ハッテン銭湯と呼ばれて~ゲイのハッテン行為で被害を受けた銭湯店主の本音

ゲイが出会いを求めて集まる銭湯だとクチコミで広まり、ついにはゲイの間で「ハッテン銭湯」と呼ばれて有名になったところがある。しかし、銭湯を経営する人たちはハッテン行為を歓迎しているわけではない。どんな行為が行われ、どんな迷惑を被っているのか、銭湯を経営する人たちの本音を聞いた。

問題提起をしても変わらない実情

ハッテン銭湯
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この記事は、2017年9月12日「Lrtibee Life」というメディアで初出したものだ。公開当時は非常に大きな反響があった。

ゲイの中で、なかば当然のように行われてきた銭湯やスパ銭でのハッテン行為に対して、経営する人たちからの抗議や非難の声が上がってきていた時期でもあり、他人事ではないと真剣に向き合ったゲイ、バイ男性は少なくないと思う。

銭湯でのハッテンは自分たちの快楽のために人様に迷惑をかける行為であるということを、多くのゲイに向き合ってほしいと考え、2019年6月には筆者のnoteに転載したところ、また大きな反響があった。

しかし、反響がどんなに大きくとも、銭湯やスパ銭でのハッテンがなくなったわけではないようだ。

ハッテン被害を受けている銭湯経営者の訴えを知ることは、すべてのゲイ、バイ男性には重要なことだと考えている。だから、少しでも多くの人に読んでもらいたいと考え「ジオ倶楽部」に転載することにした。

ここから先は、初出時は2回に分けて公開した元記事を編集して、まとめたもの。

”ハッテン銭湯”と呼ばれることで悩む経営者

ハッテン銭湯
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インターネットを通じてゲイの間で「都内屈指のハッテン銭湯」などと呼ばれている公衆浴場があることをご存知だろうか?

夜毎に多くのゲイが集まることは話題になり、さらに多くのゲイ達が集まってくる。 意図せずに有名になってしまった銭湯の経営者の皆さんは、そのことに大きなショックを受け、悩みを抱えているという話が伝わってきた。

そこで実際に悩みを抱えている銭湯経営者の方に集まっていただき、銭湯をハッテン場として勝手に使用するゲイから日々受けている被害の実態や、どのような対策を取っているのか、そして彼らの本心をうかがうことにした。

銭湯をハッテン場として利用するゲイの中には

「俺たちが売上を支えているんだ」
「俺たちが行かなくなったら売上が激減するのを分かってるから目をつむっているんだろ」

と当たり前のように考えている人が少なくない(実際にこのような発言を何回も耳にしている)。しかし、銭湯経営者の皆様の本心はまったく違っていた。

※座談会に参加していただいたのは都内の三軒の銭湯店主の皆様。プライバシーに配慮して、記事内では仮名(Aの湯・Bの湯・Cの湯)で表記している。

Aの湯「一年間で30回くらい警察に来てもらいました」

ハッテン銭湯
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■銭湯を継ぐまで知らなかった状態

僕はここの店主を継いで4年くらいです。10年くらい前からウチがゲイの人の間では有名だったらしくネット上では「都内屈指の」とか「ゲイが集まる銭湯」って言われたりしていたみたいですが、よく知らなかったんです。 自分が引き継いで店に入ってみると、その酷さがどんどんどんどん分かってきて。

ウチは構造的に死角が多いものだから、それがゲイの人にとっては使える場所だと思われたようです。夜遅くなるほどゲイの人が増えるんです。来る人来る人「ゲイっぽいなあ」と思う方ばかりで。

本当にひどかった頃は、浴室内の至るところでくわえたり、しごいたり、3人輪になってしごきあったりとか。閉店間際の遅い時間に、死角にある狭い風呂にすし詰めで入ってたりなんてこともありました。 

隠れてこっそりとかじゃなくて一般のお客さんがいるときもやってる人が結構いて、「変なことしている奴らがいるよ」って苦情言われたこと何回もあります。面と向かって言いにくいのか、電話で苦情もらったこともありますし。お客さんが保健所に苦情を言って、保健所からかかかってきたこともあります。 

自分が店を引き継ぐ前からそんな状態だったのですが、親父もどうしていいかわからないって感じだったようです。1年くらい親父が入院して、その間、お袋が一人で切り盛りしていた時期があったんです。当然、男湯の見回りができないので、その頃に余計にひどくなったってのはあるみたいです。 

僕もネットで検索してみたら「都内屈指の」とか「ゲイが集まる銭湯」とかバンバン書かれていて、こんな風に書かれているんだと初めて知ったんです。 

■状況を改善するために見回り強化と警察とのやり取り

店内がこんな状態では、自分の友達や知り合いを店に呼ぶこともできないんですよ。また、周囲には新しいマンションが増えてきて、そういうところに引っ越してきた人たちに「広い風呂を楽しみませんか?」と営業して新規顧客の開拓もしたいのですが、おおっぴらに迷惑行為をするゲイの人たちがたくさんいては、宣伝なんてできないですよね。

これはなんとかしなきゃいけないと考えました。まずは見回りを強化してみたんです。そうしたら見に行くたびにやってる人たちがいて。注意したら一旦は止めるけど、自分がいなくなったらまた始めるってことの繰り返しで。

これは警察呼ぶしかないかって思っても、なかなか踏ん切れないんですよね。でも、この状態で一般のお客さんに迷惑が及ぼされ続けるのは良くないので、踏ん切りをつけました。以降は見つけたら「はい、警察呼ぶよ」って。 

それから一年間に30回は警察に来てもらって40人くらいを連行してもらいました。 

でもね、警察に来てもらっても、やってた当事者にシラを切られてしまったらどうしようもないんですよ。連れて行ってもらって注意だけで終わってしまう。第三者の目撃者がいないとダメなんですよね。だから、なかなか立件までは結びつかなかったです。

でも警察には、悪質な場合は単に注意で済ますのではなく家族か職場に連絡して伝えて欲しいとは要請しました。東京都の迷惑防止条例で初めて立件できたのが、2年くらい前のことです。

それまでは見回りを強化したり、お客さんから「あの人やってるよ」って教えてもらった人に「お兄さん、やってるんでしょ?」って声掛けたりして。そうすると次から来なくなる人も結構いるんです。教えてくれるお客さんの中にはゲイの人もいるんですよ。 

■注意喚起の貼り紙の真意とは 

見回り強化の他には、注意を喚起するための貼り紙もしてみました。 

実は、この貼り紙はゲイの人に向けてではなく、一般のお客さんに向けて貼ったつもりなんです。「今まではこんな風だったけど、うちはちゃんと対応していますから安心してください」というメッセージの方が大きかったんです。 

それを見て来なくなったゲイの人もいたようで、貼った直後は売り上げが下がりましたけど、一般の人が増えてきたようで売り上げもちょっとずつ戻ってきています。

見回りの強化や、警察を呼ぶことを始めてからは、迷惑行為をするゲイの人もだんだん減ってきました。それでもゼロになっているわけではないので、回数は減りましたが今でも警察に来てもらうことはあります。ただ、困ったことに、ウチに来なくなった人たちが、近くの他の銭湯に拡散しているようなんです。 

Bの湯「ハッテン行為をするゲイとの闘い」

ハッテン銭湯
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■サウナがゲイの集まる場所になっていることを知って 

ゲイっぽい感じの人がいるなってのはなんとなく気づいていたんですけど、まさか迷惑行為をやっているとは思ってなかったんです。でも、タイミング的には渋谷区のパートナーシップ証明書のニュースが流れた頃から意識し始め、その頃にAの湯さんの話を聞いたりしてから注意して見るようになりました。 

ウチの場合はサウナの中がそういう人が集まる場所になっていたんですね。

ある日、よくお見えになる一般のお客さんから「サウナの中で触りあってるよ」と言われて。「どんな人ですか?」と聞いたら、その半年くらい前から来るようになった県外ナンバーの車の人だったんです。 

で、その県外ナンバーの人の存在に引っ張られるように意識して見るようになったら、いろいろ分かってきたんです。 

■ハッテン行為をするゲイの特徴と見回り強化

脱衣場とかサウナの入り口が見えるところには監視カメラつけているんですけど、特有のちょっと怪しい動きがあるんですよね。すれ違いざまに目は合わせないんだけどチラッと見たりとか。サウナに入る時も、一度覗いて一般のお客さんがいるのかどうかを確認して入りますね。 

そうやって注意し始めると、よく来る人の中で30~40人くらいのゲイと思しき人の顔は覚えました。その中でも、県外ナンバーの人を含めて明らかに怪しい人を5人くらいマークするようになったんです。 

見回りを強化し始めたら、マークしてた5人のうち県外ナンバーの人と、もう一人がサウナに入ったんです。で、窓からそっと覗いてみたらくわえてたんですよ。ドア開けて中に入ったら、2人はすぐに離れたんですけど「警察呼ぶから、着替えて」って。 

ウチのサウナはコの字型になっていて窓からは見えない奥の方の死角に、マークしていた5人のウチの1人がいたんです。

で、その人に「一緒にやってたの?」って聞いたら「いや、やってない」と。 「でも、ここにいたでしょ。見せられたの? だとしたら被害者だから」と言ったら「いや、気づかなかった」って。

自分の心情的にはその人も完全に黒なんだけど、『とりあえず、いいや』ってことにして他の2人は警察に連れて行ってもらったんです。 警察を呼んだのは、まだその一回だけです。

■ハッテン行為をするゲイへの対処は続く

あとは口頭で注意したのがあります。マークしてた1人がサウナに入ったので中を覗いたら、ちょうど離れた所を見たんですよ。で、中に入って「ちょっと勘違いされると大変なことになるよ、警察呼ばれてからじゃ遅いですから気をつけてくださいね」って。 

警察に連れて行ってもらったのと、口頭注意したので、とりあえずマークしている5人のうちの3人は来なくなったんですけど、まだ2人は残っていますね。 

ほとんどはサウナでなんですけど、ミスト室ってのがあるんですが、 片付けに入ったら浮いてたんですね、量的には2人分の白いのが。だいたいこの人がやったんだろうなって見当はついているんです。しばらく来なかったんですけど、最近1年ぶりくらいで来たんですよ、その人。顔は覚えているんで、しっかりマークしています。

■ハッテン行為をするゲイへの口頭注意

最近、こんなことがありました。 

常連の一般のお客さんが、泡風呂に入ってたら足で触られたと苦情を言いに来たんです。離れたところに入った人の足がツンツンという感じで当たってきたので、最初は勘違いかと思って無視してたら、だんだんエスカレートしてサワサワしてきた。「なんですか?」って言ったら、パッと逃げ出したって。 

そのお客さんに「警察呼びますか?」って聞いたら、「そこまでは」ということだったので、本当は呼ばないけど警察の話も出して口頭注意しますね、ってことにしたんです。 

で、脱衣場でその触ってきた人に「なんでそんなことしたんですか?」って聞いたら「いや、全然そんなの知らない」ととぼけるんです。

「知らないじゃなくて、足で触られたと言ってるんですよ」と言うと「当たったかもしれない」と逃げようとするんです。

「当たったかもしれないじゃなくて、その人は毎日通ってきている人で、明らかに当たったかもしれない、のレベルじゃないから私に言いに来たんです。勘違いのレベルなら私に言いに来ませんよ」みたいな感じですったもんだしてたんですけど「じゃあ、そんなに頑なにシラを切り通すなら警察よぶから。お客さんは被害受けたと言っているんだから警察に言うしかないから。それでいいね?」と言ったら、初めてそこで「触りました」と認めんたんです。

「じゃあ、今後出入り禁止だから、着替えて帰ってくれ」ということで帰ってもらったんです。

■脱衣場での口頭注意の真の目的

実はこの時に、他にもマークしているゲイの人がいたので、その人たちにも釘を刺しておくつもりで、あえて他にも人がいる脱衣場で注意したんです。 

被害にあったお客さんは、顔立ちも整っているし髭を蓄えていたので、もしかしたらゲイだと間違えられたのかもと思います。だから、そのゲイの人も痴漢的行為をするつもりはなく、合図を送っただけなのかもしれないんです。でもね、一般の人からしたら迷惑なだけじゃないですが、こんなこと。

ネットで広まってゲイの人が集まってきてサウナとかで変なことされるだけでも被害なんですけど、一般の人にまで迷惑行為をされてしまうと、言葉が正しいのかわかりませんけど、二次被害だよなあと頭抱えてます。

Cの湯「ゲイとノンケの”普通”感覚のズレ」

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■ノンケはしない”過度な洗いっこ”

ウチは店内が真四角で番台から見晴らすことができる造りなのでAさん、Bさんと違ってあからさまな迷惑行為はできないようになっているんです。でもここ1年くらいで急激にゲイだと思われる方が増えてきました。気になり始めると、いろいろなことが分かってきますよね。

友達同士なのかカップルなのか知らないですけど、2人で来て「洗いっこ」する人も多くて。普通に背中を流し合うとかなら構わないんですけど、男2人で相手の手や足まで洗ってあげたりとか、髪の毛を洗い合うとか、一般の人から見たら引いちゃうところがあるんですよ。ゲイの人たちは「それくらい普通でしょ」と思ってるのかもしれないけど、一般の人からすると過度な洗いっこに見えて居心地悪いんですよ。

実際、お客さんに言われました「男同士で洗いっこしてるのを見ていて気持ち悪いんだけど」って。そういう意識のレベルのズレは絶対にありますね。

それから、明らかにゲイだと分かる人は入浴時間がやけに長いんですよね。人によっては2時間くらいとか。で、好みのタイプがいるとじーっと見つめているんですよ。

見てるだけなら害はないって思うでしょう? でも、じーっと見られたノンケのお客さんからは「ずっと見られていて気持ち悪いんだけど」という苦情を実際に何人もから言われているんですよ。これもまた、意識のズレじゃないですかね。

そのズレを強制的に合わせさせることへの是非はあると思います。でも店側としては、多くのお客様に気持ち良く使っていただきたいというのが一番なので、合わせてもらいたいというのが本音ではあります。

ゲイのハッテン行為に苦しむ銭湯店主の本音

ハッテン銭湯
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Cの湯さん:男の裸を見たくて銭湯に来るのは許されることなのでしょうか?

最近、TVなんかでLGBTがよく取り上げられて「こんな差別に遭っています」とかのディスカッション番組も多いですよね。 でも、それとは違う方向のバラエティ番組で見逃せない発言があったんです。

去年の12月くらいだったかな、ある番組に出たゲイの人が、「銭湯はパラダイスですよ」って発言されたんです。「パラダイスってどういうこと?」ってMCの人が聞いたら、「ストレートの男性が女湯に入るようなものですよ。それってパラダイスでしょ?」ってその方が話したんです。 

もしそれが事実で、そういう目線で見ることを目的に銭湯にゲイの人が来るとしたら、公衆浴場は利用すべきじゃないって思うんですよ。理解できますかね、こういう考えって? 

Aの湯さん: 迷惑行為をするゲイは同じ当事者を傷つけているのではないか?

ハッテン行為をするゲイの人は単に入浴するわけじゃなくて、勃起したり、しごいたり、人のをくわえたりしているわけです。どうしてそれは捕まらないのかっていうのがおかしいと思うんです。だって公衆浴場でそういうことをやれてしまうって、モラルの欠如ですよね?

LGBTへの理解を広めようと努力している人もいるのに、片やハッテン行為で迷惑をかけるゲイもいる。一般の人に「ゲイって銭湯で迷惑行為をするやつら」って思われてしまったら、傷つくでしょ。ゲイの人たちが不利益を被ることになるんじゃないですか?

同じ仲間が、そういうことで傷ついているよって声に出してもらいたいです。 

Bの湯さん: ゲイのハッテン行為のせいで店の雰囲気が変わるのは本当に困る

僕らからすると、ゲイの人がやらかす迷惑行為に苦情を言ってくれる一般のお客さんは、本当にありがたいんです。それよりも困るのは、何も言わずに来なくなるお客さんの方が圧倒的に多いということなんですよ。

ゲイの人が明らかな迷惑行為や、いちゃつくようなことをしていたら、店の雰囲気が変わるので居心地が悪いと感じる一般のお客さんが出てくるのは当たり前じゃないですか。でも、迷惑行為をするようなゲイの人たちは、そんなことは全く考えないんでしょうかね。

最後に

ハッテン銭湯

銭湯経営者の皆さんが包み隠さずに話してくれた実情と本音、あなたはどう感じただろうか?

迷惑行為をするゲイは全体から見るとごく一部かもしれない。しかし、その迷惑行為が銭湯経営者の皆さんに与えるダメージの大きさは計り知れないものがある。

日常的に多くのゲイと関わりあうことがなかった銭湯経営者の皆さんにとっては、銭湯にやってきて迷惑行為を平気でやってしまう一部の人たちこそが「リアルなゲイ」。そうなると、ゲイ全体のイメージを「ゲイ=迷惑をかける人たち」と認識しても仕方のないことだろう。

性的マイノリティであるゲイもまた社会で生きる一員である以上、守らなければならないモラルは当然のことながらある。

自分の欲望を優先して公共の場でモラルに反する行為をすることが、その場にいる一般の人にどんな不快な思いをさせるのか、その場を経営する人たちにどんなダメージを与えてしまっているのか。

銭湯でハッテンすることが、あたかもゲイの文化であるように安易に認識されている風潮があるのならば、そこには一般の人との大きなギャップがあるという現実に目を向ける必要があるだろう。

(冨田格)

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