【調査結果】”やりすぎマッチョ”が誕生する理由には父親との関係が影響

ストイックに鍛え上げたマッチョは、もちろんかっこいいし、性的にも魅力がたっぷり。ところがなかには、ちょっと鍛えすぎなのでは? と思ってしまう人もいないではない。そういうタイプの人が「ビゴレクシア(bigorexia)=筋肉醜形恐怖症」だったら、父親との関係に原因があるかもしれない、という研究結果が発表された。

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「筋肉」と「男らしさ」が結びつく

筋肉醜形恐怖症
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筋肉醜形恐怖症とは、アメリカ精神医学会では「自分の体は小さすぎる、あるいは筋肉が足りないという考えにとらわれること」と定義している。

筋肉醜形恐怖症の人は、毎日何時間も運動したり筋肉を大きくすることに夢中になりすぎる傾向が強く、その結果、仕事や人間関係がおろそかになることもある。

その原因はさまざまだ。

たとえばSNSに挙げられるマッチョたちの自撮り画像から受けるプレッシャーや、ワークアウトで鍛えた体を理想とするメディアのあり方も原因のひとつ。また、筋肉と男らしさの関連性が認識されており、強さや性的魅力を与えることも大きな要因だ。

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ゲイと筋肉増強サプリメントの関係

筋肉醜形恐怖症
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ゲイ・バイ男性が筋肉醜形恐怖症を経験する可能性が高いことが、すでにいくつかの研究で判明している。

2022年に「Eating Disorders」誌に掲載された研究では、ゲイやバイセクシャルの成人において筋肉増強サプリメントの使用率が高いことが判明した。2,000人強のサンプルのうち、ゲイ男性の44%が筋肉増強サプリメント(プロテインやクレアチンからステロイドまで)を使用していることが分かった。

「Personality and Individual Differences」誌に掲載された新しい研究の著者は、こう指摘している。

「アフリカ系アメリカ人男性、ゲイ、トランスジェンダーなど、特定の疎外されたグループが、この男性的な美的理想に対してより脆弱である可能性を示す証拠が追加されている。性的な出会いの可能性を高めるだけでなく、ゲイ男性がより男性的な見た目を得ることによって同性愛のスティグマから身を守ることができるかもしれない」

この研究者はある仮説を検証したいと考えていた。

それは「父親が少年の人生における主要な男性的役割モデルであるならば、父親がいない、あるいは父親との関係が悪いと、筋肉醜形恐怖症の傾向が高まるのか?」というものだ。

他の研究では、父親との関係が悪いと、自己愛的な特徴「権利的な優越コンプレックス(壮大な自己愛)の発達、または他者からの検証をより必要とする脆弱な自己愛」が発達するとの関連性が指摘されている。

研究チームは、定期的に運動をしている男性500人強を集め、筋肉異常の兆候を評価するための質問と、父親との関係について尋ねた。

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不甲斐なさは外見へのこだわりを強める

筋肉醜形恐怖症
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研究チームは、父親との関係が悪いこと、自己愛が弱いこと、そして筋肉異形症の間に関連性があると結論づけた。

父親との関わりが少ないとか、家庭の中に父親不在の場合、男性は低い自尊心と自己中心性を特徴とする不健康な自己観を持つようになる可能性がある。そして、自分を認めてもらい、自尊心を高めようとする試みが、筋肉への偏執として現れるかもしれない。

両親がよそよそしく、批判的であれば、自分は価値のない人間だと感じることになる。その結果、自分の外見に対する懸念が強まることもある。

仲間から疎外されていると感じると、さらに問題が深刻になる。不十分さと脆弱性の感覚を高めボディイメージと筋肉に関する懸念を強める可能性があるのだ。

研究チームは、筋肉醜形恐怖症の人にカウンセリングする場合は、これらの問題を常に意識しておくことを勧めている。特に、セラピストは、患者と父親との関係について質問する必要があるとのことだ。

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原因はひとつではなく複雑なもの

筋肉醜形恐怖症
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この研究を進めている2人の研究者、マット・W・ボールター博士とセバスチャン・シャンチ・サンドグレン博士は、『Queerty』への寄稿で、「筋肉醜形恐怖症の原因は複雑である」と強調している。

バルクアップしたいと考える人に「ナルシスト」というレッテルを貼るのは間違っているというのだ。

「私たちの研究から得られる重要なことは、ナルシシズムを低レベルから高レベルまでのスペクトルに沿って考えるということです。例えば、外向性や良心的な性格と同じように、ナルシシズムも一つの特性として捉えています。その結果、私たちは 『ナルシスト』というラベルを使うことを避け、他の人たちにも 『ナルシスト』という言葉を使わないように勧めています」

と彼らは述べ。こう続けた。

「第二に、脆弱なナルシシズムと父性愛着との関連は、筋肉醜形恐怖症のいくつかの危険因子のうちの2つに過ぎないことを認識することも重要です。全体としては、完璧主義、社会的圧力、いじめ、自尊心など、他の要因も含めた複雑な図式で成り立っているのです」

最後に、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の小児科の助教授でこの分野の専門家であり、昨年ゲイ男性と筋肉サプリメントに関する研究を行ったジェイソン・ナガタ氏の見解を紹介する。

「男性のボディイメージに最も大きな影響を与えるのは、親・仲間・メディアの3つです。この研究は、父親との関係が悪いことが筋肉醜形恐怖症と関連することを発見しました。父親との関係が悪く筋肉醜形恐怖症の症状が高いかもしれないゲイ男性に、この研究結果が当てはまるかどうかを調査することは重要でしょう。

筋肉醜形恐怖症の人は、専門家の助けを求めるべきです。筋肉醜形恐怖症と摂食障害は、メンタルヘルス、医療、栄養の提供者を含む学際的なチームによってサポートされるのがベストなのです」

なにごとも過ぎたるは毒。鍛えても鍛えても自分の体に対する不安・不満が払拭できない人は、専門家に相談することを検討してみるのもよさそうだ。

※参考記事:QUEERTY

(冨田格)

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