【世界陸上】東京五輪でさりげなくカミングアウトしたオランダ強豪陸上選手

いよいよクライマックスを迎える「世界陸上2023 ブダペスト」。8月27日の男子4×400メートル・リレー予選に出場するオランダの強豪選手ラムセイ・アンヘラが、2021年の東京五輪のときにさりげなくカミングアウトしたことと、カミングアウト後の心境を語った。

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正式なストーリーのないカミングアウト

Ramsey Angela
ラムセイ・アンヘラ(Ramsey Angela)画像引用元:Instagram

オランダのロッテルダムで1999年11月6日に生まれたラムセイ・アンヘラは、現在23歳。2021年の「東京五輪」で男子4×400メートル・リレーに出場し、見事銀メダルを獲得した。

現在ブダペストで熱戦が繰り広げられている「世界陸上2023 ブダペスト」でも、8月27日(日本時間)の男子4×400メートル・リレーに予選に出場予定だ。

スポーツの世界では多くのアスリートが、自分のセクシュアリティをカミングアウトしている。実際、2021年の東京五輪出場選手のうち少なくとも186人はセクシュアリティを公表していた。

なかでもトップクラスのアスリートの場合は、大概の選手がSNSではっきりとカミングアウトしたり、メディアのインタビュー記事でカミングアウトするなどの「カミングアウト・ストーリー」を体験することが常識となっている。

しかし、ラムセイ・アンヘラは正式な「カミングアウト・ストーリー」をなぞることはなかった。

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彼と交際していることは僕であることの一部

Ramsey Angela
画像引用元:Instagram

2021年東京五輪の年、アンヘラはインスタグラムにボーイフレンドであるモデルのポル・イェペラーとのかわいい2ショット画像を投稿し始めた。「僕はゲイです」という宣言のコメントを添えることは一切せず、代わりにハートの絵文字や「#couple」というハッシュタグを添えた投稿がある。

それらの写真は、アンヘラが投稿したレインボーの前に立っているショットと組み合わせ、彼がゲイであることをフォロワーたちは確信した。

最近ESPNのインタビューに応じたアンヘラは、その当時のことをこう語っている。

「SNSは僕のキャリアにとってかなり重要だ。スポンサーとの契約や商業的な利益に大きな影響があると確信している。僕は私生活の一部を多くの人たちと共有しているんだ。

正直に言うと、セクシュアリティに関することをSNSで共有することが正しいいことなのか疑問に思っていた。でも『これでいい、変えられない、頑張ろう』と思うようになった。ボーイフレンドができたことで、そう考えるようになったのだと思う。

今は初めてのボーイフレンドについてSNSに投稿しているけれど、別にサプライズというわけでもない。自然にそうなったのだし、彼と交際していることは僕であることの一部なんだ」

結果的にカミングアウトしたことがアンヘラのアスリートとしてのキャリアにプラスの影響を与えたことは明らかだ。彼のインスタグラムには、チームメイトと一緒にポーズをとっている写真がたくさん掲載されており、チームメイトが彼の人生の旅をサポートしていることが伝わってくる。

「いつもと違う振る舞いをしなければならないとか、いつもと違う目で見られるとか、トレーニング中や試合中にいつもと違う気分になるとか、そういうことでキャリアに影響を与えることはなかった。競技生活(サーキット)をおくることでオランダと違う場所に行ったことは何回もある。でも、そういう時でも、いつもと違う振る舞いをしなければいけないと思ったことは一度もない」

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自分らしく生きないと傷つくことになる

アンヘラはサーキットを離れた生活も気に入っているようだ。彼はとてもファッションが好きで、SNSでルックを披露することもためらわない。

アスリートとしての実力やセクシュアリティ、華やかなルックなどアンヘラの注目度は増す一方だ。そんなアンヘラだが、メディアが彼のセクシュアリティについて報道し始めるまで性的少数者のコミュニティについては意識していなかったという。

「変に思うかもしれないけど、コミュニティの存在を意識したのは最近のことなんだ。存在は知っていたけど、気にしたことはなかった。そのコミュニティと自分のスポーツがリンクしていることに気づいたことはなかったんだ。

僕のSNSへの投稿を見たコミュニティの人たちの目には、僕は特別な存在に映っていたのかもしれない。でも、僕はそのことをよく知らなかった。

東京五輪のオリンピック選手村に行く前に、東京近郊(千葉)でトレーニングキャンプを行った。ある朝起きたら、フォロワーが一気に数千人増えていた。私は、『はぁ? フォロワーが増えるのは嬉しいけど、彼らは誰なんだろう?』と思った。

実は、あるゲイ・メディアが僕のセクシュアリティについて報じた結果だったんだ」

アンヘラは、現実を受け入れることで、人々は他人を尊重することを学んだと言う。

「人生は短いから、自分らしく生きないと傷つくことになる。僕は他人の意見にはあまり興味がない。自分らしく、なりたい自分を表現していけば、みんなそれを普通に受け入れてくれると思う。自分を押し殺して生きるなら、それはとてもネガティブなことだ」

アスリートとして、そして個人としてもポジティブな人生を送っているラムセイ・アンヘラ。現在開催中の『世界陸上2023 ブダペスト』で出場する男子4×400メートル・リレーは、8月27日(日)午前2時半より予選、8月27日(月)午前4時37分より決勝が行われる。

アンヘラが新たなメダルを獲得できるのか、注目したい。

※参考記事:Outsports/QUEERTY

(冨田格)

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