの症状が発疹の後に出たりしている。

https://dot.asahi.com/aera/2022062700062.html?page=1

ここで気になる点は、

・発疹が人によっては少ない場合がある

・発熱などの症状が発疹の後に出たりしている

という2点だ。

本来は先に症状として現れる発熱などないまま、発疹がほとんど出ない状態だと、自分がサル痘に感染して発症しているという自覚がないだろう。

自覚がないまま他人と性的交渉を持ってしまったら、その相手に感染させる可能性がある。また自覚がないままハッテン場に行ったりすれば、シーツやタオルなどのリネン類を通じて感染させることも考えられる。

サル痘の典型的な症状の理解がゲイの中で深まれば深まるほど、逆にこのようなイレギュラーな症状を示す人が感染の自覚がないままに拡大させてしまう、ということもあるかもしれない。

・サル痘が日本上陸する前に日本のゲイが知っておくべき「サル痘の基礎知識」

顔じゃなく性器や肛門に発疹が現れる

サル痘

 6月26日にYahoo!ニュースが公開した忽那賢志氏による記事「サル痘の流行について 現時点で分かっていること」から引用する。

今回のサル痘の流行は単一の発生源から複数回の感染イベントが起こったものであり、Superspreading Event(超拡散イベント)と呼ばれるイベントや海外渡航によって世界中に拡大していると考えられる、と述べられています。

https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20220626-00302541

ここで「複数回の感染イベント」とされているのが、本サイトの記事「ゲイ(バイ)男性必読!海外の実例から考える『サル痘』とゲイコミュニティ」で紹介した、スペイン・マドリッドの「パライソサウナ」や、ベルギーで開催された「ダークランド・フェスティバル」、スペイン・カナリア諸島の「Gay Pride Maspalomas (Gran Canaria) 2022」を指すと思われる。

さらに気になるのは、下記の点。

通常、サル痘では全身に発疹がみられるとされていましたが、今回のアウトブレイクでは性器や肛門周辺にのみ発疹がみられた事例(※実際の病変を含むリンクですのでご注意ください)も報告されています。

https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20220626-00302541

上記文中のリンク先には、現在の欧米での実際の症例画像を確認できる。今後、日本でも感染拡大が始まるかもしれないので、実際のサル痘の症状を知っておくために、このリンクは必見だ。

もし、自分の局部に同じような発疹を見つけたら、発熱などの症状がなくともサル痘であることを疑ってみる必要がありそうだ。また、性的交渉をもとうとする相手の陰部や肛門に同じような発疹を見つけた場合は、それ以上の濃厚接触は控えて、相手にも警告してあげる方がいいだろう。

国内での検査体制はまだ整わない

サル痘

6月29日にm3.comが公開した記事「サル痘の曝露前予防『どこまでやるべきか』、感染症部会」では、同日の厚生科学審議会感染症部会の議論の様子を伝えている。なかでも気になるのは下記の点だ。

大都市圏においてサル痘感染者が確認された場合の曝露後予防や治療薬使用のための臨床研究が整備され、対応に向けた準備が進む中、大阪府の枚方市保健所所長の白井千香氏は「地方都市で感染者が出た場合はどのように対応するのか。(診療を行う医療機関は)手上げか、国公立病院になるのか」と質した。

事務局は「現在想定しているのは大都市圏中心に医療機関を選定すること」「まずは大都市圏で調整を行いたい」とした上で、「患者をどのように搬送すべきか、画一的に決めるのが難しい領域」と回答し、今後検討を進めていく姿勢を示した。

https://www.m3.com/news/open/iryoishin/1055537

まだサル痘の国内感染報告がないとはいえ、現状、地方都市でも検査体制が整うまではまだかなりの時間を要するということは覚悟しておきたい。

・サル痘が日本上陸する前に日本のゲイが知っておくべき「サル痘の基礎知識」

検査体制が拡充するのではという期待

サル痘

そんななか、国内のサル痘検査体制が拡充するのでは、と期待が持てる情報もある。

6月24日に、プレシジョン・システム・サイエンス株式会社が発表したプレスリリース「プレシジョン・システム・サイエンス株式会社、サル痘ウイルスDNA リアルタイムPCR検査キットを7月1日より販売開始」より引用する。

サル痘ウイルス(Monkeypox virus)の日本国内への侵入と伝播防止に向け、CerTest Biotec, S.L.(以下、セルテスト社、本社:スペイン サラゴサ市)のサル痘ウイルスDNA PCR検査キット「VIASURE Monkeypox virus Real-Time PCR Detection Kit」を7月1日より販売開始致します。

本製品は、ヒト由来試料中のサル痘ウイルスDNAをリアルタイムPCR法により検出する研究用試薬です。また、本製品は凍結乾燥試薬であり、常温保管ができます。セルテスト社より、患者の皮膚病変ぬぐい液、喉ぬぐい液、小胞液、小胞ぬぐい液、血清を試料として、陽性の検査結果が得られたことが報告されています。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000087187.html

検査体制が整わなければ、サル痘の疑いがあってもなかなか判断をつけることができない。新型コロナウィルスと違いゲイ・バイ男性に感染が集中しているため、検査体制が整うまではまだ時間が必要だということは頭にいれておきたい。

サル痘治療薬への期待も

6月29日に日テレNEWSが配信した記事「国内確認に備え…『サル痘治療薬』臨床研究始まる」から引用する。

29日に開かれた厚労省の感染症部会では、サル痘の患者が国内で確認された場合に備えた治療薬やワクチンの準備状況などが報告されました。

治療薬については、アメリカが開発したサル痘にも有効とされる天然痘の抗ウイルス薬「テコビリマット」について、東京都にある国立国際医療研究センター病院で28日から臨床研究を開始したということです。

https://news.ntv.co.jp/category/society/7eb221028ee9402e8a118a533001cf3c

抗ウイルス薬「テコビリマット」は日本では未承認の薬だが、国内でサル痘患者が見つかり同意が得られれば投与を始め効果や安全性を調べる、とのこと。

検査体制拡充の期待に続き、治療薬に関してもまだ時間はかかるだろうが希望の光がみえてきたのかもしれない。

日本ではまだ感染報告がないが、欧米での感染拡大状況を鑑みて、検査・治療体制の準備が始まっていることは希望が持てる。しかし、繰り返すが新型コロナウィルスと違って限定的な感染拡大のために国を挙げて全力で体制拡充を図る、という展開は望むべくもないだろう。

そうなると、体制が整わないうちに感染してしまうと、かなりしんどい思いをする可能性が高い。だからこそ、サル痘に関する知識をしっかり身につけて感染リスクを避ける必要がある。

これからもジオ倶楽部では、サル痘の最新情報を紹介していく。

(冨田格)

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