【ゲイのセックス考察】ゲイ男性がノンケ男性よりセックスが好きな理由とは
ゲイ・バイ男性なら実感していると思うが、同世代のノンケ男性に比べるとセックスの回数が飛び抜けて多い人が珍しくない。20代前半で「百人斬り」を達成したり、30代になる頃には「千人斬り」達成という強者だってざらにいる。この傾向は日本だけではなく欧米の共通のようだ。米国のメディア『LGBTQ Nation』が発表した「なぜゲイ男性はセックス回数が多いのか?」という記事を紹介する。
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目次
「ヤリマン」は称賛の言葉
ニューヨーク・ブルックリンのブッシュウィック地区に住む24歳のアーティスト、ジャレッドは、まだ高校生だった17歳のとき、初めて合意の上でセックスを経験した。ネットで知り合った同年代の男性と、その男性の車の後部座席で関係を持ったのだ。
16歳の頃に出会った男性から望まぬ形での性的加害を受けてしまい臆病になっていたジャレッドだが、合意の上で”処女”を失ったことで自信を取り戻し、肉体的な苦痛があったにもかかわらず、深い幸福感を覚えたと振り返る。
「力が湧いてきて、悪いビッチになったような気がして、自信が持てたんだ」
それから7年、セックスは彼の人生にとって不可欠なものとなった。自分の自信を深めるのに役立つ、官能的な欲望を実現する手段となったのだ。
伝統的なキリスト教の家庭で育った彼は、男性に惹かれることを誰にも言えなかった。これは多くの人に共通する抑圧であり、ゲイ男性にとってセックスが不可欠である理由だと彼は考えている。
「僕たちは、自分のセクシュアリティや自分自身に満足することができなかった。だから大人になった今、セックスの文化があるんだ」
他の多くのゲイの若者と同じように、彼は男との性的関係を定義するために、”アバズレ”や “尻軽“といった、本来は中傷として使われていた言葉を受け入れている。
「ヤリマンであることは素晴らしいことだと思う。人生は一度きりだし、美しい人はたくさんいる。繋がりたい人と繋がればいい。ただ、自分の身は自分で守ればいいのさ」
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セックスはコミュニティを形成する
若者のセックス回数はここ数年減少傾向にある。心理学のジーン・M・トウェンジ教授が2017年に発表した調査結果によると、90年代生まれの米国人は30年代生まれの平均的な米国人に比べて、セックス回数が年に約6回減っているそうだ。
しかし、この傾向はゲイ・バイ男性では異なる。
スウェーデンのカロリンスカ研究所のピーター・ウエダ氏が、米国の成人を対象に2020年に行ったの研究によると、「男性の性的非活動と性的パートナーがいないことの増加は、ほとんどの社会人口統計学的サブグループで観察されたが、ゲイやバイセクシュアルの参加者では観察されなかった」という。
さらに、「ゲイとバイセクシュアルの人々は3人以上の性的パートナーを報告する傾向が強かった」と付け加えられている。
セックスは伝統的にゲイ・コミュニティの中心的な特徴であった。
カリフォルニア大学サンタクルーズ校の心理学教授であり、セクシュアル・ジェンダー多様性研究所所長のフィリップ・L・ハマック氏は、「70年代、ゲイの解放運動は性的関係に対する肯定的なヴィジョンを受け入れ、浴場(ゲイ・サウナ)のような社会的施設の勃興に拍車をかけた。その運動の真の勝利は、この非常に活気ある性文化の出現でした」と語る。
絆を深めるメカニズムとして、セックスはゲイやバイ男性たちが喜びを共有し、つながりを築き、永続的な関係を築くことを可能にしてきた。ハーバード大学のマイケル・ブロンスキー教授は、こう語る。
「セックスは肉体的な解放であり、コミュニティを形成する方法です。20分のパートナーであれ、2ヶ月のパートナーであれ、あるいは生涯のパートナーであれ、セックスを介してパートナーと出会うのです」
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エイズ禍が断ち切った解放の流れ
ところが、セックスに対するこのような好意的なビジョンは、80年代のエイズの流行によって断ち切られてしまった。
かつては社会規範の束縛から解放されるツールと考えられていたセックスが、エイズへ恐怖の蔓延により、突然多くの人々が背中を背けた。エイズ禍が始まるまでの10年間の革命的な成果に対して、セックスに否定的な振り子が揺れたとハマック氏は言う。
「乱交は非常に嫌われるようになり、ゲイ男性が作り上げてきた解放された性文化は一気に後退した」
それから30年の時を経て、この10年間にPrEP(プレップ)が広く普及したことが新たな安心感につながった、とハマック氏は考えている。エイズが流行した時代の恐怖を経験していないミレニアル世代やZ世代の若い男性の多くにとってPrEP(プレップ)は、自分たちのセクシュアリティを祝福するための、鎧のような守ってくれる存在なのだ。
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ヤリマン期が自信を取り戻させた
2年ほど前にPrEP(プレップ)を服用し始めた26歳のタリーもその一人だ。シカゴ出身の彼が性に目覚めたのは12歳、中学生のときのお泊り会だった。その夜、友人とふざけて布団の中でイチャイチャするふりをしていたとき、自分がゲイであることに気づいた。
「その時は冗談で済ませたけど、僕の心の根底には真実があると分かった」と彼は言う。
そして15歳の時、ネットで知り合った「かなり年上の男性」と、初めてのセックスを体験した。学校でカミングアウトしていなかったタリーにとって、年上の男と会う方が居心地がいいと思ったのだ。
初体験の後、彼は解放された気分になった。しかしその後、相手は教師であり未成年者とのセックスを理由に逮捕されたことを知って初めて、事態の深刻さを理解した。
「あまりにショックでセックス嫌悪の状態になり、そこから立ち直るのに苦労した」
そのトラウマからなんとか立ち直ると、禁欲的だった時間を取り戻すかのように「ふしだらな時期」に突入した。 自分のセクシュアリティを解放し、さまざまな相手とさまざまな行為をしながら、自分のどんな男を好きで、本当に望むことは何なのかを探求していった。
「もしこのヤリマン期がなかったら、自分に自信を失ったまま、殻に閉じこもってしまっていたかもしれない」
PrEP(プレップ)のおかげで、HIVに感染する恐怖はもはや大きな心配事ではなく、タリーはより自由に自分のセクシュアリティを探求できるようになった。彼は自分自身と他の人の安全を守りながら、望んでいたあらゆる性体験ができるようになった。
「本当にいい気分だった。この不安が取り除かれたんだ」
しかし、将来的には、性体験の「やりたいことリスト」を満たしたら、ヤリマン期に終止符を打ち、一対一の交際をしたいと考えている。
「本気でつきあうなら、浮気しない関係”一夫一夫制”がいい」
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オープンな関係を満喫するゲイ男性
タリーのような若い男性にとって”一夫一夫制”があらゆる関係の頂点であるという、ノンケの結婚と同じように考える傾向は今でも大きいようだ。しかし、かつては子供を持つことがごくごく稀な関係性で社会的規範から外れた存在だったからこそ、”一夫一夫制”の軸から外れた関係を築くことができた。
チャップマン大学の心理学助教授であるエイミー・C・ムーアズ氏の2021年の研究によると、「女性に比べて男性は、同意の上で一夫一婦制ではない交際をしたことがある傾向が強い」ことがわかった。
さらに、ゲイ、バイセクシュアルの人は、異性愛者よりも高い頻度で「オープン・リレーションシップの関係を実践した」ことがあった。
一般的な社会規範に当てはまらないと感じた場合、人と親密になる手段を社会規範に対して否定的な観点から考える可能性が高いとムーアズ氏は考えている。
「人々は社会規範を買いかぶっている。特にゲイの男性は、一般に思われている以上にさまざまなタイプのセックスや交際をしているだろう」
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オープン・リレーションシップの体現者
ピッツバーグに住む27歳のゲイ男性、ハリソンは、将来的にはパートナーとのオープン・リレーションシップな関係も考えている。
彼が初めて性的経験をしたのは2018年、大学4年生だった22歳のときのこと。しかし絶頂を迎えた直後の賢者タイムになると、猛烈な罪悪感に襲われたと言う。
「セックスをすることがとても恥ずかしいと感じた。今にして思えば、その感感情は文化的に植え付けられたものだった」
その後に知り合ったセックスに積極的な友人たちのおかげで、ハリソンは自分自身を受け入れることができるようになった。”ヤリマン “や “アバズレ”といった言葉は、自分自身を定義するために受け入れたのだ。
最初の出会い以降、40人ほどの男たちとその場限りのセックスをすることは、彼にとって肉体的な欲求を解放するための手段であった。
将来は一対一の関係を築くことをイメージしている彼だが、パートナー以外との性的な関係を模索することには前向きだ。
「恋人との神聖な関係を保ちつつも、オープン・リレーションシップを実践して魅力的だと思う相手との関係を探求し、自分を表現することができるようになりたいという気持ちは、すごくよく分かる」
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性的な期待のハードルが高すぎる
ブルックリンに住む23歳のゲイ男性のアンディも、”一夫一夫制”ではない親密な関係を探求することに前向きだ。
彼は17歳の時、ネットで知り合った22歳の男性のアパートに行き、童貞を失った。それ以来、徐々に開放的なセクシュアリティを受け入れるようになっていった。
「ヤリマンであること、たくさんセックスすること、少しハードであることは自分をパワフルにしてくれると感じた。セックスによって、より多くのゲイと知り合い、新たなな関係を見つけることができる」
将来的に”一夫一夫制”の関係になることへの憧れが無くなったわけではないものの、多くの男性と性的な関係を結んでいく自分に満足感も覚えている。
「複数の男を同時に愛し、一度に多くの人と愛とロマンと性的エネルギーを共有できることが好きなんだ」
”一夫一夫制”ではないオープンな関係を選択することには、それなりのリスクを伴うこともある。
アンディは、セックスに肯定的なゲイ男性の間では相手に対する性的な期待が強いあまり、そこまでセックスに積極的でない人にとってはハードルが高すぎるかもしれないと考えている。
「ハードでなければならない、ふしだらでなければならないというプレッシャーがあるように感じる。より性的に積極的な人のほうが、尊敬される傾向があるんだ」
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暗黙の同調圧力を感じる
ペンシルベニア州に住む24歳のゲイ男性サムは、アンディの言葉に共鳴する。
サムは17歳の時、ネットで知り合った「かなり年上の男性」と初めてオーラル・セックスをした。田舎で育った彼は、周囲の友達はノンケばかり。
「高校最後の年は、自分がゲイであることを受け入れようと必死だった」
現在のサムはゲイの友人もできて、SNSではセックスに肯定的なゲイのインフルエンサーに触れながらも、常にセックスの話をすることは、サムにとっては負担なようだ。
「自分がノリきれていないようだと焦ることがある。あたかもセックスで達成しなければならないノルマがあるように感じるんだ。暗黙の同調圧力があるみたいに」
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セックス・ポジティブの多様性
バルーク大学で心理学を教えるクリストファー・スタルツ助教授は、ゲイ・コミュニティにおけるセックスへの同調圧力にうまく対処する鍵は、「セックス・ポジティブ(セックスに肯定的なこと)」の方向性を一つに定めないことだと語る。
「ある人にとって『セックス・ポジティブ』は、乱交パーティーやハッテン場で一晩に5人とセックスすることを意味するかもしれない。
しかし『セックス・ポジティブ』であることが、ふしだらとかハードというものだけだと決めつけてはいけない。
ある人にとって『セックス・ポジティブ』は、”一夫一夫制”の恋人とのセックスを深く追求することであるかもしれない。また、現在は誰ともセックスしていない人が、これから先、新たな相手とセックスすることを前向きに考えることを意味するかもしれない。
『セックス・ポジティブ』に関する同調圧力によって、望まないセックスをするべきではない」
いくつもの研究結果と、若い世代のゲイ男性のリアルな体験を紹介してきたが、ゲイ男性がノンケ男性よりもセックスに前向きな理由は見えてきただろうか。
最後は、”一夫一夫制”の関係を夢見ながらもヤリマン期を実践しているタリーの言葉で締め括る。
「自分自身や他人を傷つけない限り、やりたいことをやるべきだと思う。それが本当に健全なセックスライフを送る秘訣じゃないかな」
※参考記事:LGBTQ Nation
(冨田格)
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