HIV陽性の高齢ゲイが自宅で生活するための訪問看護サービスという選択

医学の進歩によりHIVは投薬でコントロールできるようになっているとはいえ、高齢のHIV陽性者が高齢者施設に入居することが困難だという現実がある。自宅で暮らさざるを得ない高齢のHIV陽性者やエイズ患者をサポートする訪問看護サービスが、東京西部で始まった。

HIV陽性だと高齢者施設入所が困難に

Nana訪問看護ステーション
イメージ写真

東京都杉並区の「Nana訪問看護ステーション」は、杉並区・中野区・練馬区・新宿区を対象に、従来の訪問看護サービスに加え、性的マイノリティ支援の一環として、HIV陽性・エイズ患者への訪問看護サービスの受入を開始した。

1980年代~90年代のエイズパニックの時代から30年以上が経ち、50代以上のHIV陽性・エイズ患者が増えてきている。HIV陽性もしくはエイズ患者の高齢ゲイは今後、合併症や癌や難病を患った場合の医療介護をどうするのか、という現実問題に直面することになる。

というのも、有料老人ホームや特別養護老人ホームなど高齢者施設への入所を希望しても、HIV陽性もしくはエイズ患者であることを理由に断られる事例が、実際のところ少なくないというのだ。

エイズ・HIV陽性であることで高齢者施設への入所ができないならば、少しでも長く自宅での生活を続けるしかない。ずっと元気で健康で生活できることは理想だが、歳を重ねるごとに誰かのサポートを受けることが必要になってくる。訪問看護サービスは、自宅で生活する高齢者の健康面をサポートしてくれる存在だ。

Nana訪問看護ステーション

訪問看護サービスで自宅を施設代わりに

「Nana訪問看護ステーション」では、高齢ゲイのHIV陽性・エイズ患者が安心して訪問看護サービスを受けられるように、性的マイノリティに理解のある医療スタッフが契約者の家を訪問して医療介護ケアサービスを提供する。

Nana訪問看護ステーション

訪問看護とは、医療ケアと介護ケアのサービスのこと。訪問看護サービスを利用すると、定期的に自宅へ看護師やリハビリ職員が訪問して医療と介護のケアを行う。つまり、自宅が老人ホームや病院の機能を代替するイメージだ。

性的マイノリティへの理解と配慮を心がけている「Nana訪問看護ステーション」では、HIV陽性・エイズ患者のゲイの中でも、下記に該当する人はぜひ相談してほしいと考えているそうだ。

・50代以降で基礎疾患もある方

・50代以降でGMPD傾向にある方

・50代以降で同性パートナーがHIV陽性・エイズ患者様で健康不安がある方

・家族にHIV陽性・エイズであることを話したくない方

・癌や難病の告知を受けたことがある方

・家族と疎遠もしくは遠方にいる方

・入院時に必要な身元保証人/身元引受人/緊急連絡先 対応者不在の方

Nana訪問看護ステーション
Nana訪問看護ステーション

自宅で看取りまでできる体制

ゲイの老後は中野で
杉並区・荻窪駅北口直結のLUMINEとTOWN SEVEN

「Nana訪問看護ステーション」の対象エリアである杉並区・中野区・練馬区・新宿区以外に住んでいたり、地方在住のHIV陽性のゲイの人で、老後の生活環境に不安を抱えている人は、思い切ってより必要なサービスが受けられるエリアに転居することを考える選択肢もある。

「Nana訪問看護ステーション」は地元密着の不動産賃貸会社や居住支援法人と連携しているので、対象エリア内の物件を持つ不動産会社を無料で紹介してもらえる。

老後の暮らしに備えるならば、現在よりも小さい居住空間に転居することで毎月かかる家賃を下げるのは重要なことだ。そして訪問看護サービスを利用して自宅で生活できる期間をより長くすることにより、年金の範囲内で生活することも可能になってくる。

「Nana訪問看護ステーション」はゲイ・バイ男性に理解のある訪問診療クリニックと連携しており、自宅で看取りまでする場合にも対応している。病院や老人ホームを可能な限り利用せずに、リーズナブルかつ安心して最期まで自分らしく生きるための体制があるのはありがたい。

ゲイの老後は中野で
中野区・西武新宿線「鷺ノ宮」駅

何も準備をしないまま歳を重ねて、いざ高齢者施設に入所しようとしてもHIV陽性を理由に断られたら途方にくれてしまいかねない。高齢者になる手前の50代から、現実と向き合って準備をしていくことが大切だ。

Nana訪問看護ステーション
所在地:東京都杉並区下井草1-27-3
企業サイト:http://hp.kaipoke.biz/uyg/

(冨田格)

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