【アメフト】NFL史上初めてゲイをカミングアウトした男性コーチの話

マッチョなスポーツの世界で、ゲイであることをカミングアウトするのは決して容易なことではない。アメリカのメジャー・スポーツのひとつアメリカン・フットボールのNFLで、男性コーチとしては初めてカミングアウトしたジャクソンビル・ジャガーズのケビン・マクセンを紹介する。

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アメフトのコーチの初カミングアウト

NFLコーチ:ケビン・マクセン
ケビン・マクセン(Kevin Maxen)Jacksonville Jaguars

日本のプロ野球の「セ・リーグ」と「パ・リーグ」のように、アメリカン・フットボールのNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)は、AFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)とNFC(ナショナル・フットボール・カンファレンス)に分かれている。

それぞれのカンファレンスには16チームが所属しており、東・西・南・北に各4チームがあるという構成だ。

AFCの南地区に属する「ジャクソンビル・ジャガーズ」のアソシエイト・ストレングス・コーチであるケビン・マクセンは、7月20日(木)にゲイであることをカミングアウトした。マクセンは、アメリカの主要男子プロスポーツ界で初めて公にゲイであることを公表した男性コーチとなった。

カミングアウトを決意するまで

マクセンは、マサチューセッツ州立大学アスレチック・カンファレンスのディビジョンIIIに属するウェスタン・コネチカット州立大学でプレーした。傑出したラインバッカーで、3年間で30試合すべてに出場し、通算タックル171回でキャリアを終えた。4年生のシーズンには、ディフェンスのファーストチームに選ばれた。

華々しい活躍をみせたマクセンだが、すでに大学時代から自分のセクシュアリティに疑問を持ち始めていたという。

ベイラーとヴァンダービルトのフットボールチームでストレングスコーチの経験を積み、ジャクソンビル・ジャガーズのアソシエイト・ストレングス・コーチの職についた。恋人のニックとは、すでに2年以上交際している。

「ゲイの男性はフットボールフィールドにいるだけじゃない。彼らはリーダーでもある」

こう考えるようになったマクセンは、これ以上私生活を隠すことに耐えられないと感じた。ジャガーズの同僚たちが家族やパートナーと一緒に行事に出席しているのを見て、自分もそうしたいと思ったのだ。

「これ以上『誰と付き合っているのか、なぜ他の誰かと一緒に暮らしているのか、嘘をつかなければならないのか』と感じたくないんだ。他のコーチには大切な人がいて、彼らは自分の大切な人の話をしている。でも、自分が同じことができない、自分を失望させていると罪悪感を感じた。一緒にいる人には、それを分かち合ってほしいんだ」

現役選手カール・ナシブのアドバイス

「家族、友人、同僚、仲間たちの絶大な愛とサポート、そしてパートナーの勇気と犠牲によって、自分には愛し愛される権利と責任があることに気づいたのはつい最近のことです」

マクセンがカミングアウトのプロセスを開始したのは2022年2月、ゲイであることを公表した最初の現役NFL選手、カール・ナシブと接触したときだった。ナシブはマクセンに、ゲイであることを可視化することの重要性を示し、助言を与えたそうだ。

ナシブが2年前にカミングアウトしたとき、彼はフットボール界にいる他の性的少数者の人々の”リソース”になりたいと考えていた。”リソース”とは「資源」を意味し、活用することで価値を生み出す存在ということだ。

ナシブのミッションは達成された、そして今、マクセンも同じことができる。

「しばらくの間、私は自分自身に対する怒りや憎しみを持っていました。でも、そうではなかった。私自身が自分のルールではなく、他人のルールに従って生きる人生を選択したことが原因だったのです」

カミングアウトしたことで自分のルールで人生をプレーすることになったマクセンは、新人選手たちが集まってくる21日(金)から、ジャガーズのトレーニングキャンプで次期シーズンのアソシエイト・ストレングス・コーチの業務を始める。

カミングアウトを経て感じたこと

ジャガーズのオーナー、シャド・カーンはマクセンの勇気を称えた。

「ケビンは根っからのジャクソンヴィル・ジャガーであり、我々のフットボールチームとコミュニティの重要なメンバーだ。トレーニングキャンプでケビンに会えるのを楽しみにしているし、キャンプ中もシーズン中も、彼が自信と自由と平穏を感じながら毎日出勤してくれることを願っている」

自分のセクシュアリティに疑問を抱いた大学時代から始まった自分への怒りや憎しみも時を経て解消し、マクセンは平穏を手に入れた。今夏の初め、マクセンはニックを高校時代の友人に紹介したところ、「どうしてもっと早く言ってくれなかったの?」と言われたそうだ。

カミングアウトを経て、マクセンは今、こう感じている。

「プロフットボールの最高レベルでストレングス・コーチを務めてきた男女の両方とデートしたことのあるユダヤ系黒人として、私は自分がどう見えるか、何を信じているか、そして特に誰と肉体的あるいは感情的に惹かれ合うかは、私や他の人々が自分の価値をどう見るかに影響を及ぼすべきではないと学んだ。そして、自分が何を成し遂げられると感じるかを決めるものでもない」

性的少数者のアスリートやスポーツ関係者が、カミングアウトしたことがいかにその後のキャリアに良い影響がでたのかを語ることは珍しくない。重荷から解放されたことで、彼らは真に秀でることができると感じたのだ。

マクセンが、すでにカミングアウトしたアスリートやスポーツ関係者たちの足跡をたどることができることを願いたい。今のところ、素晴らしいスタートを切っているようだから。

※参考記事:Outsports/QUEERTY

(冨田格)

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