「今日から私は愛される」元メジャーリーガー”TJハウス”が男性と婚約発表
欧米ではアスリートのカミングアウトが相次いで報じられているが、今度は元メジャーリーガー”TJハウス”が男性との婚約を発表して公式にゲイであることをカミングアウトした。メジャーリーグ関係者のカミングアウトは、1999年のビリー・ビーン選手以来23年ぶりで、3人目となる。
マイナーリーグから昇格して活躍
1989年、ルイジアナ州生まれのグレン・アンソニー・”TJ”・ハウスは、2008年のMLBドラフトでクリーブランド・インディアンスから指名を受け契約。その後、マイナーリーグで努力を重ね、2014年にメジャーリーグへ昇格。2016年までクリーブランド・インディアンスで活躍。
2017年にトロント・ブルージェイズに移籍するが、スプリングトレーニングでラインドライブを顔面に受け、痛ましい怪我を負った。シーズンはマイナーでスタートするが、結局シーズン終了までに召集され、これがメジャーでの最後の試合となった。
現在は不動産業者として働いているハウスは、12月8日、Facebookで同性の恋人ライアン・ネイツェルとの婚約を発表した。
カミングアウトするまでの苦悩
ハウスはfacebookでの投稿に、メジャーリーグで活躍しながらも自分のセクシュアリティを隠し続けることの苦しみを吐露している。自分を守るために、わざと人と距離をおいてきたことで孤独感も覚えていたようだ。
メジャーリーグでのキャリアによって評価されたことが支えでありながら、それは傷を覆う包帯のようなものだとも感じていたという。
「”恥ずかしさ”のために私はずっと黙っていましたが、”愛”がついに私を解放してくれたのです」
今でもメジャーリーグでキャリアを重ねたことを後悔していないし、生まれ変わっても同じ道を歩みたいとも考えているそうだ。しかし、このようにも感じている。
「お金があっても、高級車があっても、いい服があっても、ほんのちょっとの名声があっても、毎晩家に帰ると、『変わりたい』と思っていたんです。心の底では、もっと何かが欲しかった。何をしたかということではなく、自分という人間を愛して欲しかった」
すべての米連邦政府機関に同性婚と異種族婚の承認を義務付ける「結婚尊重法」の成立に併せて、婚約を発表したハウスは、投稿の最後にこう記した。
「愛……それはすべての人のものです。私はようやく癒されつつあり、今日のような日は、私が成長し続けることを助けてくれます。今日も、私は愛されています」
メジャーリーグでは3人目のカミングアウト
メジャーリーグで初めてカミングアウトしたのは、1976年から79年にかけてロサンゼルス ドジャーズで活躍したグレン・バーク選手。当時はゲイであることをチームが受け入れるのは困難な時代であり、またチームメイトの中には彼とのシャワーを避ける人もいたという。
ゲイであることを理由にメジャーリーグでの活動をしづらくなり27歳で引退したグレンは、以降、アマチュア・スポーツで活躍しゲイゲームズにも参加した。しかし1987年に酷い交通事故に遭ったことから人生が狂い始める。
麻薬に溺れ、経済的に困窮して路上生活者となり、1995年にエイズ合併症で亡くなった。
グレン・パークの後に続きカミングアウトをする選手はしばらく出てこなかったが、1987年から1995年までデトロイト・タイガースやサンディエゴ・パドレスで活躍したビリー・ビーン選手が、引退後の1999年にゲイであることをカミングアウトした。
現役時代はゲイをひた隠しにせざるを得ず、同居していたパートナーが急死した時も葬儀に出なかったという。
ビリーは現在は、メジャーリーグの多様性、公平性、包括性を担当する上級副社長を務めている。ハウスの婚約発表に関して「これはリーグと野球界にとって素晴らしい日だ」と語っている。
グレン・バーク選手のカミングアウト後の不遇な状況もあり、カミングアウトしづらい雰囲気のあったメジャーリーグも、TJハウスの婚約発表がきっかけとなって変わっていくかもしれない。来年以降も、メジャーリーグのゲイ選手の動向に注目していきたい。
※参考記事:Out/Daily mail
(冨田格)
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