サル痘「ゲイ・バイは性交渉相手を制限して」テドロス発言の意味を考える
世界保健機関(WHO)のテドロス事務総長は、7月27日(水)の記者会見で、「男性との性交渉を持つ男性に対し、地域社会でサル痘患者が増加している間は性交渉の相手を一時的に制限するよう」提案した。
この提案に沿うことが、サル痘感染拡大を抑えることにつながるのか、テドロス発言の意味を考えていく。
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この流行は食い止めることができる
7月28日にワシントンポストが公開した記事「New WHO monkeypox advice urges men who have sex with men to limit partners(WHOの新しいサル痘に関するアドバイスでは、男性とセックスする男性は相手を限定するよう促しています)」より引用する。
WHO事務局長のTedros Adhanom Ghebreyesus氏は、水曜日に行われた記者会見で、サル痘の症例の98%が男性とセックスをする男性から報告されていると発言しました。
テドロス氏は、各国政府が適切な対策を講じ、個人が情報を入手し、ウイルスから身を守る限り、「この流行は食い止めることができる」と述べました。
「男性とセックスをする男性は、当面の間、性的パートナーの数を減らし、また新しいパートナーと性交渉を始めることを再考してほしい。新しいパートナーになりそうな人とは連絡先を交換しておけば、状況が落ち着いてきたら関係を深めるためのフォローアップも可能です」
https://www.washingtonpost.com/health/2022/07/28/who-monkeypox-advice-men-sex/
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ゲイ・コミュニティへの具体的な働きかけ
5月に欧州でサル痘の感染が報告されて以来、アメリカの公衆衛生当局は、感染者の大半を占めるゲイ・バイ男性のコミュニティに対する支援活動の必要性と同時に、ゲイ特有の病気というようなイメージが差別につながらないようにしたいということのバランスをとることに努めてきた。
27日の記者会見でテドロス氏は、子供や妊娠中の人、免疫力の弱い人など「高リスクのグループへの感染の可能性を減らす」よう各国に呼びかけながら、「サル痘は誰でもかかる可能性があります」と述べている。
米国疾病対策予防センター(CDC)によると、サル痘は主に人間同士の密接な身体的接触によって広がるが、妊娠中の人は胎盤を通じて胎児に感染させたり、衣服やタオル、シーツなどを通して感染することがあるという。
https://www.washingtonpost.com/health/2022/07/28/who-monkeypox-advice-men-sex/
誰でも感染するリスクがあるとはいえ、サル痘は現状では、男性とセックスをする男性の間で広がっていることが明らかになったため、保健機関や政府に対して、ゲイ・バイ男性のコミュニティに対してより具体的な働きかけを行うよう求める声が高まっていることから、テドロス発言が為されたと考えられる。
・『サル痘は激痛』高熱と激痛に襲われながら孤独で苦しんだ2週間の話
性的パートナーを制限する重要性とは?
ご存知の方も多いだろうが、ここでサル痘がどうやって感染するのかを復習しておこう。
・患部の膿との直接接触
https://zioclub.info/health_life036/
・感染者の衣服との接触
・タオルやシーツなどリネン類の共有
・呼吸器飛沫の吸入
・今回の流行では、皮膚同士が接触する可能性の高い性的接触が感染経路のひとつとなっている
サル痘はゲイ特有の病気でも、性病でもないのだが、性交渉でも感染するリスクが高いことが厄介な部分。
「『ゲイとサル痘』ゲイの間で感染拡大した理由を海外の実例から考える」でレポートしたように世界各国のゲイ・バイ男性の間で顕著に感染拡大しているのは、性交渉が主な理由だと考えられる。
しかし、性交渉以外でも感染するリスクがあるので、感染者だとは知らずに性交渉をしたゲイ・バイ男性を通じて同居する家族や、ルームシェアする友人などにも感染拡大していく可能性は否めない。
そんな状況を抑えるために、テドロス発言が為されたと考えるべきだろう。
これはサル痘に限らず、性病でも同じだが不特定多数の性的パートナーがいれば、感染する可能性は高くなる。だから感染拡大している今の時期は、不特定多数の性的パートナーとの性交渉は控え、サル痘の知識があり慎重だと思える特定の少数との性交渉に絞ることがリスクの軽減につながりそうだ。
またテドロス氏は、現在感染の中心となっているゲイ・バイ男性が慎重に行動することで、世界的な感染拡大を抑え込めると考えているからこそ、「新しいパートナーになりそうな人とは連絡先を交換しておけば、状況が落ち着いてきたら関係を深めるためのフォローアップも可能です」と語ったのだろう。
日本ではまだ2例しか感染報告が為されておらず、欧米のように感染拡大するのか、もしくは大きな感染拡大がないままで終わるのかは不明だ。しかし、慎重な性生活行動様式を実践することも、検討しておく必要はありそうだ。
ジオ倶楽部ではこれからも継続して「サル痘」の情報を発信していく。
(冨田格)
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