【性加害は絶対ダメ】ケヴィン・スペイシーから学ぶノンケ好きゲイの教訓

性的関係に至るプロセスが男女に比べると格段に容易であるゲイの中には、相手の意志を尊重しない荒っぽい方法に疑問を持たない人もいる。しかし、時代は大きく変わった。男性へのセクハラ告発を受け輝かしいキャリアを失ったオスカー俳優ケヴィン・スペイシーの事例には、学ぶべき教訓がある。

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ケヴィン・スペイシーの失墜

Kevin Spacey
ケヴィン・スペイシー

1995年の『ユージュアル・サスペクツ』で助演男優賞、1999年の『アメリカン・ビューティー』で主演男優賞と、2回もオスカーを受賞したケヴィン・スペイシー。演技派の性格俳優としての評価が高いが、さらに脚本家・映画監督・プロデューサーとしても活躍。またロンドンの劇場の芸術監督を務めたこともある。

主演と制作総指揮を務めたNetflixのオリジナルシリーズ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』は、世界中にNetflixの名を一躍有名にするほどのヒットとなる。

まさに輝かしいキャリアを歩んでいたケヴィン・スペイシーだが、2017年10月に俳優のアンソニー・ラップより「自分が14歳の時にケヴィンからセクハラを受けた」と告発される。それに続いて、多くの男性が同様の告発をした。

ケヴィンは、自らゲイであることをカミングアウトしてセクハラ疑惑を否定する動画をYou Tubeで公開するも批判の声は止まず、『ハウス・オブ・カード 野望の階段』の最終シーズン撮影開始直後にNetflixからすべての契約を打ち切られる。

『ハウス・オブ・カード 野望の階段』はその後、シナリオを大幅に変更してケヴィン不在の最終シーズンが制作された。そしてスペイシーは制作会社から、3,000万ドル(約43億円)以上の支払いを命じられている。

また公開目前だった出演映画『ゲティ家の身代金』は、急遽、クリストファー・プラマーを代役に立て、ケヴィン出演のシーンをすべて撮り直して公開された。

こうして、ケヴィン・スペイシーのハリウッドでの輝かしいキャリアは終焉を迎えた。

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ウズベキスタンで心臓発作の疑い

Kevin Spacey
Netflix『ハウス・オブ・カード』

最初に告発を受けたアンソニー・ラップに関しては、2022年10月にニューヨークの法廷がケヴィンに暴行罪の責任はないことを認めた。他のいくつかの訴訟では、ケヴィンの無罪が確定している。

さらに2022年には英国で、2001年から2013年にかけて4人の男性に性的虐待を行なったとして12の罪状で訴えを起こされたが、すべて無罪と判断がなされた。

スペイシーは2022年にフランコ・ネロ監督作品『The Man Who Drew God』で主演、続けて今年も主演映画『Peter Five Eight』が公開と、再び俳優としてのキャリアを歩み始めたが、先日、心臓発作で病院に運ばれたと報じられた。

英国のタブロイド紙『ザ・サン』によると、第15回タシケント国際映画祭に参加のためウズベキスタンを訪れていたスペイシー(64歳)は、サマルカンドのアフラシアブ博物館を見学中、腕がしびれるのを10秒弱感じ病院でMRI検査を受けたという。

検査の後、映画祭のステージに登壇したスペイシーは、こう語った。

「アフラシアブ博物館で壁に描かれた素晴らしい壁画を見ていたら、突然、左腕全体がしびれました。一緒にいた人たちにそのことを伝え、すぐにメディカルセンターに行き検査を受けられました。検査の結果、すべてが完全に正常であることが判明し、より深刻な状態ではなかったことに感謝しています。私たちとって、命がいかに儚いものであるかを考えさせられました」

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「ヤリモク」「即ヤリ」感覚の問題

ケヴィン・スペイシー
イメージ画像

ケヴィン・スペイシーが男性に性加害を行ったと告発され、一瞬でそのキャリアが崩壊していく様には驚いた人も多いと思う。

しかし、ノンケとゲイでは受け止め方がちょっと違っているかもしれない。というのも、男女の関係に比べると、ゲイ同士の場合は性的関係になるまでのプロセスが格段に容易である傾向が強いからだ。

たとえばハッテン場で一晩に複数回の性的関係をもったという話は珍しくもないし、伝言ダイヤル・ネット掲示板・アプリと、時代によって使うツールが変わっていっても「ヤリモク」「即ヤリ」という感覚は決して廃れていない。

ゲイ同士の性的関係に至るまでのプロセスが容易であることに慣れすぎてしまうと、どこか社会の常識とズレてしまう面があるのも事実だ。

たとえば一口に”ゲイ”言っても、全員が性的関係を結ぶプロセスに関して同じように容易に考えているとは限らない。お互いのことをきちんと理解して信頼できる相手としか性的関係を結ばないと考えるゲイもいる。

そんなゲイに対して「ヤリモク」「即ヤリ」感覚で接してしまうと、お互いに気まずくなるばかりか、人間関係までこじれてしまう恐れもある。

そして、ゲイ同士以上に注意が必要なのは、ノンケ好きのゲイの場合だ。

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ノンケ好きなゲイが学ぶべき教訓

ケヴィン・スペイシー
イメージ画像

「ゲイのゲイ嫌い」という言葉が昭和の頃からあるが、ゲイの中にはゲイ同士の恋愛や、ゲイとの性的関係には興味を抱かず、ノンケ男性にしか関心が向かない人がいる。

一定年齢以上のノンケ好きゲイは、いかにしてノンケをモノにしたのか、ということを武勇伝として語る人も少なくない。その武勇伝を聞く限りは、かなり強引で荒っぽいやり方をしてきたことがうかがえる。相手のノンケにとっては、消してしまいたい「黒歴史」になっていそうなほどに。

しかし、かつてはノンケ男性が男性からセクハラを受けたとしても、それを告発することはなかった。ゲイが今よりもっとクローゼットであった時代に、ノンケ男性が男からセクハラを受けたと告発することは、「男のプライド」が傷つくことであったからだ。

多くの性的被害を受けた女性たちと同じように、セクハラを受けたノンケ男性もまた沈黙して泣き寝入りせざるを得なかったのだと思われる。

しかし、時代は変わった。ここまでゲイがオープンに受け入れられ、そしてセクシャル・ハラスメントは見過ごしてはならない大きな問題だという認識が共有されるようになった令和の今、ゲイ特有の性的関係に至るまでのイージーな感覚がトラブルになる可能性は少なくない。

ジャニー喜多川をはじめ、男から男への性加害のニュースが取り上げられることが昨今多くなってきている。

ゲイ同士でも「ヤリモク」「即ヤリ」感覚を共有できる人なのかを事前に確認するべきなのだから、ノンケ男性に対して荒っぽい方法で性的関係を迫ったりすることは非常にリスクが大きい。ましてや「男同士だから」と安易に考えて性加害に及んでしまったら、大変なことになると理解しておかねばならない。

ゲイにとっては”気持ちがいい”行為かもしれないが、それを望んでいないノンケにとっては性被害であり、心と肉体を傷つけられることになるのだ。これは、銭湯や電車内でノンケ男性に接触したり、より過激な性行動に出ることも同じだ。

人の心に深い傷を負わせたら、その報いを受けなければならない。スペイシーを見れば、裁判で無罪になろうとも一度棄損された名声は取り戻せないし、経済面でのマイナスは莫大であることがわかるだろう。

ケヴィン・スペイシーが陥った状況を「他山の石」として、ゲイ・バイ男性も人との性的な関わりの持ち方を一度考え直してみる必要がありそうだ。人を傷つけないためであることはもちろんだが、結果的に自分の身を守ることにも繋がるのだから。

※参考記事:Out

(冨田格)

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