男女500人アンケートから読み解く独身ゲイの「老後2,000万円問題」
2019年に金融庁が試算した「老後30年間で約2,000万円が不足する」とする報告書に震撼したゲイも少なくないはずだ。
ノンケ男女500人にアンケートした「【老後2,000万円問題アンケート】実際、老後資金(満65歳時)はいくら貯められそうですか?」の調査結果から、ゲイの老後資金問題に向き合ってみたい。
目次
老後2,000万円問題についての調査
「老後30年間で約2,000万円が不足する」とする報告書は、お互いに無職の65歳以上の夫と60歳以上の妻をモデルとした試算であり、全ての人に当てはまることではない。
しかし、この問題をきっかけに、「老後のために2,000万円貯めておかなければ生活できなくなる」と、老後の不安に駆られる方が一気に増えたのは事実だ。
ライフプランニングやリスクマネジメント、あらゆるジャンルをカバーするコンサルティングネットワークを提供するホロスプランニング社は、6月15日から17日にかけて、全国の男女500人に、「【老後2,000万円問題アンケート】実際、老後資金(満65歳時)はいくら貯められそうですか?」を実施した。
調査方法は、インターネット調査。有効回答数の割合は、男性が40.8%、女性が59.2%。調査対象条件は日本に住む成人の人で、10代~70代までが回答した。
「2,000万円貯めるのは困難」という人が多い
■現在の年収(世帯年収)は500~750万円の方が3割超
一方、300万円未満の人が16.8%と、全体の2割近くを占めており、低賃金労働者の問題も浮き彫りとなっている。
■現在の貯金額(株式含む)は300万円未満が約4割!
300万円未満の36.4%の中には、貯金額が100万円未満の方も16.8%(※1)」おり、貯金したくても思うように貯金ができない状況に陥っている人が多い印象を受ける。※1:500名中84名
■満65歳時の預金額見込みが2,000万円以上の方は約3割
現時点では「65歳までに2,000万円を貯めるのは困難」と見込んでいる方が圧倒的に多いことがわかる。
以上の結果を踏まえ、アンケートに回答した人たちの声を紹介する。共感する点や、参考にできる点がみつかるはずだ。
老後2,000万円問題に思うこと
無理だと思う(23歳女性・会社員(正社員))
正直2000万円まで貯めるのが厳しく難しいと思う。(35歳男性・会社員(正社員))
貧困層には無理難題です。(46歳男性・フリーター(パート)、契約社員)
災害や病気など不測の事態があることを考えると2000万円も貯めるのは難しいと思っています。(50歳男性・会社員(正社員))
現在子供の教育費や家のローンが残っていることから、現実的には老後の2000万円は無理です。(52歳女性・会社員(正社員))
生活するのに精一杯で貯金は全くできない状況で、2000万円など到底無理な話です。(62歳男性・会社員(正社員))
2,000万円を貯めることに難色を示す人が目立った。この意見は、年収(世帯年収)や貯金額(株式含む)の多い・少ないに関係なく目立っていた。
家計がギリギリの状態の人はもちろん、今は何もなくとも、今後災害や病気などで大きな出費が必要になる可能性は誰にでもあり、現時点では「2,000万円という金額はハードルが高い」と感じている人が多い様子がうかがえる。
もらえる年金に対する不安
今、年金のためにお金を払っているが、老後にもらえるかが心配です(26歳男性・フリーター(パート)、契約社員)
私の時は年金がもらえるのかも分からないから老後の不安しかない(35歳女性・会社員(正社員))
年金が少なすぎる。国民年金を今の2.5倍ぐらいに増やさなければ生活できない。(46歳男性・個人事業主)
もらえる年金額が減っていき、不安しかないです。(52歳女性・フリーター(パート)、契約社員)
年金難民が大量に発生すると思います。年金が安すぎます。(64歳男性・無職)
20年前の平成4年度の国民年金保険料は9,700円であったのに対し、徐々に金額が上がっていき、令和4年度の国民年金保険料は16,590円(※2)と、毎月納める額は上がる一方。
その上、「年金制度が破綻するのではないか」という噂もあり、「受け取れる年金額が減るかもしれない」「そもそも年金自体受け取れるのか」といった不安を抱えている様子も浮き彫りとなりった。
※2:令和3年度の16,610円よりはわずかに値下がりしている。
国に対しての厳しい意見
国が支援をするべきだと思う。(20歳女性・学生)
政治が変わらない限りお金を貯めることができない。(31歳女性・会社員(正社員))
現在の就職氷河期世代の人達で一生非正規雇用で働く場合老後資金2000万を貯めるのは至難なので、何か保障制度を作って貰いたい。(45歳男性・フリーター(パート)、契約社員)
生活費だけで精一杯で、貯金できない。政治家の給料を減らしてその分国民に回して欲しいです(46歳女性・フリーター(パート)、契約社員)
どうやって生き延びていこうか、途方に暮れている。政府は最低生活保障制度を早く導入してほしい。(50歳女性・フリーター(パート)、契約社員)
国に支援を求める意見や、国民が老後も安心して暮らしていける制度を導入すべきとする意見など、「国に動いてほしい」と思っている人も多数いた。
働き続ければ大丈夫なのでは?
老後2000万円貯金してなくても生活している先輩方が沢山いるのでなんとかなるだろうと思っています。(34歳女性・個人事業主)
老後に2000万も要らないと思います。それほど使わない。(54歳男性・会社員(正社員))
切り詰めれば2000万円もいらない。(65歳男性・個人事業主)
60歳以降も働き続ければ大丈夫だと思います。(52歳男性・個人事業主)
老後でも働ける状態なら2000万円なくても大丈夫かなって感じます。(49歳男性・個人事業主)
といった意見の人もいた。それなりに暮らしている高齢者は実際いるし、今は定年を過ぎても元気に働いて収入を得ている高齢者の人も多いので、そこまで不安に感じる必要はないのかもしれない。「大丈夫だと思う」と答えた方も、ごく少数だがいた。
生活レベルを上げなければ心配する事ないと思う。(35歳男性・会社員(正社員))
真面目に働けば大丈夫だと思います。(35歳男性・会社員(正社員))
自分の老後はいくら足りないかを考えたとき、住宅ローン含めすべて完済してますので、2000万円足りないとは考えていません。車等の物欲も衰えてきており贅沢は望まないので夫婦二人でのんびり生活していくつもりです。(57歳男性・会社員(正社員))
誰かに相談したいと思うなら
老後資金に不安をもつ独身ゲイ・バイ男性の場合は、「働き続ける」ことで年金以外の収入を得ることと、「生活のサイズを小さくして月々にかかる費用を少なくする」ことで支出を少なくすること。この2つを実現することを目標とすることが、必要だ。
大切なことは、「収入(年金を含む)から支出(主に月額家賃や娯楽費など)」を差し引いても毎月赤字にならないことだ。
ゲイの老後に対象を絞って活動しているアライアンサーズの久保さんに、老後2000万円問題で悩む独身ゲイ・バイ男性へのアドバイスを聞いた。
「今住んでいるのが一軒家であるなら、将来生前整理をするときに100万円単位で費用負担をせねばならないリスクがあります。そのリスクを無くす準備には、多少の費用をかけてでも、早めにやっておくことをおすすめします。
皆様のご両親が70歳の時点で、ご自分たちで生前整理ができただろうか、もしくはできるだろうかを想像してみてください。大丈夫、できる、と思う方は少ないはずです。同じことは独身ゲイ・バイの皆様にも言えるのです。ですから、先送りをしないで、健康でお元気なうちに人の手を借りてでも早急に解決するべき課題だと考えてください。
2000万円を用意できなくとも、老後を乗り越える方法はあります。ポイントは『とにかく専門家に相談すること』です」
老後2000万円問題や、一軒家の生前整理、生活のダウンサイジングなど、詳しい人に相談したいけれどもゲイであることをカミングアウトしづらいならば、アライアンサーズに相談してみるのもいいかもしれない。
アライアンサーズ
所在地:東京都新宿区新宿2-12-13
電話:03-6260-8637
公式サイト:https://alliancersjp.com/
(冨田格)