「ゲイとサル痘」ゲイの間で感染拡大した理由を海外の実例から考える
日本でもついに感染報告があり、サル痘を身近に感じ始めた人も多いはずだ。世界中でゲイ・バイ男性を中心に感染拡大していることで、ゲイ・バイ男性特有の病気だと勘違いしている人もいる。
なぜゲイ・バイ男性の中で感染拡大しているのか現時点ではその理由は解明されていない。しかし海外の例を検証すると、その理由が見えてくるかもしれない。
私たちは感染症の専門家ではないが、ゲイの生活様式と性生活様式には詳しいのだから。
「ゲイとサル痘」ついに日本上陸!パニックになる前に必読の基礎知識
サル痘の感染経路を理解しておく
まず、どうやってサル痘は感染するのか、という基本を抑えておきたい。
・患部の膿との直接接触
https://wired.jp/article/everything-you-need-to-know-about-monkeypox/
・感染者の衣服との接触
・タオルやシーツなどリネン類の共有
・呼吸器飛沫の吸入
・今回の流行では、皮膚同士が接触する可能性の高い性的接触が感染経路のひとつとなっている
また、加えておさえておきたいことが、英国の国民保健サービス(National Health Service)のサイトに記載されていた。
・サル痘の水疱や「かさぶた」との密接な身体的接触
https://www.nhs.uk/conditions/monkeypox/
患部の膿だけじゃなく、水疱や「かさぶた」との接触も感染の原因となるということだ。患部からおちた「かさぶた」もウイルスを含んでいると考えねばならない。
ここまでのことをおさえた上で、最初に感染拡大が始まり、現在(2022年7月27日)も世界でトップの感染者数であるスペインの2つの報道と、ベルギーの実例を見ながら、ゲイ・バイ男性の間で特に感染が拡大している理由を考えていこう。
マドリッドのゲイサウナ「楽園」
5月21日、スペインの英語ニュース「THE LOCAL es」がこう報じた。
マドリッドの中心部にある「楽園」を意味する名前のゲイフレンドリーな施設、”パライソサウナ”は今後数日間、マドリッド地方でサル痘の感染が確認されたため、予防的措置として閉鎖される 、とツイッターで発表した。(中略)エンリケ・ルイズ・エスクデロ氏(マドリッド州保健局)は、21人の確定患者と19人の疑い患者を記録したと記者団に語った。「陽性と判定されたほとんどの人は、この感染源と関係がある」と、彼はサウナのことを指して言った。
https://www.thelocal.es/
この「サウナパライソ」はマドリッドで最も古いゲイサウナであり、地下プール、フィンランド式サウナ、トルコ式バス、スチームルーム、30のプライベートキャビン、ダークゾーン、ブランコがあるエリアなどがある広い施設で、非常に人気があるとのこと。
さて、ゲイサウナがどんな場所であるのか、ゲイ・バイ男性はよく知っているはずだ。
ハッテン行為に勤しむことで、膿や発疹(水疱)、かさぶたなどのある患部(皮膚)との「直接接触」や、ディープキスによる「呼吸器飛沫の吸入」、「タオルやシーツなどリネン類の共有」が生じる可能性は高い。
カナリア諸島のプライド・パレード
5月27日、AP通信がこう報じた。
スペイン保健当局は、今月初めに8万人を集めたカナリア諸島のゲイ・プライド・イベントとマドリッドのサウナとの関連性を中心に調査してきた。(中略)木曜日の時点で、イタリアでは10人のサル痘患者が確認されているが、そのうちの何人かはスペインのカナリア諸島に旅行した人たちである。
https://apnews.com/article/covid-health-spain-madrid-8763ccfd170d38ce5ee96d44038881bf
カナリア諸島のゲイ・プライド・イベントは、5月5日~15日に開催の「Gay Pride Maspalomas (Gran Canaria) 2022」だ。プライドパレードをはじめ、パーティーやビーチでのアクティビティなどさまざまなイベントが開催された。
プライドパレードを歩くだけなら「サル痘」に感染する恐れはなさそうだ。しかし、プライドイベントはそれだけでは終わらない。
分かりやすい例で考えるなら、アジア最大の台北でのプライドパレードに置き換えて考えてみよう。パレードが核となるイベントではあるが、アジア各国から多くのゲイが集まってくるので公式・非公式の関連イベントがパレードの前後には目白押しだ。
たとえば、肌の露出が多い男たちが密集するクラブイベントならば患部(皮膚)との「直接接触」や、接近して会話したり、ハグやキスを交わすので「呼吸器飛沫の吸入」の可能性も考えられる。
また多くのゲイが集まるので非公式な乱交パーティーが多数開催されるし、ゲイサウナはどこも大盛況だ。
ベルギーのフェティッシュ系イベント
5月23日、ニューズウィーク日本版がこう報じた。
ベルギー北部のアントワープで5月4日~9日に開催された「ダークランド・フェスティバル(Darkland Festival 2022)」の参加者のうち3名が「サル痘」に感染したことを発表したのを受けて、イベント主催者は、参加者に対してサル痘感染の可能性について注意を呼びかけた。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/05/3-324.php
この「ダークランド・フェスティバル(Darkland Festival 2022)」は、ゲイの中でもレザーに特化したフェティッシュ色の強いイベントだ。公式サイトを確認したが、さまざまなイベントが用意されいるが、夜のパーティーを含め、かなりアクティブに性的な交流が行われていたものと思われる。
フェティッシュ色の強いイベントは日本では馴染みがないが、欧米では各地でレザーに特化したイベントや、ベア系に特化したイベントが毎年開催されている。
かなり雰囲気が似ているのが、タイのバンコクで毎年4月に開催されている「ソンクラン」だ。アジア各国から多くのゲイが集まり、公式の大きなプールパーティーやクラブイベントがあり、非公式の乱交パーティーも行われている。
期間中は、バンコクのゲイサウナは大盛況だ。
人とのリアルな交流に飢えていた欧米のゲイ男性
いまだに海外旅行に行きづらい日本と違い、欧米では国を跨いでの行き来が活発になっている。
なにより欧米では、日本とは違い格段に厳しいロックダウンによって、人と交流することがしばらく禁じられていた。国内や海外のイベントに出かけて、多くの人たちと交流することが当たり前になっていた欧米のアクティブなゲイにとっては、ロックダウンは辛い日々だったことだろう。
リアルな人との交流に飢えていた各国のアクティブなゲイ・バイ男性がスペインのプライドパレードや、ベルギーのフェティッシュ系のイベントに集まってきた。そして、性的な目的のために海外のイベントに行くくらいアクティブなタイプは、帰国してもアクティブな性生活を送ることは想像に難くない。
6月から7月の感染拡大の様子を見ると、このように推測できる。
ここまで考えると、ゲイの生活様式と性生活様式に詳しい私たちは、「サル痘」がゲイ・バイ男性の間で感染拡大している理由が自ずと分かってくるはずだ。そして、予防するためにはどんな行動をするべきか、もしくはしないべきか、ということも分かってくるだろう。
日本では、まだ感染拡大というフェーズには入っていない。そんな今だからこそ、いたずらにパニックになることなく、自分の生活様式と性生活様式を見直して、感染予防に勤めていきたい。
ジオ倶楽部ではこれからも継続して「サル痘」の情報を発信していく。
(冨田格)
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