どんなに鍛えても満足できない!ゲイが「やりすぎマッチョ」になる理由

ほどよく鍛え上げた逞しい肉体は見てかっこよく、そしてセクシーでもある。しかし、”やりすぎマッチョ”はちょっと引く、という人は少なくないはずだ。一部のゲイが「ビゴレクシア(bigorexia)=筋肉醜形恐怖症」に陥りやすい理由を解説した米国の記事を紹介しよう。

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筋肉醜形恐怖症は生活の質を低下させる

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多くのゲイにとって筋肉が「大きければ大きいほどいい」という考えが支配的であり続けている。しかし、筋肉の大きさにこだわったり、上腕二頭筋を大きくするために極端な努力をしたりすることは、決して健康的であるとはいえない可能性もある。

「ビゴレクシア(bigorexia)=筋肉醜形恐怖症」は、自分の身体が貧弱なのではないかという不安に常に襲われてしまう、「anorexia=拒食症」と対比して使われる身体醜形障害の一種。アメリカ精神医学会の「診断と統計マニュアル(DSM-5)」では、「自分の体は小さすぎる」「筋肉が足りない」という考えにとらわれることだと定義されている。

ジム通いが日常で、より大きな肉体を目指しているゲイはとても多いが、「ビゴレクシア(bigorexia)=筋肉醜形恐怖症」の閾値を超えてしまう人がいるのは、なぜなのだろうか?

「anorexia=拒食症」と「ビゴレクシア(bigorexia)=筋肉醜形恐怖症」を専門としているカリフォルニア大学小児科助教授のジェイソン・ナガタ博士は、こう語る。

「筋肉醜形恐怖症は、筋肉質になることに執着するようになったときに起こります。彼らは、客観的には十分に筋肉質であったとしても、自分の肉体を”ちっぽけな存在”だとみなしてしまうのです。

筋肉醜形恐怖症の人は、より筋肉質になるために、アナボリックステロイドやその他の外見や性能を向上させる薬物を使用することがあります。また、毎日5時間もジムでトレーニングに励むなど過剰な運動をすることもあります。

自分の体に懸念があることで、人に会うことを避けるようになり友達の誘いなども断って引きこもるかもしれません。これは、生活の質を悪くすることです」

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筋肉醜形恐怖症の危険な兆候

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心理療法士、カウンセラー、作家のマイケル・パドレイグ・アクトン氏は、米国フロリダ州のフォートローダーデールと英国のロンドンを行き来する生活を送っている。

毎朝のワークアウトがルーティーンとなっているアクトンは、ワークアウトをサボると罪悪感を感じるものの、それは筋肉醜形恐怖症を意味するものではないと強調する。社交的な飲酒とアルコール依存症を対比して、こう語った。

「週に4回パブに行き毎回2~3杯飲んで、でも問題なく生活しているのであればそれは素晴らしいことです。しかし、暴飲暴食や生活に支障をきたすようなことがあれば、それは素晴らしいことではありません。そこが健全なワークアウトと筋肉醜形恐怖症の境界線なんです」

拒食症などの摂食障害ならば、やせ細り、具合が悪そうに見えることが多いので見分けることが難しくない。一方、筋肉醜形恐怖症は、肉体を鍛えており健康的に見えるために見分けることが一般的には難しいと考えられている。しかし、アクトン氏は周囲が気づける兆候があると言う。

「ワークアウトや筋肉をつけることを何よりも優先する人には注意が必要です。家族や友人との関係を疎かにしたり、ワークアウトのために他の約束に遅刻したりする人は、危険な兆候だと言えるでしょう。

また、サプリメントを乱用したり、ステロイドを使ったり、バランスのとれた食事をせず、筋肉をつけるためにタンパク質を大量に摂取しているような場合も同じです。残念ながら、筋肉をつけるためにステロイドなどを使用すると、その結果、不安やうつ病が生じるのです」

アナボリックステロイドの過剰使用は、勃起不全、にきび、高血圧、心臓・肝臓・腎臓の問題とも関連している。しかし、アクトンはボディビルダーが必ずしも筋肉醜形恐怖症になるとは限らないと言う。

「もちろん中に筋肉醜形恐怖症になる可能性がある人もいるかもしれませんが、プロのボディビルダーと筋肉醜形恐怖症に密接な関係はありません。筋肉醜形恐怖症は心理的な問題であり、閾値の一線を越えてしまうと機能不全に陥るのです。

プロのボディビルダーはアスリートであり、多くの場合はビジネスのために肉体を鍛え、堂々と鍛えた肉体を人前で披露するので。筋肉醜形恐怖症の人は、自分の肉体への評価が低く、そこに深い悩みを抱えているのです」

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ゲイ男性は筋肉醜形恐怖症になりやすい?

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2020年にジェイソン・ナガタ博士らは、拒食症や過食症などの摂食障害が米国の性的少数者に多いことを示唆する研究結果を発表し、ホモフォビアやトランスフォビアに関連したストレスが関与している可能性を示唆した。

ゲイの男性も拒食症になりやすいと予想されるのか尋ねてみたところ、こう語った。

「ゲイの男性は、異性愛者の男性よりも身体への不満や摂食障害を経験する可能性が高いです。ゲイ男性は、身体への不満や筋肉異常につながる可能性のある差別、偏見、スティグマを経験することがあります。

ゲイ仲間やSNS、メディアなどは、ゲイの男性が理想とする身体に対する認識に影響を与えます。達成不可能な身体の理想に常にさらされることで、身体への不満、摂食障害、筋肉醜形恐怖症につながる可能性があります。

若い男性の3分の1が体を大きくしようとし、22%が体を大きくするためにサプリメントやステロイドを飲んだり、食事量を増やしたりしていることが調査でわかりました。自分の身体と理想とする身体とのギャップを認識することで、身体への不満や筋肉醜形恐怖症につながる可能性があります」

一方アクトン氏は、ゲイ男性が筋肉醜形恐怖症に陥りやすいということにはあまり納得がいかないと言う。彼の経験では、年齢やセクシュアリティ、性別には関係がないと実感しているそうだ。またゲイがジムに行く時間を確保しやすいのは、独身で子供や家族と過ごす時間が少ないからではないかとも考えている。

「筋肉醜形恐怖症の原因としては、若いころに弱くてちっぽけだといじめられた経験や、否定(ネゲーション)など、さまざまなものがあります。

心理学用語でいうところの “ネゲーション “とは、自分の感情に対処できない、あるいは自分の世界に対処できない状態を指します。そのため、自分の世界を満たすために、何かに対して強迫的になり、そのことについて考える必要がなくなるのです。

たとえば、タバコをやめた人の多くは、坂道を歩いたり、運動したりするだけで、喫煙を否定する何かを見つけるでしょう。タバコを吸いたいと思うたびに、さらに運動をするようになるのです。つまり、人生で起こっているあらゆる問題を否定する方法なのです。

このような否定(ネゲーション)は、長い目で見れば危険で不健康なものになりかねません」

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SNSの危険性とサポートの重要さ

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ナガタ博士とアクトン氏の意見が一致することのひとつは、SNSがもたらす有害な影響だ。ナガタ博士はこう語る。

「男性の体は、ソーシャルメディア、特にインフルエンサーのアカウントを通じて、これまで以上に人の目に晒されるようになりました。

インフルエンサーが投稿する理想的な体格は、フィルターがかかっていたり、何百枚もの写真の中からベストなものを選んでいたりします。これらの理想化された身体と自分の身体を常に比較することは、一部のゲイ男性が身体への不満募らせて筋肉醜形恐怖症につながる可能性があります」

アクトン氏は、理想の肉体をSNSで公開して称賛されている男性にも危険性があると言う。

「画像ベースのSNSに自分の肉体画像を投稿する男性は、多くのリプや”いいね”によって自身の外見に対する肯定的な補強を受けるかもしれません。そうすることで彼らは特定の体の理想を実現するために、さらに筋肉を増強する行動に出る可能性が高いです。つまり、フォロワーから受けるポジティブなフィードバックが悪循環や筋肉醜形恐怖症につながる可能性があるのです」

では、自分が筋肉醜形恐怖症かもしれないと思ったら、どうすればいいのだろうか?

ナガタ博士は「筋肉醜形恐怖症の人は、医師やメンタルヘルスの専門家に助けを求めるべきです。エネルギー出力に見合った栄養摂取量を増やさずに過剰な運動をする人は、栄養失調で重篤な状態になり、入院が必要になることがあります」と警鐘を鳴らす。

アクトン氏はこう語る。

「自己診断できる唯一の方法は、『これは本当に自分に合っているのだろうか』と考えることです。これはとてもシンプルですが、強力な質問です。『私の人生にどのような影響を与えているのだろうか?』と考えることができ、そして、うまくいっていないと感じたら、何とかすることはできます。

しかし、サポートは必要です。それは、摂食障害や中毒を専門とするセラピストやカウンセラーに診てもらうことです。

あきらめる必要はありません。より健康的に、より他の生活とバランスが取れるように、変化を管理する方法を見つけることができるはずです」

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自分が筋肉醜形恐怖症ではないか、と不安に思った人。また筋肉醜形恐怖症の疑いがある友達や恋人がいるなら、専門家のサポートを考えてみることも必要かもしれない。

※参考記事:QUEERTY

(冨田格)

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